準決勝進出は春夏連続出場の4校に決定! どこが優勝しても初の栄冠! 本命なき準決勝を展望する
夏の甲子園は4強が決まった。準々決勝に残った8校中、大会前から優勝候補の呼び声が高かったのは東海大相模(神奈川)だけで、勝ち抜いた4校は二番手グループのいわゆるダークホースばかりとなった。そして4校全てが春夏連続出場のチームで、準決勝では春の再戦カードもある。傑出したチームが見当たらず、4校に等しく優勝のチャンスがありそうだ。
神村学園(鹿児島)-関東一(東東京)
ともにセンバツで準優勝の経験がある
1回戦から登場した神村学園は、2回戦の中京大中京(愛知)を1点差で振り切り、準々決勝では大社(島根)の大応援団に圧倒されそうになる場面もあったが、終盤に打線が奮起した。2年連続の準決勝進出で、甲子園デビューとなった19年前のセンバツで準優勝しているが、夏の甲子園では初の決勝進出を狙う。一方の関東一は、2回戦から登場し、3回戦では明徳義塾(高知)との僅差の試合をモノにした。準々決勝では東海大相模の猛追を振り切って、2-1で逃げ切り、9年ぶり2度目の準決勝進出。こちらも37年前のセンバツで、準優勝の実績がある。
神村の正林は復調気配、関東一の高橋は待望の一発
神村は今センバツ1回戦で作新学院(栃木)に快勝したが、2回戦では大阪桐蔭の2年生投手陣に4安打2得点と抑えられた。うち3安打を放った全国屈指の強打者・正林輝大(3年)を軸に、強力打線が看板。ただ正林の調子はまだまだで、ようやく大社戦で初の適時打が出た。小田大介監督(41)は「めちゃめちゃ大きい」と安堵し、復調を確信していた。一方の関東一はセンバツ開幕戦に登場し、八戸学院光星(青森)と延長タイブレークの死闘を演じたが、3-5で惜敗した。こちらも高校通算本塁打60本超の主砲・高橋徹平(3年=主将)が、相模戦で均衡を破る一発を放ち、強豪対決を制した。中心打者の状態が上がっているだけに、お互いの投手の出来が勝敗に直結しそうだ。
関東一の坂井は自己最速更新、神村は今村に本来の投球が戻るか
関東一は、相模戦で左腕・畠中鉄心(3年=タイトル写真)が、9回途中まで力投し、エース・坂井遼(3年)がわずか9球で逃げ切った。
今大会は坂井を救援待機させているため、同じような継投が考えられるが、「頭から(先発)でもいくつもり」と坂井は意欲満々だった。米澤貴光監督(49)は、「畠中はずっと調子が出ていなかったが、打たせて取る自分の良さを出せた。坂井から刺激をもらっていると思う」と、両輪の復活に手応えを感じていた。神村はエース左腕・今村拓未(3年)が大社の応援に圧倒され、4回途中で降板。「相手のプレッシャーを感じた。次は勝利に導く投球がしたい」と反省しきりだった。小田監督は「浮足立っていたのか、カウントが取れなくなった」と、3回戦完投の右腕・早瀬朔(2年)への早めの継投を決断し、これが奏功した。準決勝では今村が本来の投球を取り戻すのが絶対条件で、関東一の必勝リレーの前に、リードを奪いたい。
京都国際(京都)-青森山田(青森)
2左腕が交互に完投の京都国際に、青森山田はエースへリレー
京都国際は1回戦からの登場で、エース・中崎琉生(3年)、同じ左腕の西村一毅(2年)が交互に完投して、抜群の投手力で3年ぶり2度目の4強入りを決めた。中崎は西日本短大付(福岡)との3回戦で、14奪三振完封。また西村は、2回戦の新潟産大付、準々決勝の智弁学園(奈良)と2試合連続完封で、チームとして3試合連続無失点中。今春の近畿大会で初優勝し、地元勢として唯一の勝ち残りとなった。青森山田は2回戦から登場し、安定した投手力で堅実な試合運びだったが、滋賀学園との準々決勝は序盤から押しまくられた。先発の下山大昂(2年)が3回まで耐え、4回から登板したエース・関浩一郎(3年)が猛攻をしのいで、ワンチャンスをモノにした7回の1点を守り切った。同校にとって初の4強進出で、青森勢5度目の甲子園決勝進出を狙う。
センバツ1回戦で直接対決し、山田がサヨナラ勝ち
両校はセンバツ1回戦で当たり、3-3の同点から9回裏、6番・伊藤英司(2年)のサヨナラ打で山田が勝った。京都国際は中崎が完投し、山田は関から櫻田朔(3年)へ継投。山田は続く広陵(広島)戦でもタイブレークの死闘を制し、2試合連続サヨナラ勝ちで8強まで進んだ。センバツ初戦敗退に終わった京都国際は、主将の藤本陽毅(3年)が「この負けをきっかけに成長できた。今は投打が噛み合っている」と話すように、チーム全体が春より見違えるほど逞しくなっている。
京都国際は中崎の登板、山田は関の起用法に注目
京都国際は、2投手が交互に完投する異色の複数投手制で勝ち上がった。この「ローテーション」にのっとれば、準決勝は中崎の先発が予想される。
中崎本人は、2試合連続完封の後輩の力投に「西村にあれだけのピッチングをされたら刺激になる」と話し、準決勝は俺に任せろと言わんばかり。変化球のキレと正確なコントロールは中崎が上回るが、球威、球の力は西村の方がある。また四球から崩れる心配のないのが共通の特長で、展開次第では当然、継投もある。また相手に応じて打順を組み替える小牧憲継監督(41)の策も決まっていて、今大会では一度もビハインドの展開がない。山田の兜森崇朗監督(45)は「でるだけ関の負担を軽くしたい」と話していることから、滋賀学園戦のような継投が予想されるが、櫻田に制球面での不安があり、関に任せる可能性もある。関の起用法に注目したい。いずれにしても、センバツのような終盤の攻防に、勝敗の行方が委ねられることになりそうだ。
波乱の大会の結末は?
優勝候補が次々と消え去り、どこが優勝しても初めての栄冠となる。「朝夕二部制」の導入や、「7イニング制」の検討まで始まった甲子園100年のメモリアル大会は、最後まで波乱含みの様相だ。