小中学生で確実に進む新聞離れ…子供の社会への関心度や新聞閲読率の実情をさぐる
中学生よりも小学生の方が社会問題への関心度は高い
大人同様子供にもやるべきことは山ほどあり、しかも経験や能力が未熟なことから、必要な事柄を果たすのには大人が思う以上に手間と時間がかかる。それらの義務を果たしつつ、自分の旺盛な好奇心をあちこちに向け、社会の問題や出来事に興味をいだき、色々と新たな経験をしたり、情報を取得して知恵とし、成長を重ねていく。それでは昨今の子供達はどれほどまでに社会に関心を持ち、ニュースを取得しているのだろうか。文部科学省が2018年7月に発表した「全国学力・学習状況調査」(※)の最新版による公開値を基に、小中学生の社会への関心度と、新聞やテレビ・インターネットなどのニュースの取得状況を確認する。
最初のチェック項目は、地域や社会で起きている問題や出来事(いわゆる時節的なお話)に関心を抱いているか否か。今調査項目は都合6年分の結果が確認できる(これは今記事の以降の項目も同じ)。
直近年度では関心派(「ある」「どちらかといえばある」を合わせた青系統着色)は小学生が6割超え、中学生もほぼ6割。経年で増加する傾向があったが、2017年度以降は小中学生ともに減少に転じてしまっている。2016年度の大きな突出は、調査直前に発生した熊本地震が影響した(社会により強い関心を持つようになった)のだろう。
他方、どの年度でも中学生よりも小学生の方が関心度が高い結果が出ているのは、意外ではある。調査報告書ではこの傾向に関する注釈は特に無いが、勉学や部活動、趣味など、自分自身に手が届く範囲での環境への注力が優先し、自分とは直接関係は無さそうに見える、少なくとも大きな影響は生じないであろう物事への関心は、優先順位が低くなるからだと考えられる。もう少し以前からの調査が行われていれば、携帯電話との関連性も推測できたのだが、携帯電話が普及し始めた以降のデータだけでは、それも難しい。
小中学生の新聞離れは進む
社会問題により強い関心をいだくようになりつつある小中学生。それでは文化の主軸であり、欠かせない存在だと自己主張する新聞へはどのような接し方をしているのだろうか。
「若者の新聞離れ」とはよく聞く言い回しだが、小中学生においてもその言葉は当てはまる結果が出ている。月一程度でも読む人も購読者と試算しても、直近で小学生の購読率は4割程度、中学生では3割程度でしかない。しかも6年分のデータしか無いのであくまでも仮説となるが、ますます新聞から距離を置く傾向を示している。通常の新聞は定期購読され毎日世帯に投函される状況を考えれば、ほぼ毎日読める機会は生じる。その上でその機会を活かし、日々新聞に目を通しているのは、小学生で7.5%、中学生では5.0%でしかない。
この減少傾向には、世帯ベースでの新聞購読率が減少しているのも影響しているものと考えられる。子供が自ら望んで新聞を購入・調達するとは考えにくいからだ。一方で小学生よりは中学生の方が、購読率は低い。社会への関心度の低さ、あるいは自分自身の身の回りへの注力度の大きさは、新聞購読率にも表れているようである。
それでは紙媒体で無ければ、ニュースへの関心は高いのだろうか。テレビとインターネット系のニュースをひとまとめにする設問側の意図がいまいちつかめないが、その双方合わせて見ているか否か、その度合いを確認したのが次のグラフ。
情報の取得率は新聞よりはるかに高い。調査の限りでは過去から直近年度まで、見ていない人は2割足らずに留まっている。まだ経年取得値は6年のみだが、少なくともその期間においては増減はほとんどなく、安定した高い値を維持している。ただし小学生に限れば、ここ数年で「よく見る」の値が増えているようにも解釈はできる。
今件項目は子供達が社会に向ける目の方向性だけでなく、その好奇心をどのようなルートからの情報で充足させるのかなど、メディアの利用様式とも係わる項目のため、非常に興味深い内容に違いない。小中学生の習慣はおおよそ高校生にも引き継がれ、それはさらに大人になっても変わらない可能性は高いからだ。
来年度以降も継続した調査が行われ、値が公開されることにより、子供達の社会への関心度やニュース媒体の利用性向の変化がよりはっきりとした形で明らかになることだろう。
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※全国学力・学習状況調査
2018年4月17日、国公立および私立の小中学校に対し悉皆調査方式(標本調査ではなく全体を調べる)で行われたもので、実施学校数は小学校が1万9386校、中学校が9597校。教科調査(学力テスト)は国語A・Bと算数(数学)A・B、理科が実施されている。
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