2030年の台風予報 誤差を半分に
2030年、台風の3日先予報の誤差を100キロ程度に縮小するという。これは現在の半分、実現までの道のりは険しい。スーパーコンピュータ頼みの改善は限界が近づいている。
台風予報のブレイクスルー
天気予報で最も注目される台風進路予想図。予報円は先に行くにつれて大きくなるため、台風が発達するイメージを持つ人いますが、それは間違いです。予報円の大きさは台風の発達には関係なく、予報のばらつきが大きければ大きいほど円が大きく表示されるのです。
台風の予報が始まったのは戦後まもなくの昭和27年(1952年)です。当時は気象衛星もなく、今とは比べようもないほど気象データが不足していました。どのように台風を予想していたのか、想像もつきません。
当時の台風予報は24時間先まで。2日先の予報が発表されるようになったのは1989年で、それまでに37年かかりました。そして、1997年から3日先予報がスタート。今の5日先予報は2009年からです。
これをみると、台風予報のブレイクスルーは当初を除くと10年くらいでしょうか。台風予報の改善には長い時間がかかっています。
3日先の予報誤差は東京・名古屋間
気象庁は4日、2030 年に向けた数値予報技術開発重点計画を発表しました。そのなかで注目したのは、3日先の誤差を100キロ程度にすると掲げたことです。
こちらは1日先(24時間)と3日先の進路予報誤差を比べたグラフです。
現在、3日先の誤差は東京・名古屋間に相当する約250キロです。これを半分に、つまり1日先と同じ程度にするのです。このグラフをみると、年を追うごとに予報の誤差が小さくなっているように感じます。でも、1日先と3日先の差は歴然です。
台風の内部構造解明が鍵
台風予報のブレイクスルーが約10年としても、2030年までに、現在の約250キロを半分の約100キロまで縮小するのはかなりハードルが高いでしょう。これまで天気予報の進歩はコンピュータの性能向上に支えられていました。スーパーコンピュータ頼みの改善は限界に近づいているように感じています。
台風の雲はおなじみでも、台風の内部構造は未知の世界です。台風の本質を深く知ることが求められていると思います。
【参考資料】
気象庁ホームページ:台風進路予報の精度検証結果
気象庁:「2030年に向けた数値予報技術開発重点計画」について,2018年10月4日