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王将戦二次予選1回戦、藤井聡太七段(16)が佐藤康光九段(49)に勝利

松本博文将棋ライター
(記事中の写真撮影・画像作成:筆者)

 7月18日。東京・将棋会館で王将戦二次予選1回戦▲藤井聡太七段(16歳)-△佐藤康光九段(49歳)戦がおこなわれました。結果は141手で藤井七段の勝ちとなりました。

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 藤井七段は二次予選2回戦で、中村太地七段(31歳)と対戦します。

藤井七段、難解な一局を制する

 両者は公式戦では初手合となりますが、非公式戦では2017年、AbemaTVで放映された「藤井聡太四段 炎の七番勝負」で対戦しています。

 その時は佐藤九段は一手損角換わりから向かい飛車にして、銀冠に組むという作戦を取りました。対して藤井四段(当時)は飛車を転換して、玉頭から殺到します。

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 最後は見事な寄せを見せて、藤井四段の勝ちとなりました。

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 王将戦二次予選の棋譜については、毎日新聞社の速報ページなどをご覧ください。

 https://mainichi.jp/oshosen-kifu/190718.html

 振り駒の結果、先手番を得たのは藤井七段でした。藤井七段の出だしは、いつもと変わらぬオーソドックスなものです。

 対してオリジナリティあふれる、独創的な棋風が知られている佐藤九段。本局では相居飛車から、定跡形をはずれた戦いに誘導しました。藤井七段に横歩を取らせ、自陣をへこまされる代償として、桂1枚を得ます。

 長く続いた中盤戦は、非常に難解なものでした。互いに中段に配置された飛角の大駒が大きくめまぐるしく動きますが、形勢はきわどく保たれたままに推移します。

 藤井七段は王手飛車取り、王手角取りと大技を連発します。対して、佐藤九段もきわどくこらえて反撃。勝敗不明の終盤戦となりました。

 両者持ち時間の3時間を使い切り、1分以内に次の手を指さなければいけない中、藤井七段は打った歩をすぐに成り捨てるという手段に出ます。これは一歩を犠牲にして、貴重な考慮時間を稼ぐというテクニックでもあります。やり直しで盤上は元に戻った後、佐藤玉を寄せる藤井七段の次の手が的確だったようです。

 最後、藤井七段の玉も逃げ場のない端にまで追い詰められましたが、きわどく受けきって一手の余裕を得ます。最後は鮮やかに相手玉を詰まして、見事に公式戦で大豪を降しました。

次戦は中村太地七段戦

 王将戦二次予選では、対戦する相手は全て強敵です。

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 藤井七段の次戦の相手である中村太地七段(31歳)は王座のタイトルを獲得したこともある若手トップクラスの棋士です。

 両者は公式戦は初手合。非公式戦では前述の「炎の七番勝負」で対戦しています。その時は藤井七段が先手で角換わり腰掛銀に。藤井七段が金桂交換の駒損の代償に上部を手厚くする、秀逸な構想を見せました。

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 終盤はきわどい一手争いとなりましたが、長手数の即詰みを読み切り、勝利を収めています。

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 次回の対局では、どのような展開となるでしょうか。

 藤井七段は明日7月19日で17歳の誕生日を迎えます。高校2年生なので、学校は夏休みを迎えますが、その間にも重要な対局は続いていきます。23日は竜王戦決勝トーナメント準々決勝で、豊島将之名人と対戦します。

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将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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