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中国「一人っ子政策」撤廃で、コンドーム株が暴落

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト
(写真:アフロ)

中国共産党は10月29日、1970年代後半に導入した「一人っ子政策」の廃止を決定した。過去30年にわたるこの政策は、少子高齢化や労働力不足、更には国家が強制的に子供を生む権利を制限する人権問題として国内外で批判され続けていたが、くしくも急激な経済成長鈍化が、政策転換を促した格好になっている。

中国の人口動態の歪みからは政策転換が「遅過ぎた」との指摘も多いが、これまで例外的にしか認められなかった第2子が認められるようになったことは、大きな変化であることは間違いない。

金融市場でもこうした大きな政策変更は売買を仕掛ける「テーマ」としてもてはやされており、一部のマーケットに大きなボラティリティ(価格変動)をもたらしている。

例えば翌10月30日の外国為替市場では、対ドルでニュージーランド・ドルが最も大きな上昇率+0.82%を記録している。ニュージーランドの中央銀行は10月29日の政策会合で追加利上げを示唆したばかりであり、10月下旬は売り圧力の方が優勢な通貨だった。しかし、中国の「一人っ子政策」撤廃で出生数が増えれば同国最大の輸出品である乳製品の輸出が拡大するとの思惑から、ニュージーランド・ドルが買い戻されている。

そしてもう一つ大きな変化が見られたのが、「オカモト<5122>」、「相模ゴム<5194>」、「不二ラテックス<5199>」といったコンドームメーカーの株価である。10月30日の取引では、オカモトが前日比-10.1%、相模ゴムが-2.1%、不二ラテックスが-2.6%など、暴落とも言える急落相場になっている。

現実問題として、「一人っ子政策の撤廃」でコンドーム需要が大きく落ち込むのかは不透明である。ただ、これまでコンドームメーカーの株価は中国の連休を迎えるたびに「爆買い」や「インバウンド」銘柄として急騰して割高感・加熱感が浮上していたこともあり、中国発のお祭り騒ぎに水を差された格好となり、一気に投機プレミアムが剥落している。

ニージーランド・ドルにしても、コンドームメーカー株にしても明らかに思惑先行の過剰反応であり、特に株価が1日で1割も失われるのは異常だが、「一人っ子政策」撤廃の報だけで、国際金融市場には大きな混乱が生じている。景気が急激に減速しているとは言え、ポジティブ材料でもネガティブ材料でも、中国に振り回されていることが再認識される1日になっている。

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マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

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