集金業務も保護者の仕事? PTAや保護者が「学校の手伝い」をするのは当たり前のことなのか
給食費や学級費などといった学校徴収金を、保護者やPTAが集める学校がある。先生の長時間労働を減らすことは子どもにとっても大事だが、そのために保護者が無償労働をすることが妥当だろうか。
保護者(主に母親)が「学校のお手伝い」をする光景は見慣れたものだが、それは果たして本当に「当たり前」のことなのか? 改めて考えたい。
*行事はまだしも、集金はどうか
「PTAは学校の嫁(お手伝い)ではない」。こういった声は昭和の時代からずっとあるが、「お手伝いしたい人がする」分には、まあ問題ないのではないか。筆者はそう考えてきた。
特に行事のお手伝いは、やむを得ないところもあると思えた。日本の学校は、子どもに勉強を教える以外のことを多くやり過ぎているが(もちろんありがたい面もあるのだが)、なかでも運動会や卒業式などの学校行事は保護者に見せる要素が強い。
保護者のために発生する仕事も少なからずある。たとえば運動会のときは、保護者や来賓が使用するトイレまで校内の各所に案内板を設置する仕事。「自転車で来てはいけない」と言ってあるのに自転車で来てしまう保護者等を校門で追い返す仕事(でないとその辺に自転車を乗り捨てるので近隣から苦情が来る)、等々。
こういった仕事を手伝うのは、理解できることと思ってきた。
だが、行事以外のお手伝いについては、どうだろうか。
たとえば「学校徴収金(給食費や学級費など)の徴収業務」。少数ではあるが、この業務をPTAが担っているケースがある。筆者が住む自治体でもそうだ。
毎月集金日に各クラスから2、3人の母親(ごく稀に父親)が学校に足を運び、担任から受け取った集金袋を一つずつ開封し、提出の有無や金額をチェックして、集計をしたり、お釣りをセットしたりしている。
他の地域の保護者に話すと「えっ、PTAがそんなことやるの!?」と驚かれるのだが、逆に地元で「よその自治体のPTAは、こういう仕事はやっていないよ」というと、びっくりされる。
さらに驚くことに、なかには「PTAの保護者が児童生徒の家を一件ずつまわって給食費を集める」という自治体や(12/31朝日新聞)、PTAではなく「全保護者が当番制で集金業務を担っている」地域もあるという。
いくら先生が忙しいからといって、PTAや保護者がそこまでやるのは、やはりおかしいだろう。
「保護者が徴収すると未納が減る」というが、それは不適切な個人情報の取り扱いを前提にしているからだ。払わない、または払えない人は、「未納」という個人情報が否応なく他の保護者に開示されるため、払わざるを得ない。このやり方に問題があることは言うまでもない。
集金業務をやってみると、確かに「これは先生がやる仕事でもないな……」と感じるのだが(先生にはもっと子どもたちと直接かかわる仕事に時間を割いてほしい)、だからといって、保護者がやる仕事でもない。
一部の自治体がすでに実施しているように、給食費については公会計化して自治体が保護者から直接徴収するなり、給食費以外については、各校で事務職員さんを拡充するなりして対応すべきだろう。
*お手伝いは本当に当たり前か?
いま、先生たちの長時間労働を減らすべく「学校における働き方改革」が進められている。これまで何度も書いてきたとおり、これは子どもたちが毎日を過ごす学校生活に大きく影響する話であり、保護者にとっても重要な課題だ。
しかし、先生の仕事を減らす分、保護者が無償で肩代わりを求められるのは困る。仕事を削るか、または予算化しないと、無償労働の押し付け合いが起きるだけだ。
「学校における働き方改革」の中間まとめでは、「基本的には学校以外が担うべき業務」と位置づけられたものが4つ(※)あるが、そのなかに「学校徴収金の徴収・管理」が入っている。
もしや、「学校徴収金の徴収・管理」は正式にPTAや保護者の仕事とされてしまう可能性もあるのでは? そんな不安も抱いてしまう。
そもそもの話、保護者が学校の手伝いをすることは、当たり前のことなのだろうか? 「手伝いたい人が手伝う」のと、「やって当然」「やるべき」という位置付けは、全く意味が異なる。
筆者も昔、集金袋から出したお札を一枚、二枚と数えながら、「なんで収入も将来も不安定な自営のシングルマザーが、学校の仕事を肩代わりしているのか? なぜ学校は、そのことを疑問に思わないのか?」と思ったことは、正直に言うとある(保護者同士の交流は楽しかったのだが)。
おそらく学校は、父親やシングルマザーに手伝わせることを想定していない。「夫婦片働きの両親」がいることを前提に、メインの稼ぎ手ではないほう(専業やパートの母親)が学校を手伝うもの、と思っているのだろう。
だが冷静に考えれば、メインの稼ぎ手でなければ学校の手伝いをするのが当然という考えも、やはりおかしいのではないか。
以前あるラジオ番組に出演した際、ドイツ出身のパーソナリティの方から「なぜ日本のPTAは学校と対等に話し合いをせず、お手伝いばかりしているのか?」と聞かれ、何も答えることができなかった。
保護者が学校を手伝うのは、決して「当たり前」ではないはずだ。そのことを今一度、広く認識されたい。
*学校行事の忖度ループ
なお学校行事については、先ほども書いたように、保護者が手伝うのはやむを得ないことと思ってきた。しかし最近は少々考え直している。
もしかすると、PTAや保護者がお手伝いをするせいで、学校は行事をやめづらくなっているのではないかと感じるからだ。PTAと学校の間には、忖度のループが生じている。
それにPTAが学校に労働力やお金の提供をしている限り、公的な予算はつかない。「あっちに頼めばいいでしょ」と言われてしまい、いつまでもPTAや保護者に頼らざるを得ない。
もちろん「手伝いたい」と思う保護者もいるので、その気持ちは生かされたいが、これまでのやり方は、いろいろと見直したほうがいいのではないか。まずは行事そのものの削減や規模縮小を進められたい。保護者の手伝いも、必ずしもPTAを経由する必要はないはずだ。
- ※ 残り3つは「登下校に関する対応」「放課後から夜間の見回り、児童生徒が補導されたときの対応」「地域ボランティアとの連絡調整」だった