高齢者の外来・入院の実情をさぐる(2019年時点最新版)
高齢者は加齢により心身が衰えることから、医療サービスの利用頻度が高まることになる。その実情を厚生労働省の調査結果「患者調査」(※)から確認する。
「患者調査」の結果によれば、高齢層は他の年齢階層と比べて外来(通院)・入院率が非常に高い値で推移している。まずは直近分となる2017年分の受療率を高齢層に限定する形で確認する。これは人口10万人対(該当する属性10万人に対する人数)で示している(調査では特定の1日を対象に各値を取得している)。
外来の場合は対象として病院・一般診療所以外に歯科診療所も含まれるため、必然的に値は大きなものとなる。もちろん各病院の患者の収容能力の問題もある。
男女で統計上のぶれは生じているものの、年上になるに連れて入院率も外来率も増加している状況が一目でわかる。75歳以上になると男女とも10万人につき約1万2000人、つまり12%程度が外来し、4000人前後、すなわち4%前後は入院している計算になる。
続いて外来、つまり通院動向について、各年齢階層の経年動向と、直近における高齢者の主要要因別の受療率を確認する。
高齢層の外来受療率は他の年齢階層と比べ、群を抜いて高い実情が分かる。今世紀に入ってからは減少傾向にあるが(今件は絶対数では無く対10万人比なので、高齢者人口の増加そのものには影響しないことに注意)、多少ながらも意識の変化が起きている、あるいは健康度が増加している可能性はある。
また主な傷病別では、高血圧や脊柱の障害で通院する人が多いこと、男女ともに心疾患や悪性新生物(がん)による通院率は年上になるに連れて高くなるが、特に男性で加齢による上昇度合いが大きいことが分かる。
続いて入院。
入院率も外来同様に、高齢者は他の年齢階層と比べて一段と高いが、こちらもまた近年に至るに連れて減少する傾向を示している。
傷病別では主な項目で度合いの違いはあるが、年が上になるに連れて受療率は増加していく。一方で男性は悪性新生物(がん)、女性は75歳以上の脳血管疾患で異性よりも高い値を計上しているのが目に留まる。ただし65歳以上全体・75歳以上は、区切りの年齢以降すべてが該当するため、平均寿命の長い女性の方が「以上」の区分で高い値を示すのは仕方が無いとの見方もある。切り口を変えれば、そのような事情があってもなお、悪性新生物(がん)では女性の方が入院率が低い。興味深い動きではある。
高齢者にとってはかかり付けの医療機関が身近にあることが、安心できる環境条件の一つとなる。しかし高齢者は増加を続け、医師・医療機関数は横ばい、あるいは減少の動きすら確認できる。全般的な医療のあり方も含め、現状を精査し、医療を行う側が手いっぱいとなってしまい「本当に医療サービスが必要な人」が足踏みをさせられることの無いように、適切な対策を取ることが行政には求められよう。
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※患者調査
直近分は2017年10月17日から19日のうち、病院毎に指定した1日(診療所は10月17日・18日・20日のうち指定した1日)において、各状況を確認したもの。歯科診療所(いわゆる歯医者さん)は外来のみの調査。患者数は調査日当日の該当人数(抽出調査のため統計値は推計)、退院患者(の在院日数)は同年9月に退院した患者の平均値。なお2011年分は震災の影響で宮城県の石巻医療圏、気仙沼医療圏および福島県が未調査のため、それらの地域の統計値は未反映。
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