男性22%、女性58%は非正規…就業者の正規・非正規社員率をさぐる
男性78%、女性42%が正規社員
就業形態の仕切り分けの一つ、雇用市場の実情が語られる上でよく話題に登るのが正規か非正規かの違い。現状では就業者のうちどれほどが非正規なのか。最新の実情を国民生活基礎調査(※)の結果から探る。
これから示すのは、役員以外の働き人(雇用者。雇われている人。自営業者や家族従業者、内職者などは含まれない)における、「正規社員・職員」と「非正規社員・職員」の比率。両者の定義としては「正規社員…正社員。一般社員」「非正規社員…パート・アルバイト、労働者派遣事業所の派遣社員、契約社員・嘱託など」となる。
最新データとなる2016年分における「雇用者の正規・非正規比率」は次の通り。
男性は10代では正社員率が約4割に留まる。20代前半になると2/3近くとなるが、まだ非正規社員率は相当なもの。これは中卒・高卒者による就労以外に、高校生や大学生によるパートやアルバイトも含まれるため。20代後半以降は8~9割と高い値を占め、60代に入りようやく定年退職により正規社員率が下がり、非正規社員率が上昇する。とはいえ65歳以上でも3割近くは正社員の立場を確保している。
高齢者の非正規雇用の多分は、一度定年退職や早期退職制度を適用した上で、同じ、あるいは関連企業に嘱託などの立場で再雇用されている事例があるものと考えられる。他調査ではそれを裏付ける結果も出ている。
一方女性は若年層でも正社員率は男性より低く、20代後半をピークとする。これは「寿退社」なとによる退社で若年女性正社員が辞めていくことに加え、世帯を持った主婦が子育てのさなかにパートなどの非正規労働に就くことで、非正規の値が底上げされるのが要因。時折今件数字だけを呈して「女性の非正規雇用率が高いのは差別的雇用の結果に他ならない」とする論説を見かけるが、男女それぞれの就労事情の認識が欠けているだけの話でしかない。
学歴による正規率のちがい
今件動向を回答者の学歴別に見たのが次のグラフ。世間一般のイメージ通り、高学歴ほど正規雇用率は高い。男性では大学・大学院卒で9割を超えている。
女性の場合は既婚者就労の場合、本業として・世帯主としての就労ではなく、家計をサポートするためのパート・アルバイトの可能性が高い。一概にこの値だけで「女性は押しなべて非正規社員の比率が高い」として嘆く必要はなく、また上記のように労働市場の有り方に反発するいわれも無い。男性とは前提条件が違うことから、違う結果が出て当然。無論女性の中にも、結婚した上で本業として就労する人も大勢いる。
世間一般には今記事の題名の通り「男性22%・女性58%は非正規社員」との部分だけ注目され、労働市場の問題として提起されることが多い。しかし実態としては女性のパート・アルバイトが多分に値を動かしている実態を忘れてはならない。
さらにいえばこの非正規社員比率の換算には、役員や自営業者が抜けている。仮にこれらの人たちも計算に含めれば、就業者全体に占める非正規社員比率はさらに落ちることになる。この点について、十分以上に留意しなければならない。
■関連記事:
49.5%は「非正規社員になりたくない」、「でも自分もなるかも」は29.4%…募る新成人の非正規就労への不安
※国民生活基礎調査
全国の世帯及び世帯主を対象とし、各調査票の内容に適した対象を層化無作為抽出方式で選び、2016年6月2日・7月16日にそれぞれ世帯票・所得票・介護票、所得票・貯蓄票を配ることで行われたもので、本人記述により後日調査員によって回収され、集計されている(一部は密封回収)。回収できたデータは世帯票・健康票が22万4208世帯分、所得票・貯蓄票が2万4604世帯分、介護票が6790人分。
今調査は3年おきに大規模調査、それ以外は簡易調査が行われている。今回年(2016年分)は大調査に該当する年であり、世帯票・所得票だけでなく、健康票・介護票・貯蓄票に該当する調査も実施されている。
また1995年分は阪神・淡路大震災の影響で兵庫県の分、2011年分は東日本大地震・震災の影響で岩手県・宮城県・福島県(被災三県)の分、2012年は福島県の分、2016年は熊本地震の影響で熊本県の分はデータが取得されておらず、当然各種結果にも反映されていない。