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G・ノーマンはまるでピエロ、究極目標はリブゴルフではなく「プロジェクト・ウエッジ」という衝撃の新事実

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
(写真:ロイター/アフロ)

 今年6月にサウジアラビアの政府系ファンド「パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)」の支援を受けて創設されたリブゴルフは「グレッグ・ノーマンがCEOを務め、PGAツアーとの対立を激化させている」とは、今やゴルフ界の共通の認識になっている。

 しかし、ノーマンは単なる見せかけのCEOに過ぎず、「リブゴルフ」の名前や存在も、背後に控えるPIFにとっては暫定的な産物あるいは通過点に過ぎず、PIFの究極の目標は「プロジェクト・ウエッジ(Project Wedge)」なるものの実現・成功であるという新事実を、PGAツアーがつかみ、米スポーツ・イラストレイテッド誌が報じた。

 リブゴルフとPGAツアーの対立は、すでに法廷闘争へと発展しつつあり、第1回の裁判は米カリフォルニア州の連邦裁判所で2024年1月に行なわれる予定だが、それに先立ち、同裁判所はリブゴルフの経済的母体であるPIFに、日々の業務内容や実態を詳細に示す書類の提出を求めた。

 当初、PIFは「日々の実務を行なっているのはノーマンCEOが率いるリブゴルフであって、PIFは実務には関わっていないから、そんな書類は提出のしようがない」と語っていた。

 だが、現実はその真逆だったようで、結局、PIFは求められた書類を同裁判所へ提出。その中に記された内容の一部をPGAツアーがキャッチしたところ、リブゴルフの実務を行なっているのは、ノーマンではなく、PIFの敏腕ディレクターであるという驚きの事実が判明した。

 そして、初めて明るみになった「プロジェクト・ウエッジ」の文字は、米ゴルフ界に衝撃を走らせている。

 事実上のCEO役を務めているのは、PIFのマネージング・ディレクター、イェッサー・オズマン・アル・ルマヤン氏だ。

 PIFからリブゴルフ資金として投入された総額20億ドル(約2680億円)を活用しつつ、PGAツアーやDPワールドツアーの選手たちを勧誘し、リブゴルフの開催コースを確保し、新ツアーのシステムを構築し、来年に向けて拡大プランを練って推進しているのも、すべてノーマンではなくアル・ルマヤン氏だという。

 米ゴルフ界をさらに驚かせたのは、PIFがニューヨークに本拠を置くグローバル展開のコンサルティング会社、テネオ・ストラテジーと契約を交わし、同社は今年1月からすでにPIFの要望を受けて活動を開始しているという新事実だ。

 テネオ・ストラテジーは、米国の議員や大物政治家とのつながりが強く、各方面に大きな影響をもたらすパワフルなコンサルティング会社として知られている。

 果たして、PIFは、そのテネオ・ストラテジーと手を組み、最終的に何を目指しているのだろうか。

 PGAツアーはPIFとテネオ・ストラテジーが2022年1月に交わした契約書のコピーも入手したとのこと。そこには、「リブゴルフ」への言及はなく、代わりに記されていたのは「プロジェクト・ウエッジ」の文字だったそうだ。

 そこから推測されることは、PIFが描いている壮大な計画のゴールにあるのは「プロジェクト・ウエッジ」なるもので、「リブゴルフ」ではないということ。

 となれば、リブゴルフは最終ゴールにたどり着くための最初の一歩として創設された「足がかり」「踏み台」のようなもので、ノーマンはその踏み台に乗せられ、CEOの肩書きを被せられ、踊らされているピエロのような存在ということになる。

 今回、裁判所に提出され、明るみになった書類には、ノーマンの本当の役割やリブゴルフの今後などへの言及は無いそうだが、それらの書類を見る限り、ノーマンが見せかけのCEOであり、PIFの究極のゴールはリブゴルフではなく「プロジェクト・ウエッジ」の成功であることは明らかだ

 まるで映画かドラマ、フィクションのような話だが、これは現在進行中のゴルフ界の現実の話だ。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、長崎放送などでネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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