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Jリーグ移籍が噂のデ・ロッシ、母国で爆弾スクープ 盟友トッティの追放を求めていた?

中村大晃カルチョ・ライター
2019年3月6日、ローマで最後のCLとなったポルトとの2ndレグでのデ・ロッシ(写真:ロイター/アフロ)

バカンスで訪れた日本では、Jリーグ移籍が噂されている。だが、母国イタリアでダニエレ・デ・ロッシについて騒がれているのは、5月30日の『レプッブリカ』紙が報じたスクープだ。

報じたのは、カルロ・ボニーニ記者とマルコ・メンスラーティ記者。彼らによれば、デ・ロッシはローマを貶める言葉を口にし、ほかのベテランたちと共謀して、エウゼビオ・ディ・フランチェスコ元監督、モンチ元スポーツディレクター(SD)、フランチェスコ・トッティの追放を求めたという

◆衝撃スクープ

報道によれば、デ・ロッシは開幕前からクラブと揉めた。ポジションが重なるスティーヴン・エンゾンジの獲得に激怒し、契約解消を要求。上層部との話し合いの中で、怒りのあまり、問題を解決しなければローマを「10位にしてやる」とまで発言したとされている。

また、『レプッブリカ』の両記者は、元アスレティックトレーナーのエド・リッピーが、昨年12月16日にジェームズ・パロッタ会長に送ったメールを入手。右腕だったリッピーが、パロッタ会長にチーム内の不協和音を伝えたと明かしている。

その内容は、デ・ロッシ、エディン・ジェコ、コスタス・マノラス、アレクサンダル・コラロフが、ディ・フランチェスコ監督とモンチSD、トッティに不満を抱き、退任を求めていたというもの。指揮官の戦い方やモンチの補強が問題視され、トッティの存在は「チームの真の苦しみ」になっていたという。

メール内容を知らされ、「深く傷ついた」というトッティは、リッピーの情報源であるドクターのリッカルド・デル・ヴェスコヴォ、フィジオセラピストのダミアーノ・ステファニーニの退任を提言したとされている。特に前者は「トッティ追放派」とみられていた。

実際、チャンピオンズリーグ敗退後、ローマはディ・フランチェスコを解任し、モンチが退任したが、デル・ヴェスコヴォとステファニーニもチームを去っている。負傷の多さが原因とされたが、報道によれば、それは表向きで、じつはトッティ主導によるものだったというのだ。

ただ、特にステファニーニは、デ・ロッシが親しくしていた人物だった。そのため、スクープでは、そのステファニーニを“追放”したトッティとデ・ロッシの関係が冷え切ったと報じられている。

◆クラブは一般紙報道を完全否定せず

デ・ロッシの感動のラストゲームから、まだ1週間も経っていない。にもかかわらず、デ・ロッシがローマに悪影響を及ぼしたかのような報道、ましてや長年の盟友であるトッティの“クビ”を求めていたという一般紙のスクープとあり、記事は大きな反響を呼んだ。

頭を抱えたロマニスタも少なくないだろう。例えば『コッリエレ・デッロ・スポルト』紙は、あるファンが悩んだ様子を伝えた。デ・ロッシとトッティの対立など「信じられない」ことだが、これだけのネタをでっち上げるという「自殺行為」も考えにくいからだ。

また、30日にクラブが出した公式声明も、疑問を膨らませた。『レプッブリカ』の報道から「距離を置く」としたが、完全には「否定」しなかったからである。

◆疑問点ありも、記者は告訴恐れず

だが、5月31日付『ガゼッタ・デッロ・スポルト』は、報道を受けたトッティがバカンス中のデ・ロッシに電話で連絡し、次の2点でスクープ報道に“矛盾”があると両者が一致したと報じた。

まずは、幹部就任以降、むしろ決定権のなさが話題となっていたトッティが、ヴェスコヴォやステファニーニを退団に導いたとするのは「非論理的」であること。また、ステファニーニも「私の退陣を決めたのはトッティではない」と否定したという。

2点目は、ローマのグイド・フィエンガCEOが自身のアシスタント職をデ・ロッシにオファーしていたこと。デ・ロッシの言動やクラブとの関係が、スクープ報道のとおりであれば、「そのような『危険人物』にポストを与えるなど説明できない」。

31日付『コッリエレ・デッロ・スポルト』紙によれば、デ・ロッシ本人も友人に同様の主張をしたそうだ。また、リッピーのメールを読んだと明かしたうえで、書かれていたのは一部ベテランがある種の練習を好まなかったことだけで、自分と首脳陣の対立ではなかったと話したという。

ただ、デ・ロッシが法的措置をとると言われるなか、ボニーニ記者とメンスラーティ記者は自信を強調。後者に至っては、デ・ロッシが訴えるなら受けて立つとの姿勢をみせた。

◆一夜明けて会長が公式見解

スクープから一夜明けた31日、パロッタ会長は公式にサポーターへの長文を発表。その中で、報道は「いくつかの面で事実であり、それ以外は明らかに正しくないと考える」と記した。

パロッタ会長は、デ・ロッシがエンゾンジ獲得に激怒したことを認めたうえで、それは獲得しないという前日の約束を破ったモンチの「ウソ」のせいだと説明。デ・ロッシの感情的な反応は人間的で理解できるとし、さらに選手は翌日謝罪したと明かした。

また、デ・ロッシがディ・フランチェスコ解任を望んでいたとされる点も、むしろ続投を要請されたことを明かしたうえで「100%間違い」と否定。ジェコ、マノラス、コラロフの3選手からも、監督交代を求められたことはないと強調している。

パロッタ会長は、『レプッブリカ』の報道でデ・ロッシが悪くみられるのは「正しくない」と主張。「18年にわたってローマの戦士だった。リスペクトに値するし、私はずっと彼を尊重してきた」と述べた。

また、トッティについては、「20年にわたる特別な関係の2人が戦争など、ばかげている。彼らの間に不一致?むしろそう願う。イエスマンに囲まれるなど、最も必要ないことだ」と記している。

◆本人が告訴を表明

さらに、バカンス中の本人も動いた。『ANSA』通信で、デ・ロッシは報じられた言動を否定。「名誉や評判、イメージを深刻に傷つける」と、告訴する考えを明かしたのだ。

デ・ロッシは「自分の知らない理由で自分とフランチェスコ(トッティ)の友情に影を落とそうとされるのは、初めてのことじゃない」と締めくくっている。

「君たちに言っておく。これじゃ不十分だ。もっとちゃんと仕事しろ」

◆あの抱擁は…

スクープ報道がすべて事実かは不明だ。ただ、パロッタ会長が部分的に認めただけに、ある程度の情報が漏れたことは確かだろう。問題は、情報漏洩に加え、それが誰の、どのような意図によるものかだ。そのあたりに、ローマの混迷ぶりが映し出されている。

ただ、少なくともデ・ロッシは法的措置をとる考えを明らかにした。メンスラーティ記者が対決姿勢を示したのであれば、騒動の舞台は裁判所に移ることになるかもしれない。なお、デ・ロッシは、勝訴した際の賠償金を全額、ローマの小児病院に寄付すると述べている。

真相が明らかになるのかは、まだ分からない。だが、ラストゲームでデ・ロッシとトッティが見せた抱擁が、冷え切った仲のそれではなかったと願う人は少なくないはずだ。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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