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王者タイガー・ウッズがリブゴルフを激しく批判。「若い選手が一度もメジャーを経験できない可能性もある」

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
(写真:ロイター/アフロ)

 150周年を迎えている今年の全英オープン開幕を控え、会見に臨んだタイガー・ウッズが、グレッグ・ノーマン率いる新ツアー「リブゴルフ」に対するストレートで激しい批判を口にした。

 ウッズは、かつてノーマンが1990年代半ばに新ツアーを立ち上げようと試みたものの、当時のPGAツアーによって阻止されたことを受け、「グレッグが90年代に実現できなかったことを今やろうとしているということはわかっている。しかし、彼がやろうとしていることは、ゴルフというゲームにとって正しいことではない」と批判した。

 そして、ゴルフの聖地セント・アンドリュースで開幕しようとしている今年の全英オープンのように「歴史ある場所で、トロフィーを獲得するために必死にプレーする。それこそが、ゴルフの戦いのあるべき姿だ」と、きっぱり言い切った。

 リブゴルフの試合形式は予選落ちのない3日間54ホール。試合に出場する48名は最下位でも12万ドル(約1640万円)が手に入る。すでにフィル・ミケルソンやダスティン・ジョンソンらはリブゴルフに4年間出場する契約を交わし、高額の契約料を受け取っており、来年は他選手もリブゴルフとの契約制となって事前に契約料を手にすると言われている。

 そんなリブゴルフの「マネー環境」に対して、ウッズは「ギャランティされたお金を受け取ってしまったら、何のために練習しようと思うのか。インセンティブは失われてしまうだろう」と嘆いた。

 現在、リブゴルフは世界ランキングの対象ツアーとして認可されるよう「申請している」状況だが、どんな結論に至るかは未定だ。世界ランキングのポイントを稼ぐことができなければ、メジャー4大会への出場は難しくなる。

 さらに言えば、今年は全米オープンを主催するUSGAも、全英オープンを主催するR&Aも、リブゴルフを選んだ選手たちを従来通りの規定に従って受け入れたが、それらは暫定的な処置と言える。

 ウッズは「今後、メジャー大会の主催者が出場資格の規定を変更したら、才能ある若いゴルファーがリブゴルフに出ることで、生涯一度もメジャー大会の舞台を踏めなくなる可能性さえある」と指摘。

 メジャー大会ではなくても、「4日間72ホールを戦うことや年間を通してツアーの日程をこなしていく経験をするチャンスが一度も得られないことになる可能性もある。それはゴルフにとって、正しいことではない」と嘆きながら批判した。

「長い目で眺めたとき、リブゴルフが良い方向に向いているとは僕は思わない」

 王者ウッズのストレートな意見と意思表示が、現在のゴルフ界の混沌とした状態に、どんな作用をもたらすかが注目される。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、ラジオ福島、熊本放送でネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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