Yahoo!ニュース

パルコ広告を年代別に一望して見えた“Z世代戦略”とは?【東京都渋谷区】

Luna Subitowriter editor(東京都渋谷区)

渋谷PARCO主催 “「パルコを広告する」 1969 - 2023 PARCO広告展”に滑り込みで行ってきました。1969年に渋谷PARCOが公園通りに開業してから50余年。今展は半世紀に渡って時代のトップクリエイターたちが関わってきたPARCO広告の数々を年代別に俯瞰できる貴重な展覧会です。

会場は、1970年代、1980年代、1990年代、2000年代以降の4つの年代に分けられた構成。各年代ごとに2人のゲストキュレーターが展示広告を選定しており、「予言」(70年代)、「広告」(80年代)、「渋谷」(90年代)、「アート」(2000年代以降)といったキーワードからその時代を鋭く紐解いています。

特に興味深かったのは、80年代のパルコ広告全盛期。ハドソン川を必死で泳ぐ内田裕也とか、ミイラとして発掘される未来の忌野清志郎とか、ゲロッパのジェームズ・ブラウンとか…必ずしも当時の王道ではない癖つよなキャラクターをしれっと全面に打ち出した、商業広告とは思えない大胆不敵なシュールさ。リアルタイムで見た時は「何じゃこれ!!」と驚嘆し、かつ膝を打ちましたが、今あらためて俯瞰してみて 深い深い感慨を覚えます。クリエイターが、本気で遊べた贅沢な時代でした。

今や JBも内田裕也も清志郎も鬼籍に入っているというのがなんとも…。
今や JBも内田裕也も清志郎も鬼籍に入っているというのがなんとも…。

キュレーターのひとり椹木野衣さんいわく、「80年代パルコの広告は解けない謎を仕掛けて、それが時代が経っても解けずに運動し続けて今日に至っている」と。

会場図録より
会場図録より

たしかに、80年代のPARCO広告をあらためて見ると、当時はよくわからないなりにオモシロかった「謎」のDNAは、今なお魅力的に謎めいています。
わかりやすさを消費することが主流になっている今の時代とは一線を画する80年代広告特有の謎めいた文学性やアート性。。そこに当時の若者たちは猛烈にわくわくしたものです。そうした時代を象徴する広告が、30年経った今もオワコン化せず、謎をはらんだままインパクトを与えるというワンダー。

ゲストキュレーターの社会学者 上野千鶴子さんも「1970‐1980年代というセゾンとパルコが領導した広告の黄金時代は世界史的に見ても空前絶後だと思います」と。

かわって、90年代パルコ広告キュレーターのひとりは渋谷系を象徴する野宮真貴さん。

信藤三雄さんがAD、野宮さんがモデルを務めたガーリーな傑作ポスター(右)や、ソフィア・コッポラの世界観が投影された広告(左)は、まさに90年代の“気分”
信藤三雄さんがAD、野宮さんがモデルを務めたガーリーな傑作ポスター(右)や、ソフィア・コッポラの世界観が投影された広告(左)は、まさに90年代の“気分”

ピチカートファイブ登場の、あえて昭和テイストな2001年グランバザール広告も懐かしくて新しい。小西さん!!

会場の奥で上映されていた過去のCMの数々も、アートなオムニバス映画のようで見入ってしまいました。

今はZ世代マーケティングが大流行ですが
若者の尻馬にちゃっかり乗ろうとしたり
トレンドにヨタヨタ追従するより
昭和・平成・令和を飄々と
駆け抜けてきたパルコ広告のように
若者が本能的にきゅんきゅんしたり
わくわくしてしまう謎のワンダーを
発信し続けることにこそ
未来があるのではないかしらんと
思わずにはいられませんでした。

流行りの尻尾をあたふた追いかけるより
悠々と逃げて追いかけられよう。
わかりやすく消費されて飽きられるより
永遠の謎としてオモシロがられよう。
ーー長年のパルコファンとして、
今展をみて そんな気概を感じました。

今展は、広告史としてもカルチャー史としても 非常におもしろい企画でした。会場後の図録販売は未定のようですが、今後もぜひPARCOのアーカイブとして過去のポスターやCMがWEBでも常時閲覧できるといいなあと思います。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「パルコを広告する」 1969 - 2023 PARCO広告展
会場 4F PARCO MUSEUM TOKYO
開催 2023.11.17 - 2023.12.4
入場料 無料

writer editor(東京都渋谷区)

奥渋在住20余年。旅、アート、インテリア、ウエルネス、映画、猫など多様なメディアに携わる文筆家。

Luna Subitoの最近の記事