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早くも首脳陣から好評価を受ける有原航平が日々味わっている日本とは違う充実感

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
キャンプ初の実戦式打撃練習に登板した有原航平投手(レンジャーズ提供)

【順調ぶりが窺えるMLB1年目の有原投手】

 一時は開始延期も検討されていたMLBのスプリングトレーニングだが、時折新型コロナウイルスの陽性反応者を出しながらも、各チームとも大きな混乱もなく順調に日程を消化している。

 現在では野手も合流しほぼ全選手がキャンプ地に揃っており、日本人選手たちもビザ取得のため帰国中の澤村拓一投手を除き、8選手が無事キャンプインしている。

 スプリングトレーニング直前にブルージェイズからFAとなり、ジャイアンツとマイナー契約を結び開幕メジャー入りを目指す山口俊投手。昨シーズンは二刀流の完全復活に失敗し、今シーズンに雪辱を期す大谷翔平選手。

 さらにMLB移籍1年目で思い通りの成績を残せず今シーズンに巻き返しを目指す秋山翔吾選手と筒香嘉智選手等々。今年のスプリングトレーニングも注目すべき点は多いが、個人的に注目してしまうのは、今オフにポスティング・システムを利用してMLB挑戦を表明した3選手の中で、唯一MLB移籍を実現させた有原航平投手になってくる。

 やはりMLB1年目のスタートというのは、それだけ重要なものになってくるからだ。ただここまでの情報をチェックする限り、有原投手は充実したキャンプ生活を過ごし、順調な調整を続けていることが窺える。

【指揮官も絶賛する迅速な適応力】

 有原投手にとって初めてのスプリングトレーニングながらも、ここまでの調整ぶりは早くも首脳陣に好印象を与えている。クリス・ウッドワード監督は、以下のように彼の適応力を高く評価している。

 「彼の即座の適応は非常に興味深い。彼がレンジャーズを選んでくれたのも、如何に彼を成長させていくかを示した投手コーチのプレゼンに興味を持ってくれたからなのだが、彼は周りの意見に耳を傾ける心の広さを持っている。ここまでも変化というのは適当ではないが、少しずつ着実に適応し続けている。

 例えばフォーシームの動きがややツーシームやシンカーのような球筋になっていた際に、しっかりフォーシームの確認を行い、次のブルペン投球では思い通りのフォーシームを投げていたのは驚いた。

 あれだけ迅速に対応できるということは印象的だったし、それ自体彼は周りが見えていて、改善していく方向にしっかり進んでいることを証明するものだ。ブルペンでの投球練習をしっかりコントロールできており、今後は徐々に強度を上げていくことを目指していくことになる」

 すでにウッドワード監督が有原投手に対し、ベテラン投手のような信頼を示しているのが理解できるだろう。

【初めて打撃練習に登板】

 現地時間の2月24日はスプリングトレーニング初のライブBP(実戦形式の打撃練習)に登板。28日にオープン戦開幕を控え、実戦に向け一歩ずつ階段を上っている。

 この日の打撃練習登板でも、しっかり投球の微調整を続けている。

 「最初のブルペンで投げた後にデータの面でコーチと話し合って、真っ直ぐが数値的に良くなっていたり、その他のボールが今までの数値と変わっている部分があったので、そのデータと自分の中の感覚を擦り合わせというか、まだそこまで大胆に変えていないですけど、ちょっとずつ調整しているような感じです」

 また初めて経験するMLBのスプリングトレーニングに、これまでにない充実感も味わっている。

 「バント処理とかもいろいろバリエーションがあって、それは日本ではあまりやってこなかったプレーだったりもしたので、自分の中の引き出しになったというか、日々新しいことばかりで、刺激的で勉強になっています」

【本来は調整が難しいアリゾナをすでに経験済み】

 すでにご存じの方も多いと思うが、MLBでは全30チームが15チームに分かれて、アリゾナとフロリダでスプリングトレーニングを実施している。その2つの開催地を比較した場合、砂漠地帯でやや標高が高いアリゾナは、ボールが滑りやすく打球が飛ぶため、投手の調整はかなり難しいとされている。

 しかし有原投手は、日本ハム時代に3年連続アリゾナ・キャンプを経験しており、この地で投球する難しさを肌感覚で理解している。NPB公式球と違いがあるMLB公式球を本格的扱うのは初めてとはいえ、アリゾナを熟知しているのは大きなアドバンテージといっていい。

 個々までの調整ぶりはとにかく、現在のレンジャーズの現有戦力を考えれば、有原投手は余程のことがない限り先発ローテーション入りが保証されていると考えられる。

 MLB公式サイトによれば、先発候補は有原投手を含め7人いるが、彼以外の6人のうちカイル・ギブソン投手とマイク・フルタネビッチ投手以外の4投手は、MLBでの通算投球回数が100イニングにも達しておらず、明らかな経験不足だ。

 それを考えると、日本ハム時代にエースとしてローテーションを支えてきた有原投手の実績は、チームとしても貴重なものであり、すでに必要不可欠な戦力だと見られていても何ら不思議ではない。むしろ今シーズンの投球内容次第では、エースの役割を果たす可能性も十分にあるだろう。

 とにかくスプリングトレーニングで首脳陣を満足させる調整を続けることができれば、有原投手は素晴らしいシーズン開幕を迎えることになるだろう。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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