いま必要なのは育児中だけでなく介護や病気のときにも使える制度
このところ、女子学生に向けてのワークライフバランスや他大学の男女共同参画主催の講演会などに呼ばれることが増えてきました。と同時に、私自身が講演するだけでなく、アンテナを張って都合のつく限り、聞きに行く機会を作るように心がけています。そうすることで、夢物語ではない、「すでに実現されている支援や制度」を自分の職場に提案することもできるからです。
育児中の女性のためのサポートで多い制度にはどのようなものがあるか
「午後5時以降には公的な会議は行わない」「授乳室を備えている、オムツ替えシート付トイレの設置」「職場保育園」「補助員雇用制度」「ベビーシッター割引券」などをよく聞きます。私も職場にライフイベント中の女性研究者に支援者を派遣する制度として「サイエンス・サポーター」という大学院生を研究のために雇うことのできる制度があり利用させていただいております.関連研究の調査や、原稿の校閲、学会発表の準備などお手伝いしてくださる研究員が1人いるだけで大変助かっています。
こういった男女共同参画の取り組みはたくさんの大学や企業で行われていると思いますが、実際にはまだまだ支援が足りないとの声が聞こえてきます。制度を作る上で重要なことは、どういったところを支援して欲しいという具体的な声を挙げていくことです。しかし、「部署で声を挙げられない」「(専業主婦の奥さんがいる)男性上司にうちも子ども3人いて大変なんだよ、と言われてそのあと言えなくなる」「毎回、子どもがいるので夕方5時以降は引き受けられませんと説明するのが大変なので、説明するのがめんどくさくなって引き受けてしまう」「保育園のあとのベビーシッターや病児保育代は年間で○百万!」などと実際には言えないでいる人の声も多いと聞きます。
最近はやりのプチマスオさん家庭
そんな状況をなんとかするための手段の1つとして、2世帯同居が挙げられますが、最近では娘が実家のそばに住み、祖父母と協力して仕事を続ける、といった「プチマスオさん家庭」が増えていると聞きます。私の身の回りでも奥さん側の実家が「スープの冷めない距離」に住んでいることが多いように思います。そうすることで、仕事が遅い日も泊りがけの出張でさえも子どもたちの生活をいつもと同じに保ったまま、帰宅だけ祖父母の家に帰ってね、とすることができるからです。何も実母じゃなくても、兄弟姉妹で助け合ってもよさそうですね。しかし、本当の解決策にはなっていないのではないでしょうか。
育児中だけでなく介護や病気のときにも使える制度に
数年先には「大介護時代」が来るとも言われています。仕事との両立のためにこれから本当に必要になってくるのは、育児だけでなく、介護にも、緊急の自分自身の病気・入院のときにも使える制度。
例えば、大学関係に限られてしまう例ですが、とある大学では「授業代替制度」というものがあるそうです。突然子どもの発熱で授業が行えなくなったときに、「休講にして補講にする」以外に、「あらかじめ事前に登録してある授業代替候補者に非常勤講師として講義してもらう」ことができる制度。学生さんにとっては休講になって別の日に補講が入るより、違った側面からその分野の話が聞けるというメリットもあります。大学側としてはあらかじめ登録されていることできちんと責任と実力を持った人材であると確認しておくことができます。
育児中の人を対象とした制度の多くは、育児中だけでなく、介護や自身の発熱のときにも助かる制度です。これを読んでいる読者のみなさんももしかしたら明日インフルエンザになってしまうかもしれません。しかし、こういったことを考えるときに集まる会議のメンバーは育児中のママがほとんどなのが現状。
育児中じゃないから関係ない、と思わずに、介護や自身の病欠などの際にどういった制度があると助かるかといった面を若手からシニアまで、そして男性も女性もみんなで具体的に想像し、提案・実現していくことで、より仕事とプライベートを両立しやすい環境や制度を実現していけるのではないかと思います。