国会質問通告の早期化で与野党合意。官僚の長時間労働是正に向けて、今回こそ実現するか?
明日1月18日に招集される通常国会。
それに先立ち、1月15日、日本経済新聞の報道によると、「早期の質問通告で与野党一致」したという。
これまでたびたび国家公務員の劣悪な労働環境が取り上げられながらも、オンラインへの未対応や質問通告の遅れなどによりなかなか改善が進んでいなかったが、今回改めて質問早期化することで与野党合意に至り、大きく労働環境が改善する可能性が見えてきた。
形骸化していた質問通告に関するルール
国家公務員の長時間労働の大きな原因とされる「国会対応」で大きいのは、国会議員からの質問通告待ちだ。
国会会期中、各省庁の職員は議員の質問通告が届くまで待機し、議員から質問が届き次第、担当の職員が答弁書作成に取り掛かる。
委員会の数日前までに質問が届けば、あまり残業せずに業務を終わらせることができるかもしれないが、内閣人事局が2016年12月に発表した調査結果によると、全ての議員からの質問通告が出そろうのは全省平均で前日の20時56分。通告を受けた質問について、担当課・局の割り振りが確定するのが平均22時36分。その後、答弁を作成する。当然ながら、退庁する頃に日付が変わっていることも珍しくない。
こうした現状に対し、現場の官僚からは「質問通告を前日の正午や2日前までにしてほしい」(30代の経済官庁勤務男性)など、質問通告の早期化を求める声がたびたび挙がっていたが、これまで大きな改善は行われてこなかった。
そもそも、この質問通告に関するルールが存在しないわけではない。1999年9月に、原則として「前々日の正午までに質問の趣旨などを通告する」ことが、与野党の国対委員長間で申し合わせされている。
しかし上述の通り、現状は形骸化しており、実際の通告は質問前日の夕方や夜になることが多く、国家公務員の長時間労働の温床になっている。
この背景には、(質問する)政治家個々の意識以上に、審議日程自体が決まるのが遅いという問題がある。現状「質問通告2日前ルール」があるものの、委員会の開催が2日前の午後以降に決まることも珍しくなく、質問通告の早期化、「日程闘争」からの脱却のためには、審議日程の決め方を改める必要がある。
日程闘争とは:国会の審議日程をめぐる与野党の駆け引きで、日本は会期中に議決に至らなかった案件は廃案となるため、可決を急ぐ与党は審議を早めて採決に持ち込もうとし、野党は引き延ばして廃案に追い込もうとする。
その意味では、今回の「合意」に実効性を持たせるためには、審議日程も余裕を持って決める必要があり、そこまで踏み込めるかどうかが注目される。
全ての残業時間に対して、残業代を支払う方向で検討
一方、これまで国家公務員は長時間労働を強いられながらも、正確な労働時間の把握もされず、残業代も支払われていなかった。そうしたサービス残業の実態は、河野太郎議員が行政規制改革相になったことで、内閣府人事局によって実態調査が行われ、2020年12月25日に公表。
さらに、今後全ての残業時間に対して、残業代を支払う方向で財務省と調整していく旨を語った。
他にも、与党事前審査制によって国会審議が実質的に形骸化している現状など、国会を改革すべき項目は多く(下記、筆者が代表理事を務める日本若者協議会の提言内容など)、今後も注視していきたい。
日本若者協議会
「国会改革、国家公務員の長時間労働改善に対する申し入れ」(令和元年11月20日)
1.質問通告に関するルールの見直し・徹底
・質問通告は2営業日前までに実施すること(期限を過ぎた場合は後日文書による回答とする)
・質問通告の内容・提出時間を事前に公開すること
・質問要旨をFAXではなく、メールなどオンラインで提出すること
・質問通告のフォーマットを変更すること(質問の「要求大臣」だけではなく、「質問内容」も含める)
・質問詳細の問い合わせ(質問取りレク)不可を禁止にすること
2.審議日程の決定方法の見直し
・国会開会直前もしくは開会後速やかに、(議院運営委員会もしくは各委員長により)本会議・委員会の審議日程、採決の日取りまであらかじめ決めておくこと(少なくとも審議日の1週間前には公表)
・通年国会の導入(会期不継続の原則の見直し)
3.質問主意書のルールの見直し
・議員からの質問主意書提出日から内閣への転送日の間を2日程度延長すること
・質問主意書への回答者を、「内閣」ではなく、「内閣総理大臣その他の国務大臣」に変更すること
・同じ質問内容の質問主意書は禁止とする(政府が同質問だと判断した場合は閣議決定不要とする(上記「内閣総理大臣その他の国務大臣に変更」が実現できない場合)、答弁が作成されていない同様の質問は控える、等)
4.国会審議の活性化に向けた改善策
・逐条審査の実施
・法案修正の活性化(与党の事前審査制を一部改め、法案審議を国民に開かれた国会中心とする、内閣が議案を修正できるように国会法59条の改正)
・予備的調査の活用・拡充(「野党合同ヒアリング」ではなく、国会の予備的調査の活用を原則とする)
・少数者調査権の導入(与党=多数会派が反対しても、参考人招致や特別委員会の設置を可能にする)
・党議拘束の一部緩和
・国会議員間の自由討議の活性化(法案審議がない時は自由討議とする)
・党首討論の定例化・夜間開催
・国会会議録に加え、委員会配布資料の公開や、委員会審査等に関する報告書の作成
5.その他
・明らかに効率の悪い、国会答弁資料の印刷・資料組み・資料持込みを不要にするために、本会議・委員会でのパソコンやタブレット等の使用(ペーパーレス化)の義務化を求める
・国会対応に要する移動等の負担軽減のため、オンライン議員レクの積極的活用を求める
・国家公務員も労働基準法の適用範囲とする