賃貸住宅の空き家率がもっとも高いのは大阪府
賃貸物件の空き家率、全国平均では7.08%
昨今騒がれている「空き家」増加のうち多くは税制上の問題などで半ば放棄されている、廃棄的住宅によるもの。しかし賃貸住宅の空き家が存在しないわけではない。そこで都道府県別の賃貸住宅の空き家の現状を、総務省統計局が今年7月末に発表した、2013年時点における住宅・土地統計調査の速報集計結果を基に確認していくことにする。
次に示すのは、都道府県別及び3大都市圏区分における、賃貸用住宅の空き家率状況。これは全住宅(居住者のあるなしを問わず)のうち賃貸用住宅の空き家が何%あるかを示している。例えば北海道は8.17%と示されているが、これは北海道にある「居住用住宅」全体のうち、8.17%が賃貸用住宅としての空き家であることを意味する。周辺環境や面積などの考慮は無く、単純な戸数による算出であり、同じ数字が出ていても実情はケースバイケース。また戸数そのものの都道府県別比較でも無いことに注意。
山梨や大阪のように突き抜けている地域もあるが、大よそ近隣地域は似たような空き家率を示しており、賃貸住宅の需要が地域単位で上下しているようすがうかがえる。低めの地域は宮城県や山形県などの東北、九州、鳥取などの中国地方。他方、関東近辺や四国などでは賃貸住宅の空き家率がやや高めに見える。
これを都道府県別に、高率・低率それぞれの上位10位について、序列を基にグラフ化したのが次の図。最上位は大阪府の9.13%、次いで山梨県の8.86%。
大阪府の賃貸住宅における空き家率の高さは少々意外な気がする。他の地域は近郊都市圏が多いが、大阪府は大都市圏そのままズバリに違いない。他の不動産系調査でも大阪府の賃貸住宅事情がやや悪化している話はあったが、その動向がここにも表れている。もっとも東京都も8.14%と高めに出ているので、大都市圏でも賃貸住宅にだぶつきが出ているのかもしれない(もちろん空き家の住宅の条件の良し悪しは別。古い賃貸住宅に空きが増えているのだろう)。
一方福島県や秋田県、島根県などでは賃貸住宅の空き家率は低い。元々賃貸住宅が少なめなのも一因だが、仮にこれらの都道府県で新たに賃貸住宅を探す必要がある際には、良い物件を探すのに一苦労するかもしれない。
前回調査からの変化
今調査は5年単位で行われているため、前回調査分は2008年となる。震災をはさんでいることになり、大きな状況の変化が予想できる。そこで前回調査時との差を算出した結果が次のグラフ。「全住宅比の値における変化」ではなく、「賃貸用住宅の空き家戸数そのものの変化」であることに注意。
もっとも下げ率が大きいのは宮城県のマイナス45.06%。次いで福島県の40.00%。それ以外にも震災で大きな影響を受けた東北地方で空き家戸数の大幅な減退が確認できる。一方で東京近辺、愛知近辺などでは周辺地域がまとめて空き家戸数が増加している。やはり1都道府県ではなく、地域的に賃貸用の空き家にはまとまった変化が生じている。
空き家戸数が減っているのは、単純には賃貸住宅の居住率が上昇していることを意味する。先の震災の被災地では賃貸用住宅そのもの損壊の事例もあるが、持ち家を失い賃貸住宅に移り住む事例も多数報告されていることから(住宅・土地統計調査でも特記項目が設けられている)、需要が大きくかさ上げされ、結果として空き家率が減少したものと考えられよう。
■関連記事: