ドイツ政府提供の対空戦車「ゲパルト」でロシア軍のドローン迎撃「ウクライナの防空は家族を守ること」
2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。2022年10月に入ってからロシア軍はミサイルとイラン政府が提供した標的に向かって突っ込んでいき爆発する、いわゆる神風ドローンの「シャハド136(Shahed136)」、「シャハド131(Shahed131)」で首都キーウをはじめとしたウクライナのあらゆる都市を攻撃しており、現在でもイラン製軍事ドローンでの奇襲が続いている。
ウクライナ軍はドイツ政府が提供した対空戦車「ゲパルト」でもイラン製軍事ドローンを迎撃している。「ゲパルト」は対空戦車なので攻撃ドローンだけでなくミサイルも迎撃している。
2023年6月にはドイツ政府が提供した対空戦車「ゲパルト」でロシア軍のドローンやミサイルを迎撃している部隊をカナダのメディアGlobal Newsが報じていた。ゲパルトを操縦している2人の兵士が登場しているが、ロシア軍が侵攻してくるまでは1人はエンジニアで、1人はバーテンダーだった。
2023年5月には21日間もロシア軍によるドローンやミサイルでの奇襲があり、ゲパルトのような対空戦車で防衛していた。元エンジニアの操縦士は「ゲパルトを操縦してウクライナの防空をしていることは正しいことをしているという誇りを感じます」と語っている。元バーテンダーだった操縦士は「ウクライナの領土と空を守ることは私たちの家族を守るのと同じことです」と語っていた。
ドイツ国防省は2022年4月にウクライナ軍にドイツのクラウス・マッファイ・ヴェクマン社が製造している対空戦車「ゲパルト」50台を提供することを発表した。国防大臣のクリスティーネ・ランブレヒト氏は「今、まさにウクライナ軍が上空からの防衛に必要としている兵器です」とコメントしていた。ドイツ政府が発表した6月の武器供与リストにもゲパルトが含まれていた。そして2022年7月にドイツから対空戦車「ゲパルト」3台が到着すると、ウクライナのオレクシー・レズニコウ国防大臣もSNSで「ウクライナの上空の防衛が強化されます」とドイツに感謝を伝えていた。ドイツのショルツ首相は2022年11月にウクライナに防空システムを引き続き提供して支援していくことを明らかにしていた。ショルツ首相は2022年8月にはドイツ北部のオルデンブルグ近郊で「ゲパルト」の操縦訓練を受けるウクライナ兵を視察していた。
▼ドイツ政府が提供した対空戦車「ゲパルト」でロシア軍のドローンやミサイルを迎撃する部隊を紹介するカナダのメディアGlobal News
上空からの攻撃に対する防衛は非常に重要であり、ミサイルだけでなく攻撃ドローンへの対策も安全保障の観点からも急務である。上空のドローンを機能停止したり、上空で爆破するためのシステムや兵器もウクライナ軍には提供されている。上空のドローンを迎撃するのは、電波を妨害(ジャミング)してドローンの機能を停止させるいわゆる"ソフトキル(soft kill)"と、対空機関砲のように軍人が持って上空のドローンを爆発させる、いわゆる"ハードキル(hard kill)"がある。対空戦車のゲパルトは明らかにハードキルである。
民生品の監視・偵察ドローンは攻撃してこないので、電磁波などのソフトキルや軍人が対空機関砲などで撃墜することも容易だ。だが、大量のドローンがかなりのスピードで突っ込んできて爆発するような攻撃ドローンは人間の軍人が迎撃するのは非常に危険であるので、対空戦車の方が適している。
一方で、ロシア軍のイラン製軍事ドローンは大量に毎日ウクライナのあらゆる場所に攻撃をしかけてくるが、対空戦車ゲパルトの数は限られている。全てのイラン製軍事ドローンやミサイルの迎撃には対応できない。そのため、危険ではあるが日々の大量のイラン製軍事ドローンの攻撃に対しては、ウクライナ兵がドローンが飛来しているところまで車で走っていったり、ビルの屋上などで構えて機関銃や地対空ミサイルで迎撃してウクライナ国土を防衛している。攻撃ドローンは大量に無人でいっきに攻撃でき破壊力も強いため攻撃側が圧倒的に優位である。
また地対空ミサイルシステムや防空ミサイルだけでなく対空戦車のような大型システムで監視ドローンを攻撃して爆発させるのはコストもかかるし、大げさかと思うかもしれない。しかし監視ドローンこそ検知したらすぐに破壊しておく必要がある。監視ドローンで敵を検知したらすぐに敵陣をめがけてミサイルを大量に撃ち込んでくる。監視ドローンとミサイルはセットで、上空の監視ドローンは敵からの襲撃の兆候である。また部品を回収されて再利用されないためにも徹底的に破壊することができる"ハードキル"の方が効果的である。そして攻撃ドローンだけでなく、安価な監視ドローンも徹底的に破壊しておいた方がトータルでのコストパフォーマンスは高い。