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お笑い賞レース「100×100」優勝を機に見えた新しい景色。「イチゴ」が目指すものとは

中西正男芸能記者
「イチゴ」のイクトさん(左)と木原優一さん

吉本興業所属芸人を対象とし、1月1日に開催される日本一早い賞レース「100×100(ハンドレッド ハンドレッド)」で優勝したお笑いコンビ「イチゴ」。チャンピオンになったことを機に、新たな景色をたくさん見た一年だったと言います。イクトさん(28)、木原優一さん(28)が見据える今後とは。

結果的にそうなるもの

木原:新しく始まった「100×100」で優勝して、一番大きかったことはアルバイトがやめられたことですね。これは本当に大きなことで、芸人として一つ前に進めた感覚は明らかにありました。

優勝賞金が100万円だったのでコンビで50万円ずつ分けて、しばらくはそのお金を切り崩しながら生活していこうという目論見だったんですけど、個人的に韓国旅行に行く機会がありまして。現地のカジノにそのお金をつぎ込んで一気に賞金はなくなってしまいましたんです…。

どうしようかとも思ったんですけど、賞金以外に賞を取ったことによる新たなお仕事も増えて、なんとか今年はアルバイトなしで暮らせるようになりました。

イクト:明らかに仕事の幅も広がりましたしね。これまでは舞台に出るのがほぼ全てという仕事内容だったんですけど、今年は番組もやらせてもらうようになりまして。

劇場だと目の前にお客さんがいらっしゃるところ、番組だとスタッフさんだけ。なかなか空気がつかめないというか、こっちにはこっちの難しさがまたあることを痛感しました。

木原:あと、スタッフさんが結構笑わないんですよね(笑)。これは僕らの力がまだまだ足りてないからだと思うんですけど、もっと頑張らないといけないといろいろな部分で感じられたのも今年だったと思います。

イクト:現場で笑いがないと、不安になるということをしっかり学びました(笑)。

木原:来年も「М-1グランプリ」をはじめ、いろいろな賞レースは考えているものの、僕らの中で「これを目がけてやろう!」みたいな部分があまりないんです。

何かをやるために頑張るというよりも、自分たちが面白いと思うものを出す。出す場所がある。その状況があればすごくうれしい。そんな感じでやっているのがリアルなところだと思います。

イクト:今はギリギリですけど、アルバイトをしなくてもやっていけている。変な話、もう満足というか(笑)。お笑いができていて、なんとか暮らせてはいる。この状況の時点で結構幸せを感じてもいるんですけどね。正直な話。

ただ、入ってきた時は「自分が『ダウンタウン』を越えてみせる」みたいな思いもあったんですけど、いつの間にか、お笑いができて生活ができていればいい。そんな頭になっていきました。

その状況がもっと強く出ればいいとは思いますし、もっとお仕事が増えればもっと生活も楽になるんですけど、それはあくまでも結果的にそうなるもの。感覚的な話になってしまいますけど、そこを明確に目指してやるのは難しすぎるなというのもあります。

お笑いはこの二人でしかできない

イクト:ただ、お笑いを辞めるとなったら、これは明確にイヤなんですよね。2年ほど前に、木原が自信を失ってやめるとなったんです。それを聞いた時には「これはヤバい」と思いました。お笑いはこの二人でしかできないこと。二人の関係が崩れると、もうお笑いというものが人生からなくなってしまう。それを困る。その思いは明確にありました。

木原:その時は自分のことが全く面白くないと思いましたし、やっていても全く楽しくなかったんです。こうなったらもう辞めるしかないんだろうなと。

そこでイクトがみんなに書いてもらった寄せ書きみたいなものを持ってきたんです。お世話になった先輩や仲のいい後輩とかの言葉が書いてありました。心に響くことがたくさん書いてありましたし、これを読んだ以上「辞めます」というのはさすがにないだろう。そう思えたので、今もこの仕事を続けています。

イクト:愛にあふれた言葉ばかりだったんですけど、本人にはまわりまわって脅迫文に見えていたのかもしれません(笑)。

木原:芸人さんといえば、毎日飲み歩いて豪快に暮らして、普段からおしゃべりも面白くてというイメージがあって、僕もあこがれてはいるんですけど、実際の性格でいうと、僕は正反対の人間で。そういう方々の姿を見ちゃうと「自分にはできない」と思って、ふさぎ込んでしまう。そういう部分が今でもあります。でも、これも難しいところですけど、そういう自分も自分だし、そういう自分だからこそできるものもあるのかもしれない。そんなことも思うんです。

イクト:そういう僕らが考えたネタをたくさんの人に面白がってもらえる。それができたら本当にうれしいですし、その喜びはこの世界にしかないでしょうし、何とかそこを目指して積み重ねをしていきたいと思います。

(撮影・中西正男)

■イチゴ

1996年12月1日生まれで埼玉県出身のイクトと、 96年11月13日生まれで新潟県出身の木原優一が互いに別のコンビを経て2021年にコンビ結成。吉本興業所属。二人ともNSC東京校24期生。今年からスタートした吉本興業所属芸人対象の賞レース「100×100」で優勝。BSよしもと「イチゴのタネ〜イクトと木原の芸能界成長日記〜」などに出演。「100×100」は来年1月1日にも開催され、午後5時からYouTube「吉本興業チャンネル」で生配信される。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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