美術史修士が解説! 3分で読める西洋美術の歴史
はじめまして! アートライターのkarinです。
趣味の美術館巡りと大学院で学んだことを活かして、美術のことをもっと楽しく分かりやすくお伝えできたらと思っております。
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ところで皆さん、好きな画家はいますか?
モネやゴッホ、ピカソ…… 何人か思い浮かぶ方もいると思います。でも、その画家がいつの時代の人で、どういう背景でどのような絵を描いたのかと聞かれると、すぐには答えられない方も多いのではないでしょうか?
そうした知識を学ぶためにも、まずは美術史のおおまかな流れを知っておきたいですよね。
そこで今回の記事では、「西洋美術史の流れを解説!」ということで、原始美術から現代アートまでの約4万年の歴史をざっくり簡単にご紹介します。
3分ほどで読めるので、これまで美術にあまり興味がなかった方も気軽に読んでみてくださいね。
西洋美術の歴史
原始美術:紀元前30000年頃〜
美術の始まりは、紀元前30000年頃までさかのぼります。この頃に作られたと思われる、生活に必要ではない彫像や壁画を「原始美術」と呼んでいます。
オーストリアで発見された裸体像《ヴィレンドルフのヴィーナス》や、フランス西南部の洞窟で発見された「ラスコー壁画」などが有名です。
メソポタミア美術:紀元前3500年頃〜
「メソポタミア美術」は、紀元前3500年頃に栄えたメソポタミア地域(現在のイラク近辺)で生まれました。
貝殻や宝石で装飾された工芸品や、世界最古の文字を生み出したシュメール人によって建設された神殿などがこれにあたります。
エジプト美術:紀元前3000年頃〜紀元前4世紀
エジプト美術はちょっと独特。壁画に見られるような独特の人体表現は約2500年もの間ほとんど変化がなく、とても保守的でした。「来世思想」という死後の世界を重んじる思想のもと制作された副葬品も有名です。死後の世界を大切にしていたからこそ、ピラミッドのような立派なお墓が作られたのですね。
ギリシア美術:紀元10世紀〜紀元前1世紀
いよいよ「西洋美術」らしくなってくるのが、紀元前700年ごろのギリシアで生まれたギリシア美術です。初期に彫られた人の彫刻はほぼ直立不動でしたが、徐々に躍動感が生まれ、まるでボディビルダーのような筋骨隆々な姿となっていきました。
ローマ美術:紀元前8世紀〜紀元前4世紀
ギリシア美術の影響を受けた「ローマ美術」で覚えておきたいのが「お風呂」文化です。カラカラ浴場などの、市民が気軽に行ける公衆浴場が建てられました。他にもパルテノン神殿や円形闘技場コロッセオなど、多くの建築物が現在も遺跡として残っています。
初期キリスト教美術:3世紀〜7世紀初頭
「キリスト教美術」は、当時まだ迫害されていたキリスト教徒たちが密かに信仰を続けるために描かれた作品や、文字が読めない人たちに聖書の物語を伝えるために描かれた絵が始まりです。キリスト教が認められてからは、多くの教会が建てられました。
ロマネスク美術:11世紀〜12世紀
キリスト教が広まるにつれて、教会や祭壇画といった宗教的なものが美術の中心となります。10世紀から12世紀にかけて続いたロマネスク美術は、石造りの分厚い壁で造られた重厚感のある背の低い教会建築が特徴です。教会内部の装飾には、フレスコ画という壁に直接絵を描く技法が用いられました。
ゴシック美術:12世紀中頃〜14世紀
ロマネスク美術とは反対に背の高い教会が多く建てられたのが、12世紀から14世紀に広まったゴシック美術です。建築技術の向上で高さのある建物も建てられるようになりました。さらにこの頃、今となっては教会に欠かせないステンドグラスも誕生します。建築が発展するのに追いつくようにして、絵画もよりリアリティーのある写実的な表現へと変化していきました。
ルネサンス美術:14世紀末〜16世紀
よく聞くルネサンスとは、イタリア語で「再生」の意味を持つ「rinascita(リナシタ)」から生まれた言葉です。これは、神の前にまず人間が中心だったギリシア・ローマ時代の古典文化を復興したいという想いが由来しています。遠近法の登場により、これまで平面的だった絵画にグッと立体感が増すようにになったのもこの頃でした。
- モナ・リザ》を描いたレオナルド・ダ・ヴィンチ
- 彫刻家としても活躍したミケランジェロ
マニエリスム:16世紀半ば〜17世紀初頭
イタリア語で「手法」を意味する「マニエラ( maniera)」由来するマニエリスムは、その名の通りルネサンスの美術を手本にしたことから始まります。一見ただのモノマネですが、マニエリスムの画家は色彩や人体の描き方など、すべての表現を極端にしたのが特徴です。首が不自然に長かったり、色のコントラストが激しかったりします。
- パルミジャニーノ
- エル・グレコ
バロック美術:17世紀
マニエリスムから強烈な色彩のコントラストを受け継いだバロック美術は、よりダイナミックで臨場感ある作品を生み出しました。キリスト教の宗派であるカトリックは、こうした大胆な作品で信者獲得を目論んだのです。
- カラヴァッジオ
- ディエゴ・ベラスケス
- ヨハネス・フェルメール
ロココ美術:18世紀
荘厳なバロックから一転して、軽やかで華のある絵が描かれたのがロココ美術です。ルイ15世の愛妾ポンパドゥール夫人が主導で発展しました。ピンクのドレスや薔薇などのガーリーなモチーフが描かれた、性愛をテーマにした作品が多く残されました。
- フランソワ・ブーシェ
- ジャン・オノレ・フラゴナール
新古典主義:18世紀後半〜19世紀初頭
華やかな様式からまた一転、再びギリシア・ローマの古典美術を復興させようという動きが新古典主義です。フランス革命下なこともあり、宮廷美術(ロココ)に反発するように広まっていきました。色彩も華やかすぎず、デッサンを重視した重厚感のある作品が目立ちます。
- ジャック=ルイ・ダヴィッド
- ドミニク・アングル
ロマン主義:19世紀初頭
重苦しい新古典主義に対抗するように登場したのが、個人の感受性を大切するロマン主義です。均整なデッサンを重視した古典主義の作品と反対に、色彩の美しさを追求しました。実際に起きた事件をドラマティックに描いた絵画や、神秘的な主題を描くことが特徴です。
- テオドール・ジェリコー
- ウジェーヌ・ドラクロワ
写実主義:19世紀中頃
これまでの歴史画や宗教画とは違い、人々の暮らしや労働する姿など、目の前の現実を描き出そうとしたのが写実主義です。クールベの「天使は見えないから描かない」という言葉は、写実主義を端的に表していると言っても良いでしょう。
- ジャン=フランソワ・ミレー
- カミーユ・コロー
印象派:19世紀後半
「国が開催する展覧会に認められてこそ一流の画家」という保守的な制度に疑問を持った画家たちが集まり、独自に展覧会を開いたことが印象派の始まりです。カフェや劇場といった都市部の風景や自然の光景を、ぼんやりとした筆使いと明るい色彩で描き出しました。
- クロード・モネ
- ピエール=オーギュスト・ルノワール
後期印象派:19世紀後半〜20世紀初頭
後期印象派は、印象派を超える新たな表現を模索した画家の呼び名です。この辺りから、画家たちの表現はより多様性に溢れたものへとなっていきます。強烈な色彩とうねるような筆致が特徴のゴッホや、小さな点で絵を描いたスーラなどが有名です。
- ヴァン・ゴッホ
- ジュルジュ・スーラ
- ポール・セザンヌ
世紀末美術:19世紀末
世紀末美術はその名前の通り、19世紀末に流行した美術です。死や老い、聖書に登場する魔性の女といった退廃的な主題が好まれました。ひとつの時代が終わってしまうという緊張感や不穏な空気感が漂う作風が特徴です。
- グスタフ・クリムト
- ギュスターヴ・モロー
近代美術:20世紀
20世紀に入ると、美術の表現はさらに多様化していきます。幾何学図形を組み合わせたような絵を描くキュビスムや無意識の世界を描き出したシュルレアリスムの他にも、画家がそれぞれ自らの表現を模索していきました。
- パブロ・ピカソ(キュビスム)
- アンリ・マティス(フォービスム)
- サルバドール・ダリ(シュルレアリスム)
現代美術:1945年(第二次世界大戦終結)〜
第二次世界大戦後、アートの拠点はヨーロッパからアメリカへと移ります。個人主義の国で、芸術はより自由で刺激的なものへと変化していきます。空間全体を作品としてプロデュースするインスタレーションや身体を用いたパフォーマンスアート、近年ではデジタルテクノロジーを活用したメディアアートなども注目されています。
- アンディ・ウォーホル
- ジャクソン・ポロック
美術史の流れを掴んでアートを楽しく学ぼう
美術史の流れはなんとなく掴んでいただけましたでしょうか?
よく見る印象派やキュビスムなどの作品が描かれるようになるまでには、たくさんの歴史の積み重ねと画家たちの試行錯誤がありました。こうした美術史の流れをふまえたうえで好きな作品を見てみると、これまでの見え方とは少し違ってきますよね。
今後は、今回ご紹介した美術様式や画家についてさらに深掘りした記事を掲載していきます。美術にまつわる面白い豆知識もたくさん取り上げる予定です。
お楽しみに!