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新型コロナ第8波は想定より早く到来 変異し続けるウイルスに治療薬は有効?

倉原優呼吸器内科医
イラストACより使用

全国各地で新型コロナの新規陽性者数が増えつつあります。特に北海道は、過去最多水準の新規陽性者数であり、第8波に入った可能性があります。たくさんの変異ウイルスが登場していますが、現在使用されている治療薬は有効なのでしょうか?

想定より第8波到来が早そう

年末年始で人出が増えるので、年明けが波のピークではないかと考えられてきましたが、11月に入ったばかりだというのに各地で新規陽性者数が増え始めました。

驚くべきことに、北海道の新規陽性者数は過去最多水準に到達しつつあります(図1)。東京都の感染者数を超えて、全国で最も多い状況です。明確な第8波を形成している印象です。

図1. 全国および北海道の新規陽性者数(筆者作成)
図1. 全国および北海道の新規陽性者数(筆者作成)

全国的に、年末年始を待たず第8波のピークがやってくるかもしれません。

それでも基本はオミクロン株

オミクロン株の中でたくさんの亜系統が登場しています。グリフォン、ケルベロス、バジリスクなど、口にするのがちょっと恥ずかしくなるような別名がついていますが、基本はオミクロン株であることを知っておいていただきたいと思います。

お経みたいになりますが、BA.2系統の亜系統BA.2.75系統、BA.4系統の亜系統BA4.6系統、BA.5系統の亜系統BF.7系統とBQ.1系統、BA.2とBA.2.75の組換え体であるXBB系統など、ワクチンの免疫逃避や感染性の高い変異ウイルスが出現しています。

もうここまで細かく報道しなくていいんじゃないかと思っている専門家も、いるとかいないとか。

今のところ、国内で上記のうちどれかが優勢化しつつある徴候はありません。

変異し続けるウイルスに治療薬は有効なのか?

BA.2系統以降、抗体薬であるカシリビマブ/イムデビマブ(商品名:ロナプリーブ)、ソトロビマブ(商品名:ゼビュディ)で有効性が低下しています。

また、先ほど羅列した変異ウイルスでは、新しく承認されたチキサゲビマブ/シルガビマブ(商品名:エバシェルド)についても有効性が低下しているとされており、抗体薬の位置づけがかなりグラついています(1)。

なお、現在使われている抗ウイルス薬や抗炎症薬は有効です図2, 3)。

図2. 新型コロナ治療薬の分類と有効性(筆者作成)
図2. 新型コロナ治療薬の分類と有効性(筆者作成)

現場としては、今や抗ウイルス薬と抗炎症薬だけで戦っているという感じですね(図3)。

図3. 新型コロナ治療薬の適応(筆者作成)
図3. 新型コロナ治療薬の適応(筆者作成)

ワクチンは変異株を「狙い打ち」する必要はない

従来型ワクチンでも、2種類の2価ワクチン(起源株/オミクロン株BA.1、起源株/オミクロン株BA.4-5)でもよいので、接種することで抗体価を高めることと重症化を予防する効果が発揮されます。

BA.1よりもBA.4-5に対応した2価ワクチンのほうがよさそうに感じるかもしれませんが、待っている間に前回のワクチンの効果が低下していくので、早く接種できるほうを選択することをおすすめします(2)。

特に、12歳以上は初回接種用のワクチンが年内で供給終了になるため、未接種の方は早めに接種を検討ください図4)(3,4)。

図4. 年内に1・2回目接種を完了することをご検討ください(参考資料3より引用)
図4. 年内に1・2回目接種を完了することをご検討ください(参考資料3より引用)

(参考)

(1) The COVID-19 Treatment Guidelines Panel’s Statement on Omicron Subvariants and Anti-SARS-CoV-2 Monoclonal Antibodies(URL:https://www.covid19treatmentguidelines.nih.gov/therapies/statement-on-omicron-subvariants/

(2) 厚生労働省. オミクロン株対応ワクチンの種類と特徴(URL:https://www.mhlw.go.jp/content/000999261.pdf

(3) 厚生労働省. コロナワクチン1・2回目接種(URL:https://www.mhlw.go.jp/content/000998478.pdf

(4) 従来型の新型コロナワクチンは年内で供給終了 12歳以上はもう初回接種できなくなる?(URL:https://news.yahoo.co.jp/byline/kuraharayu/20221102-00322183

呼吸器内科医

国立病院機構近畿中央呼吸器センターの呼吸器内科医。「お医者さん」になることが小さい頃からの夢でした。難しい言葉を使わず、できるだけ分かりやすく説明することをモットーとしています。2006年滋賀医科大学医学部医学科卒業。日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医・代議員、日本感染症学会感染症専門医・指導医・評議員、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本結核・非結核性抗酸菌症学会結核・抗酸菌症認定医・指導医・代議員、インフェクションコントロールドクター。※発信内容は個人のものであり、所属施設とは無関係です。

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