ジャスティン・ターナーのコロナ感染は必然だった? 同僚が証言したMLBの曖昧すぎる安全対策
【今も批判を受けるドジャース選手の問題行動】
MLBの2020年シーズンは、ドジャースが32年ぶりにワールドシリーズを制し幕を閉じた。本来なら祝勝で盛り上がるべきドジャースが、米国内で猛バッシングを受けているのはご存じだろう。
すでに日本でも多くのメディアが報じている通り、シリーズが決した第6戦の試合中に新型コロナウイルスの陽性反応が確認され、先発出場していたジャスティン・ターナー選手が途中退場し、そのまま球場内に隔離されることになったのだが、試合後の優勝セレモニーに再びグラウンドに現れ、チームと一緒に集合写真に加わっていたことが確認されていた。
このターナー選手の行動が無責任で、我が儘だと猛批判を浴びることになり、アンドリュー・フリードマン球団社長を含め、ドジャース関係者がターナー選手を擁護する一方で、MLBは「ジャスティン・ターナーは他者の安全を脅かし、プロトコルを軽視した行動を選択した」との声明を発表し、調査に乗り出している。
またワールドシリーズ終了後もドジャース、レイズともに2度の検査を実施するなど、厳戒態勢が敷かれることになった。
【問題行動とは別に検証されるべき感染経路】
今も批判が続いているターナー選手の行動は、やはり問題があったと言わざるを得ない。
グラウンドに姿を現した彼はマスクを着用していたものの、集合写真の際はマスクを顎にずらし、チームの中心選手として1列目中央のデーブ・ロバーツ監督の隣に座って撮影に応じていた。
これはMLBが指摘するとおり、他者への感染リスクを高める行為に他ならず、反論の余地はないだろう。
だがその一方で、ターナー選手の行動に関心が集まりすぎて、どうして彼から陽性反応が出たのか、また感染経路はどこなのか、という根本的な疑問がまったく解決されていない。
というもの、MLBはポストシーズンの地区シリーズから中立地開催に切り替え、新型コロナウイルスへの安全対策を万全にして臨んでおり、選手を中心にチーム関係者は厳重な管理下に置かれていた。
にもかかわらず、ターナー選手から陽性反応が出た(米メディアによるとレイズ選手の家族にも陽性反応が出たようだ)ということは、安全対策に不備があったのではという疑問も沸き上がってくる。
【ドジャース投手が明かしたシリーズ中の内幕】
そんな疑問に答えてくれた人物がいる。ドジャースの主要リリーフ投手の1人、ジョー・ケリー投手がボストンを拠点とするラジオ局「WEEI」のポッドキャスト番組に出演し、ワールドシリーズ期間中に彼が見聞し、感じたことを証言しているのだ。
この内容は、同局サイトで視聴できるので、興味がある人はぜひ確認して欲しい。
ケリー投手は、ターナー選手の陽性反応について「納得できる」とした上で、「安全圏ゾーンと言われながら人生で初めて安全だとは感じなかった」と指摘し、以下のような疑問点を挙げている。
「自分はホテル内にあるゴルフコースの18番グリーン側のビラを与えられたが、そこはグリーンから20ヤード(約18.3メートル)も離れていなかった。ゴルフコースは一般に解放されており、立ち入り禁止のテープを無視してゴルファーが部屋の側でボールを打っていた。外から(警備の)人が叫ぶ声が聞こえてきたが、ゴルファーは『ボーを取りに来たんだ』と返事していた。こんな状態が毎日続いていた」
「自分たちは規則により、ゴルフをすることが禁止されていた。それでもホテルにはたくさんのゴルフバッグがあったのを確認している。事実して選手以外のホテル宿泊者が、プレーしていたのを知っている。それはメディアであり、(球場の)グランドに入ることが許可されている関係者であり、審判たちだ。彼らはプレーが許され、自分たちは禁止された。どうやら新型コロナウイルスはPRやホテル従業員、審判より選手に多く感染するようだ。何とも賢いウイルスだね」
「ホテル従業員が我々の食事を運んでくるのだが、本来はドアの前に置いていくことになっていながら、結構な割合で部屋の中まで食事を運んできた。彼らはホテルに泊まらず、帰宅し家族と過ごしていた。これでどうやって安全圏ゾーンを維持できるのか」
【疑問が残るMLBの安全対策】
ケリー投手の証言から判断すれば、MLBの安全対策はかなり曖昧で、安全圏ゾーンで過ごしていたターナー投手が感染したとしてもまったく不思議ではない状況だったように感じないだろうか。
ケリー投手が「選手として認識されず、警備員もいなかったら、間違いなくもっと増えていた」と話しているように、むしろターナー選手1人に留まっていたことが幸運だったように思える。
このケリー投手の証言を受け、MLBはどう対処していくのか。ターナー選手の調査も大切だが、今回の証言の事実確認をした上で、こちらも調査し、安全対策の再検討を進めていくべき重要事項ではないだろうか。