目まぐるしいゴルフ界「ノーマンのツアーに行かないで」と選手たちに嘆願した欧州ツアー会長の苦しい胸の内
DPワールドツアー(欧州ツアー)を率いるキース・ペリー会長が、グレッグ・ノーマンが6月から開始しようとしている新ツアーに「参加しないでほしい」「欧州ツアーを守ってほしい」と嘆願する内容のメールを、欧州ツアーのメンバーである選手たち約200名に送ったことが、英テレグラフ紙によって報じられた。
ノーマンが創設しようとしている「リブ・ゴルフ・インビテーショナル・シリーズ」に対して、これまで米国のPGAツアーを率いるジェイ・モナハン会長は「あっち(ノーマン)のツアーに参加した選手は即刻、出場停止処分。メンバーシップ剥奪もありうる」と声を荒げてきた。だが、PGAツアーと戦略的提携を結んでいる欧州ツアーのペリー会長がアクションを起こしたことが報じられたのは今回が初めてだ。
強硬姿勢を見せてきたモナハン会長とは対照的に、ペリー会長は選手たちに「私たちのDPワールドツアーへの忠誠心を見せてほしい」とお願いする低姿勢を見せている。
ノーマンがCEOを務めるサウジアラビアのリブ・ゴルフ・インベストメンツは、年間8試合からなる「リブ・ゴルフ・インビテーショナル・シリーズ」を今年6月から開始すると、すでに発表済みだ。
賞金総額は255ミリオン(2億5500万ドル)。1試合の賞金総額は2000万ドル。チーム戦のトップ3には、さらに500万ドルが分配される。7試合終了後、個人戦のトップ3には、さらなる3000万ドルが分配される。8試合目の最終戦は10月28日からで、チーム戦のみ、総額5000万ドルが授けられる予定だ。
その初戦は6月9日からロンドンのセンチュリオンGCで開催され、エントリー締め切りは来週4月25日(月曜)とされている。
米国では、世界ランキング1043位のロバート・ガリガスが出場意思を正式に示し、PGAツアーに出場許可を申請したことが、やはり英テレグラフ紙によって、すでに報じられている。
そして欧州では、DPワールドツアーの選手たち「最低でも6名以上」が初戦への出場許可を申請すると言われており、英テレグラフ紙はバッバ・ワトソン、ケビン・ナ、イアン・ポールター、リー・ウエストウッドの4名はノーマンのツアーへ移籍する契約書にサインをしたとも報じている。
ペリー会長は、DPワールドツアーの複数あるいは多数の選手たちがノーマンのツアーへ移籍してしまうと、「我が欧州ツアーの大会、とりわけ300年の歴史を誇る大会や伝統的な大会が存続の危機にさらされる」「みなさんの動き(移籍)が短期的にも長期的にも欧州ツアーに深刻なダメージを及ぼすことになる」と記し、ノーマンのツアーへ行かないでほしいとメールで呼びかけたという。
さらにペリー会長は、ノーマンのツアーの大会に「移籍」するのではなく、1試合だけ出場を希望するといった場合は「ケース・バイ・ケースでの対応もありうる」として、PGAツアーのモナハン会長とは異なる柔軟性も見せている。
米ツアーは強硬姿勢。欧州ツアーは柔軟な低姿勢。その違いは、それぞれの会長の人柄が反映されている以外は、ツアーの体力の違いや選手層の違いなどから生じていると私は感じている。
だが、ペリー会長が言っているように、ノーマンのツアーへの参加を試合ごとに「ケース・バイ・ケース」で認めていけば、今年始めに米欧両ツアーから多くのトッププレーヤーが参加して大騒動になったサウジ・インターナショナルと同様の状況が年間に何度も起こりかねない。
とはいえ、モナハン会長が強調しているように、ノーマンのツアーに出たら「即出場停止」「メンバーシップ剥奪」といった強硬姿勢をおし進めていけば、欧州ツアーそのものの試合開催が危うくなりかねない。
ペリー会長のEメールからは、そうした事態を予測した上で強い危機感を抱いていることが伝わってくる。
果たして、欧州の選手たちは、自分たちのツアーに対して忠誠心を見せてくれるのか。それとも、別の判断を下すのか。
世界のゴルフ界の動きから、目が離せない。