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【台風シーズン到来】気圧変化で犬が発作 "気象病"かもしれないサインとは

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
イメージ写真(写真:イメージマート)

9月は台風シーズンです。雨が降ることも多いですが、室内飼いの犬や猫でも台風が近づくと体調を崩すことがあります。

筆者の動物病院にはがんを患う犬や猫が多く来院しており、予約診察の際、気圧の変化で体調が悪くなるため、診察日を変更するケースも見られます。

人ではこれを一般的に「気象病」と呼びます。台風10号が長期間にわたり日本に影響を与えたため、気象病に悩まされる人が増えたそうです。

気象病とは、気圧の変動や湿度の上昇など、気象条件が体に与える影響によって引き起こされる症状の総称です。では、犬や猫にも「気象病」があるのでしょうか。その点について見ていきましょう。

ロンちゃん(仮名)は、気圧の変動による発作

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ロンちゃんの飼い主Kさんから、台風などの気圧変化があると次のようなメールが届きます。

「お世話になっております。診察を予約していますが、気圧が急激に下がると、いつものウロウロが始まりました。ロンはてんかん発作を持っているので、ひどくなると困るため、家でおとなしくしておきます。それで、内服薬を郵送していただけますか」とKさんからのメールです。

Kさんは仕事に行くため、ロンちゃんは一頭で留守番をしています。しかし、Kさんは死角がないようにロンちゃんがいる場所にカメラを設置しており、ロンちゃんの様子を確認できます。

気圧の変化があると、ロンちゃんは落ち着かず、寝たかなと思うとすぐに場所を移動することがあります。犬や猫の頭痛は分かりにくいですが、気圧の低下により頭痛などが起きる可能性があります。

人の気象病とは?

気象病は、天候や気圧の変化が原因で起こる体調不良です。人の場合、気圧の低下や湿度変化や温度変化などにより次のような症状が見られます。

・自律神経の乱れ

・頭痛

・めまい

・吐き気

・眠気

・イライラ

特に、気圧の変化に敏感な人に多く見られ、ストレスや疲労が悪化の要因となります。体内の血液や組織の圧力も変化し、それに適応するために体が調整を行いますが、この調整がうまくいかないと、これらの症状が生じるとされています。

犬や猫の気象病とは?

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獣医療では「気象病」という言葉はそれほど浸透していません。

しかし、臨床の現場では、気候の変化によって体調を崩す犬や猫は多くいます。犬や猫は頭痛を訴えることができませんが、気圧が下がると落ち着かなくなったり、嘔吐したり、発作を起こしたりすることがあれば、人と同様に気象病であると推測しています。

・落ち着きがなくなる

・睡眠が浅くなる

・食欲不振

・嘔吐

・発作が起こる

犬や猫の気象病の症状を軽減するため

愛犬や愛猫が気圧の変化に敏感だと感じたら、以下の対策を考慮することが重要です。

□気圧計を購入

手頃な価格で気圧計が販売されているので、購入して気圧の変化に注意を払いましょう。

□室内環境の調整

室内の温度と湿度を一定に保ち、快適な環境を整えます。また、適切な換気や空気清浄機の使用も効果的です。犬や猫が安心できる場所を提供することも大切です。狭いスペースやベッドの下など、守られていると感じる場所を見つけてあげましょう。

□リラクセーション

犬や猫にはリラックスしてもらうことが重要です。マッサージや静かな音楽、リラックスできる環境を提供してみましょう。

□飼い主のサポート

犬や猫は飼い主の存在に安心感を覚えることがあります。なるべく在宅し、そばで落ち着かせるようにしましょう。穏やかな声で話しかけたり、撫でたりすることで不安を和らげることができます。

□獣医師のサポート

抗不安薬の処方やサプリメントの活用も考えられます。

ただし、気象病かどうかの自己判断は危険です。息づかいが荒くなるなどの症状が見られる場合、心臓疾患の可能性もあるため、必ず獣医師に相談してください。

まとめ

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気象病は、特に敏感な犬や猫に影響を与えることがありますが、適切なケアと獣医師のサポートによって症状を軽減することができます。犬や猫が気圧の変化が激しいときに食欲が落ちたり、動きが鈍くなったりする場合、それはペットの気象病かもしれません。

室内飼いの犬や猫が増え、より身近に感じられるようになっています。気圧の変化にも注意を払い、ペットの体調を確認することが大切です。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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