SDGsは人と人、地域をつなぐコミュニケーションツール
2030年に向けて全世界で取り組むべき課題(環境、経済、社会)について、解決に向けた目標(17ゴール)を掲げたSDGs(国連持続可能な開発目標)。2015年のスタート以来、日本でも国や企業、NGOでの取り組みを通じて、少しずつ広がって来た。筆者もSDGsをテーマとした講演やワークショップを行っているが、SDGsはいろいろな場面で人と人、地域をつなぐコミュニケーションツールになることを実感している。SDGsは、どんな場面で「使える」のか。
SDGs×教育 これからの地球人の必須教養として
SDGsの最大の特徴は、環境、経済、社会という領域で、これまでバラバラに議論されていた課題を網羅して解決に向けたゴールを設定した点にある。さらに、前身のMGDs(ミレニアム開発目標)が途上国開発に重点を置いていたのに対して、SDGsは先進国も含めた全世界が取り組むべきゴールであるという点。これらの点は、SDGsがこれからの時代を生きるすべての人が押さえるべきこと、言ってみれば「SDGs=地球人の必須教養」であることを物語っているとも言える。
だから、教育現場でのSDGs教育が欠かせないのである。
大学生向けに実施させていただいたサマースクールでは、SDGsを知り、SDGsで謳われている目標達成にも寄与する大学改革プロジェクトを立案してもらった。学生たちは、自分の研究分野とSDGsとのつながりを実感するワークなどを通じて、自ら主体的に研究や学内活動に取り組む意欲を高めていた。また、参加者それぞれに自分にとって関心の高いゴールを選んでもらって、それらについて互いに共有し合ったりしてもらうことで、互いの共通点や考え方の多様性に触れられて、確実に相互理解が深まる。SDGsが人と人とをつなぐコミュニケーションツールたるゆえんでもある。
<参考>
SDGsで中央大学を変えよう!(SDGs.tvより)
https://sdgs.tv/sdgs/1331.html
SDGs×地域 SDGsが地域を結び付ける
SDGsでは、持続可能な地球社会の実現に向けた17の目標が掲げられているが、どのようにしてそれらの目標を達成すべきかについての方法は定められていない。裏を返せば、先進国も開発途上国も、国も地域も、そして市民も、あらゆる主体がSDGsの目標達成に向けて貢献できるということだ。
国内外のニュースを報じる全国メディアに対して、地域ニュースをきめ細かく扱うローカルメディア。そんなローカルメディアの担い手を育てるため、横浜市青葉区を拠点に地域のサステナビリティを志向する人や活動などを積極的に取り上げているウェブメディア「森ノオト」が主催する「ローカルライター講座」でも、市民ライター予備軍の受講生の皆さんにSDGsを用いて取材テーマの選定や取材対象の分析に活用してもらった。
なぜ、情報発信の担い手であるメディアが、とりわけローカルメディアがSDGsを意識すべきなのだろうか――。例えば、筆者が住む地域内のこちらの取り組み、
地域で楽しく暮らすためのインフラづくりを介護から
~小規模多機能ホーム ぐるんとびー駒寄~
(シェアする暮らしのポータルサイトより)
http://share-living.jp/post11401/
UR都市機構内の団地内に開設された全国初のこちらの小規模多機能ホームでは、高齢者が住み慣れた地域で健康的に暮らすことを支援する(目標3:健康福祉)だけでなく、地域の子どもたちの放課後の居場所になったり(目標4:教育の充実)、若者や近隣住民の雇用創出にもつながっている(目標8:働き甲斐)。最近では地域の図書館とのつながりも生まれ、ホームを起点に地域住民同士の交流が広がっているという。
メディアがSDGsを意識するようになると、特定の分野だと思われていた地域活動が、実は別の分野ともつながっているということを表現できるようになる。それによって、これまでは分野違いでつながりが薄かった地域活動間の交流が生まれるきっかけになり、地域全体の活性化に近づけるのだ。
SDGs達成に向けては、国や企業での取り組みが進むと同時に、教育現場や地域でこそSDGsが広がり、活用されることが欠かせないのではないだろうか。