人生で一度は泊まってみたい 船でしか行けない秘湯の一軒宿「大牧温泉」徹底レポート
温泉ジャーナリストの植竹深雪です。
今回は巷で人気の船でしか行くことができないという、秘境で秘湯の温泉旅館を徹底的にご紹介します。
船でしか行けない大牧温泉とは?
富山県南砺市にある大牧温泉。
ここは庄川峡の切り立つ崖に張り付くかのように建ち、向かうまでの交通手段は遊覧船のみという、まさに秘境の温泉旅館です。
昭和5年小牧ダムの完成と同時に大牧温泉が建てられ、船でしか行くことができない温泉宿としてその希少な存在と湯の良さが評判を呼びました。今ではメディアでも度々紹介されるようになり、全国的にも人気がある温泉旅館となっています。
今年2024年の温泉総選挙でも秘湯名湯部門第2位を受賞しました。
わざわざ船に乗らないと行けない温泉とは、一体どんなところなのだろう?
人気の秘密とその魅力を紐解き存分に堪能してみたいと思った私は、大牧温泉へと向かいました。
東京から向かった私は北陸新幹線新高岡駅で下車。
まずは乗船所がある”小牧港”を目指します。
小牧港へ到着すると船を目の前にし、「いよいよここから旅が始まるんだなぁ」という気持ちに。
庄川峡遊覧船に乗り いざ出発
大牧温泉観光旅館へのアクセスは「庄川峡遊覧船」のみ。
庄川峡遊覧船は1日3~4本の運行です。
チケットを購入し、定刻になったので乗船。
小牧港から大牧温泉に向けて、約30分の船旅がスタートしました。
動き出すと窓から、そして船上から季節の景色と峡谷美を楽しむことができます。
屋外デッキに出てダイナミックな景色を心地よい風に当たりながらも堪能。
同じように見えても全然違う自然の景色。感動の連続です。
水面のエメラルドグリーンに見惚れつつ。
次々と視界に飛び込んでくる季節の景色が美しくてつい写真を何枚も撮りまくっていると、気がつけば30分の時間があっという間。
峡谷の岸壁にせり出すように一軒宿の大牧温泉の姿が見えてきました。
ついに到着です。
船着場から階段を上がるとすぐに大牧温泉があります。
玄関前に立つと、ついに秘境の温泉に到着したのだと……
なんだかとても嬉しい気持ちに包まれました。
ここは歴史ある温泉旅館ですが、平成期に大幅リニューアルを重ねているので、館内もとてもきれいで落ち着いた空間。
上質な雰囲気が漂っていて館内も客室も……本当にため息が出る程、美観です。
囲炉裏を備えた民芸調のロビーからも、そして客室からも川峡の絶景が目の前に広がる造りで眼福。
峡谷美が楽しめる客室
大牧温泉の部屋は全部で28室。
どのお部屋からも、峡谷の爽やかな絶景を楽しむことができる造りとなっているのだとか。山側、川側、そしてお部屋に露天風呂がついた特別室もあります。
お茶菓子は、地元の銘菓「かなや」謹製のせんべい。
味香りというたまごせんべいにすり蜜を刷毛で塗り、青のりとごまをまぶしているというもので絶品でした。
温泉入浴前は緑茶を忘れずに。というのも一説によると、温泉入浴前のカテキン摂取は日常の時と比べて7倍もカテキン効果が期待できるのだとか……
すぐにでも温泉に行きたいところだけど、湯あたり防止のためにも、ぜひお茶をいただいてから入浴したいものです。
大牧温泉の内湯と露天風呂
温泉は男女別で女性は大浴場と中浴場、露天風呂の3か所。男性は大浴場と露天風呂、テラス風呂の3か所。温泉の湯は、現在も湖底から湧く源泉を引き込み使用しています。湯量は毎分360リットルとかなり豊富。
浴槽はそれぞれ雰囲気や湯温が少しずつ異なるので、温泉を入り比べながら自分好みの温泉を探しつつ、よき湯を存分に楽しむことができます。
季節の絶景露天風呂
なかでも野趣溢れる露天風呂は、山と川の大自然に囲まれ、眺望抜群で大人気。
四季折々の景色を見渡しながらの湯浴みは、まさに至福のひととき。
内湯と比べると外気に触れていることもあり、41度ほどと適温。
冬の雪見露天風呂も幻想的で、とても人気があります。
露天風呂はさらに奥に進むと岩組みのお風呂があります。
原生林に包まれた、開放的な岩組みの露天風呂。
なんだか隠し風呂みたいでテンションが上がる……!
目の前に広がる庄川峡の絶景をひとりじめ。
適温でまったりと、野趣溢れるワイルドな露天風呂を楽しむことができました。
泉質は、ナトリウム・カルシウムー塩化物・硫酸塩泉。
そして硫化水素臭も漂う湯は、温泉でしっとり保湿が叶う美肌美人の温泉です。
大牧温泉のお料理
大牧温泉旅館で供される食事は、富山の味覚を楽しむことができるものばかり並びます。富山といえばのブリ。アブラののりも最高。
なかでも宿の名物でもあるホタルイカの沖漬けは特に絶品で、深く印象に残りました。大きなホタルイカは地元庄川の柚子を使用して漬けているというこだわり。
いい塩梅に漬けられたホタルイカと、控えめながらもしっかりと存在感がある柚子のコラボレーションが絶妙で、富山の地酒が進みました。
スマホもWi-Fiもほとんど繋がらない大牧温泉。
湯を守り続けているご主人に、どういう過ごし方が理想的なのかお話を伺うと、
「山の中にある静かな佇まいの一軒宿なので、日常の喧騒を離れ秘境ならではの非日常を感じていただきならの滞在がおすすめです。温泉で日頃の疲れを癒し、渓谷の景色が見えるお部屋でご夕食までくつろいで。日本海の氷見港から揚がった海の幸と、季節の山の幸を使った会席料理を楽しんで。少し休んでからまた温泉へと温泉三昧と気ままな過ごし方で日常の疲れやストレスが緩和されたらいいなと思っています」と仰っていました。
ひたすら温泉と峡谷美を楽しむ温泉旅。
デジタルデトックスもたまにはいいかもしれませんね。
ここは山と川以外何もないけど、何でも便利に揃う今の時代において、何もない、ただ自然の景色と温泉を味わうことができるという場所も、豊富に物が溢れる現代を生きる私たちにとって、とても貴重な場所かもしれません。
自然ならでは絶景と温泉をとことん味わうことができるという贅沢な時間を、あますことなく味わい尽くすことができた温泉宿でした。
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