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相次ぐ「GoTo外し」に混乱する観光業界

木曽崇国際カジノ研究所・所長
(写真:アフロ)

先日、別の投稿で現在のGoToトラベルの混乱状況に関して言及したばかりですが、またまたやってくれましたよ、観光庁さん。以下、NHKからの転載。

「Go Toトラベル」 観光を主な目的としないものは除外へ

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201030/k10012687661000.html

観光需要の喚起策「Go Toトラベル」で、観光を主な目的としないものが対象から除外されることになりました。ビジネスでの出張や、高額なサービスがついた宿泊プランなどが11月から除外されます。

[…]観光を主な目的としない商品は除外するとして、ビジネスでの出張についてはGo Toトラベルでの利用を極力制限し、企業向けに出張手配を行う予約サイトは、割り引きの対象外とします。

また、通常の宿泊料金を著しく超えるルームサービスやホテル施設の利用券、商品がついた宿泊プランが対象から除外されるほか、ダイビングやヨガのライセンス取得や英会話の講習などがついた宿泊プランも除外されます。

いわゆる「免許合宿」に対する批判から始まった「GoTo外し」ですが、先の投稿にて「免許合宿を外すのならスキューバーライセンスの取得合宿など、いわゆるこれまで『スタディーツーリズム』と呼ばれて来た観光商品分野を全て外して頂くしかない」と申し上げましたが、その様な運用となりそうです。

そして、今回新たに加えられた「GoTo外し」が、ビジネス出張。企業向けの出張手配は割引の対象外となるらしいです…が、正気ですか観光庁さん?

数ある観光分野の中に「MICE観光」と呼ばれる観光分野があります。MICEとは、Meeting(企業会議), Incentive/Inspection(褒賞/視察), Convention(国際会議), Exhibision(展示会)の頭文字を組合わせた業界用語で、いわゆるビジネス観光全般を指す言葉です。観光庁はこれまで、我が国の観光振興の重点分野としてこのMICE振興の旗振りを強力に行い、庁内にMICE推進室という部署まで設置してその振興を行ってきました。しかし今回、そのMICE観光を一連の「GoTo外し」の中で「観光を主な目的としないもの」と定義してしまったとなると、今後、貴方達は何の「御旗」をもってMICE観光の振興をするつもりなのですか?という話であります。

というか、一方で観光庁は労働者リモートワークを観光地で行う事を推奨するワーケーション事業なぞの旗振りを、今回のコロナ禍の発生後に強力に始めており、全国観光地への企業誘致に補助なんかを出し始めているワケですが、これだって観光庁のいう所の「観光を主な目的としないもの」となってしまうワケで、さっさとワーケーション振興なんか辞めちまえっちゅう話にしかならないわけです。

まあ、これは先の投稿でも既に書いている事ですが、そもそも数週間前まで観光庁は免許合宿もビジネス観光も「消費喚起も期待できる(by 観光庁担当者)」とGoTOトラベルの対象となることを容認していたワケで、庁内の全員が今回の方針転換に納得していないのは判っているワケですが、逆に誰がこのような方針転換を主導したのかは判りませんが「スタディツーリズムは観光じゃない、ビジネス観光は観光じゃない」なぞという、今までの観光振興政策を台無しにしてしまうような組織決定をして、今後の観光庁は大丈夫なんでしょうかね?

こんな二転三転のグダグダの挙句、「GoTo外し」の対象となった分野の観光業者は、今後一切観光庁に付いて行かないと思いますよ。

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

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