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不惑を迎えた渡辺大が定めるここからの自分

中西正男芸能記者
不惑を迎え、今の思いを語る渡辺大さん

 主演映画「ウスケボーイズ」が「マドリード国際映画祭」をはじめ複数の海外映画祭で評価されるなど映像の世界を中心に活動してきた俳優・渡辺大さん。ここ数年は舞台にも進出し、日々新たな自分と向き合っていると言います。今年8月で40歳。20代、30代とは違う自分を噛みしめる中で見据える今後とは。

舞台からの学び

 今年で40歳になりました。自ずといただく役も中間管理職的なものが多くなりましたし(笑)、年齢とともにいろいろなものが変化している。それを感じる日々でもありました。

 数年前までは映像だけをやっていたんですけど、2020年、21年あたりからご縁をいただき舞台もやらせてもらうようになりました。

 バレーボールでも室内でやる6人制のものとビーチバレーでは全く違うように、技術だ体系とか、心構えだとか、必要な体力だとか、あらゆるものが違う。舞台の度に痛感しています。

 今年やらせてもらった舞台「罠」は少人数の物語ですし、僕はほぼ出ずっぱりで2時間叫びっぱなしのような役でした。会話劇でセリフ量が膨大ですし、マイクもない。会場によっては1000人以上のお客さまに生で声を届けないといけない。さらに、当然ながら、公演中は毎日決まった時間に舞台があって、そこでベストのものをお見せしないといけない。「今日は調子が悪いから、明日に変えてもらえますか」なんてことはできない。

 映像だったらカメラが自分の表情や芝居を“撮りに来て”くれますけど、舞台では自分で見せるしかない。そこには今まで知らなかった考え方があって、毎回目からうろこ的なことが多々ありました。

 映像も、舞台も、もちろんどちらも大変だし、力いっぱいやるのみなんですけど、舞台はより一層、役者の責任の度合いが大きくなる。僕らをある程度自由に放り投げてくれるけれども、その分、こちらが脳みそに汗をかかないといけない。

 そんな中「罠」では、上川隆也さんがあらゆることを懇切丁寧に、しかも実践的なテクニックも惜しげもなく全部教えてくださいました。

 ただただありがたいことですし、これまでも20代、30代では例えば、津川雅彦さんだとか現場でお会いする大先輩があらゆることを教えてくださいました。今も今回の「罠」のようにその流れをいただくこともあるんですけど、自分も40歳になり、それだけではダメな年齢になった。これもね、強く感じていることなんです。

不惑の思い

 自分が何かを与える立場にもなってきたんでしょうし、役者としても「どう一人で立つか」。それを求められる年代になったことを痛感しています。

 20代の頃だと、同年代の役者が集まって「若者がワイワイやっている」みたいな出方も多かったんですけど、この年齢になると「渡辺大として何を見せるのか」が勝負になってくる。明確な自分の色が求められると言いますか。今思っているのは映像でも舞台でも両方で自分を出せる。それを自分の味にしていければなと。

 そうやって色を出しながら歳を重ねていく。その結果出てくる「影の長さと濃さ」が役者にとって重要なものなんだろうなとも思うんです。

 若い頃は自分の存在感もそんなにないだろうし、そこにできる影も短くて、小さい。ただ、あらゆる経験を重ねて本人のスケール感が増していくと、当然影も長くなるし、色すらも濃くなっていく。それが大事だと思うと同時に、じゃ、どうやったらそうなるのか。これはなかなか分からないんですけどね(笑)。

 でも、今年大ヒットした映画「侍タイムスリッパー」に主演された山口馬木也さんも、僭越ながら、この影の長さと濃さがおありだったから、作品に重みと味が加わったんだろうと思います。先輩方も「馬木也が認められて本当に良かった」と感激されてましたし、役者が歳を重ねる意味と「侍タイムスリッパー」の大ヒットはつながっていると僕は感じました。

 そういう実例を先輩方に見せてもらっていますし、大先輩の笹野高史さんなんかは20代の人よりも新しいもの好きだったりしますしね(笑)。その心があるから、いつまでもお若いし、探求心が次の自分を作る。そういうものだと思いますし、そこに向けての積み重ねをしていければと思っています。

(撮影・中西正男)

■渡辺大(わたなべ・だい)

1984年8月1日生まれ。東京都出身。ケイパーク所属。2002年、テレビ東京系ドラマ「壬生義士伝 ~新撰組で一番強かった男~」で父・渡辺謙が演じた吉村貫一郎の青年期役で役者デビュー。映画「男たちの大和/YAMATO」、「クローズ ZERO」など話題作への出演が続き「ラストゲーム 最後の早慶戦」では主演を務める。その後も「彼岸島」、「サブイボマスク」、「散り椿」などに出演。主演映画「ウスケボーイズ」で「マドリード国際映画祭」外国語部門最優秀主演男優賞、「アムステルダム国際フィルムメーカー映画祭2018」最優秀主演男優賞を受賞した。テレビ朝日系「就活家族~きっと、うまくいく~」、TBS系「笑うマトリョーシカ」などドラマに多数出演してきた。来年1月期の日本テレビ系ドラマ「いきなり婚」にも出演。「ゴンドラの唄」「東京行進曲」「シャボン玉」などを生んだ作曲家・中山晋平の生涯を描く映画「シンペイ~歌こそすべて」(1月10日公開)にも作詞家・西條八十役で登場する。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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