小池里奈が5年ぶりに連ドラにレギュラー出演。伝説の美少女が休業と海外留学を経て掴んだものとは?
10歳で実写ドラマ『美少女戦士セーラームーン』でデビューし、美少女アイドルとして活躍した小池里奈。20代に入ってから、海外留学も含む2年の休業を経て復帰し、現在はドラマ『ナイルパーチの女子会』(BSテレ東)で5年ぶりにレギュラー出演中だ。「ノンストップでやってきてフラットに考える時間が必要だった」と語る彼女が、清楚なイメージを覆す役に挑んでいる。
ここまで人に感情をぶつける役は初めてでした
柚木麻子の小説をドラマ化した『ナイルパーチの女子会』。大手商社のキャリアウーマン・志村栄利子(水川あさみ)は、女友だちがいないことが唯一のコンプレックス。心酔するSNS日記を書く主婦インフルエンサー・丸尾翔子(山田真歩)と偶然知り合い、急速に親しくなるが……。小池は栄利子の会社の派遣社員・高杉真織を演じている。
――『ナイルパーチの女子会』は5年ぶりの連ドラレギュラーで、だいぶエネルギーは使いました?
小池 そうですね。初めてに近いくらいエネルギーを放出する役で(笑)、大変だったけど楽しかったです。
――演じている高杉真織は序盤ではゆるふわ女子という感じですが、裏の顔があるようで。
小池 後半に行くにつれて、どんどんエスカレートしていく感じです(笑)。私は自分の感情を人にぶつけるようなことはあまりないんですけど、真織はありました。
――小池さんのイメージを覆すようなシーンも出てきますね。
小池 動きが結構ある撮影で、打ち合わせや段取りをしっかりしながら、ひとつずつ撮っていきました。相手役の水川あさみさんが「どんどん来てください」と言ってくださったので、やりやすかったです。
――なかなか殻が破れないようなことはなく?
小池 それはなかったです。現場の空気感で自然にできました。水川さんに吸い込まれるか、私が吸い込むか、目力合戦みたいな感じになりました。
――頭で考えるというより、役に入り切っていたと。
小池 むしろ最初のほうが、ブリブリした感じを意識しました(笑)。ちょっと首をかしげたり、小さな仕草やしゃべり方を普段と変えていきました。
他人に見せられない部分は私にもあるので
――ドラマ自体、“女同士の友情を描いた”と謳いつつ、怖いほど刺々しいです。
小池 単純に面白いお話だと思いました。人間の内面がここまで生々しく描かれた脚本を、私は読んだことがなくて。登場人物がみんな、表に出している部分と内に秘めたものを持っていて、私も自分の中に秘めたものを大放出したいとすごく思いました。
――朗らかな印象の小池さんにも、裏の顔があると(笑)?
小池 真織みたいな感じではないですけど(笑)、人間誰しも他人に見せられない部分はたぶんあるし、私にもあると思います。そこを掘り下げられたらと。撮影に入る前に自分自身について、何を秘めているのか考えたりもしました。普段外には出さないけど思っていることを、感情として吐き出せるようにしたくて。
――真織の言っていることで、わかる部分もありますか?
小池 結婚観とかは違いますけど、私は真織をカッコイイと思っています。自分の意見がはっきりあって、人生設計もしっかりしていて、それを貫く生き方ができるのは、ある意味、本当にすごいです。
――女友だちに関しては、小池さんはどう考えていますか?
小池 真織ほどワイワイする感じではないかもしれません。狭く深く、というタイプです。
現場で「邪魔だ!」と言われたのを覚えてます(笑)
小池は小学3年生の大晦日に新宿の伊勢丹の喫茶店でスカウトされた。いつも行く店が混んでいて、たまたま他の店に入ったところだったという。ドラマ『美少女戦士セーラームーン』のセーラールナ役でデビュー。『喰いタン』、『14才の母』、『仮面ライダーキバ』などに出演する一方、グラビアでも美少女ぶりが際立ち、多数の写真集やDVDも発売した。
――小池さんの活動を振り返っていただくと、小3でスカウトされた時点で、自分でも芸能界に興味はあったんですか?
小池 全然なかったです。私、その頃から高3まで、ずっと地元の栃木に住んでいたので、スカウトなんてなかったし、芸能界は身近でなくて。でも当時、モーニング娘。さんが好きで、ハロプロ(ハロー!プロジェクト)さんのオーディションは受けました。
――小学生だと、ハロプロキッズのオーディションですかね。
小池 そうかな。私は落ちましたけど、Berryz工房さんが結成されました。
――デビューしてからは女優やグラビアで活躍して、小・中学生時代は楽しかったですか?
小池 すごく楽しかったです。自分の知らない世界だったので、新鮮でした。
――その頃で、特に思い出深い作品というと?
小池 やっぱりデビューの『セーラームーン』です。演技レッスンも受けたことがなかったので、全部現場で教えてもらいました。スタッフさんがあんなにたくさんいることにも驚きましたし、撮影する量が多かったから、すごい勢いで撮っていたんですね。現場で「邪魔だー!」とか「どけー!」とよく言われたのも覚えています(笑)。
――ジュニアアイドルとしてトップクラスの人気になったのは、自分ではどの辺で感じました?
小池 そう思ったことはありませんけど、忙しかったのは『キバ』の頃ですね。中学3年生くらいが、すごく目まぐるしかったかもしれません。
――普通の学校生活を送りたいとは思いませんでした?
小池 思ってました。栃木から1時間以上かけて東京まで通っていたので、学校に行って、お仕事に行って……というだけの生活で、友だちと遊ぶ時間がなかったんです。あと、学校行事に出たいとか、そういうことはすごく思いましたね。
普通の生活をしたことがないのが不安で
――2016年から2年間の休業に入りますが、当時はどんな心境だったんですか?
小池 小さい頃から、留学して海外で生活してみたいと思っていたんです。大学を卒業して、ひと区切りでもあったし、今しか行けないんじゃないかと。まず3ヵ月、ニュージーランドで語学学校に通ったら、働いてみたくなって。それで、ワーキングホリデーでオーストラリアに行きました。
――仕事自体に行き詰まりを感じていたわけではなかったんですね。
小池 でも、「このままでいいんだろうか?」というのは、ずっと思ってました。小さい頃から芸能界のお仕事しか知らなくて、普通の生活をしたことがない不安が大きかったんです。だから日本でもアルバイトをしたり、その2年間で、経験がなかったことをやった感じでした。
――ニュージーランドとオーストラリアのどこにいたんですか?
小池 オークランドとメルボルンです。オーストラリアには半年くらいいて、ブリスベンにもちょっと住みました。
――英語は最初からそれなりに話せて?
小池 ずっと習っていたんですけど、ニュージーランドに行ったときは全然しゃべれませんでした(笑)。語学学校にはいろいろな国の子が来ていて会話ができなくて、ホームステイ中もホストマザーが何を言っているのか聴き取れませんでした。だから辛かったんですけど、語学学校でちょっとだけ、通じる努力はできるようになった感じです。
――オーストラリアではダイニングレストランでウェイトレスをしていたんですよね。
小池 「お会計を」というbillがbeerに聞こえて、ビールを持って行っちゃったり(笑)、注文の聞き間違えはよくありました。
――日本ではどんなバイトを?
小池 カフェでウェイトレスをしたり、バリスタをやってコーヒーを作ったりしました。そういうのもやったことがなくて、お店の人がやさしく教えてくれて楽しかったです。
――お客さんに小池里奈さんだと気づかれたりはしませんでした?
小池 たまにありましたけど、名札を付けていたわけではなかったので、何となくニコニコして受け流していました(笑)。
留学して人目を気にするのをやめようと
――留学して新たな趣味を見つけたりはしましたか?
小池 特になかったです。今も家ではエクササイズをしたり、猫と遊んだり、ゲームをするくらい。日本でもカフェ巡りが好きで、向こうでもやってましたけど、日本だとちょっと人目が気になるところがあったのが、海外では何も気にせず自由に暮らしていて、ストレスフリーでした。
――“休業”ということでしたが、復帰するつもりではあったんですか?
小池 それは考えていませんでした。本当に一度、何もない状態で過ごそうと思っていたんです。またお仕事に戻るつもりでいると、どうしても意識してしまう部分があるので、もう引退したと思って生活してました。
――でも、結果的には復帰しようと。
小池 このお仕事って大変ですけど、すべてが新鮮じゃないですか。ドラマなら毎回違う現場で、違うキャラクターを演じて、違う人生がある。グラビアなら毎回違う場所に行って、新しい作品を作る。そういう小さな達成感が、ひとつずつ積み重なっていく感じがするんです。アルバイトだと毎日ベースは同じで、最初は楽しくても続けていると、どうしても「もっと何か欲しい」みたいになってしまう部分があって。そういう意味で、私には芸能界が楽しいと思ったのが、一番大きかったです。
――留学して人生観が変わった面もありました?
小池 「もっと伸び伸びやっていたら良かったかも」と思いました。日本にいたときはいろいろ気にして、自分を制限したりもしていたんですけど、そんなことはもういい。もっと堂々と伸び伸びしようと、シンプルに考えるようになりました。
――「制限していた」というのは、自分のタレントイメージを守ろうと?
小池 そうですね。別に誰かに言われたわけでなくて、自分でそういうふうにしちゃっていたんです。何を抑えていたのか、もうよくわかりませんけど、人目を気にするというか、「これを言ったら、こう思われる」とかヘンに考えすぎたり。でも、海外に行ったら、そんなことは気にしなくていいなと。考えすぎて行動に移せないのが一番もったいない。そういう考え方に変わってきました。
「もうアラサーなのか」と日々驚きます(笑)
――復帰後の仕事にも、留学経験はプラスになりました?
小池 直接的に役立っているかはわかりませんけど、やっぱり自分の考え方が整理されて、スッキリした感じがします。あれこれ気にしなくなって、仕事だけでなく、生活がしやすくなったところはあります。
――休業したのは大正解だったわけですね。
小池 そうですね。ノンストップであまり休まずにお仕事してきたので、1回休憩して、フラットに考える時間は必要だったと思います。結構考え込んでしまうタイプなので、どこかで息抜きをしてなかったら、思い悩んでいた気がします。
――小学生でデビューして、清楚な美少女として人気になって、20代になってから求められるものが変わってきたところもありました?
小池 お芝居ではあまりなかったんですけど、グラビアは20歳を過ぎてから、急に大人っぽく撮られたりはしました。突然セクシーな感じになっちゃって(笑)、「どうなるんだろう?」と戸惑いはありました。
――一方で、最近のグラビアでも“変わらなすぎる奇跡の27歳”と謳われています。
小池 みんなに「変わらないね」と言われます。特に何もしてないんですけど(笑)、良くも悪くもあまり染まらないというか、もしかしたら自分のベースが芯にあるのかもしれません。
――今年は28歳を迎えます。
小池 もうアラサーなんだと、日々驚きます(笑)。自分が思い描いていた28歳はもっと大人で、ワンランク違うイメージでしたけど、自分がその年齢に近づいても全然変わってないので、このままでいいのかとすごく思います(笑)。
ファンの人たちはドラマを観てビックリするかも
――変わりたい気持ちもあるわけですか?
小池 ありますね。30歳の手前って、周りはだんだん環境が変わったり、家族ができたりしていくじゃないですか。私もちょっとは変わりたいです。
――新しく始めたいこともありますか?
小池 復帰してからYouTubeを始めて、今年からインスタグラムも始めました。自分が発信してファンの人と直接交流することには、力を入れていきたいと思っています。
――『ナイルパーチの女子会』に出てくるSNS中毒の話には、思うところはありました?
小池 あそこまでになっちゃったら怖いなと思います。私は普通にSNSを使っていますけど、自分で気づかないうちにああなってしまうのが、すごく現代的で危機感がありました。
――女優としては30代に向けて、どんな展望がありますか?
小池 今まで見た目のせいなのか、年齢より若い役が多くて。30歳くらいになると役の幅も広がると思うので、年相応の役もやってみたいです。
――『ナイルパーチの女子会』の高杉真織役は、新境地になりましたね。
小池 私のファンの人はもしかしたら、このドラマを観てビックリするかもしれませんけど(笑)、作品自体が本当に素晴らしくて。今は誰もがストレスを抱えていると思いますけど、「みんな同じなんだ」と感じられるし、自分と重ねて、自分を見つめ直すこともできるドラマになっています。登場人物たちの感情が戦うところを見ていただきたいです。
Profile
小池里奈(こいけ・りな)
1993年9月3日生まれ、栃木県出身。
2004年にドラマ『美少女戦士セーラームーン』でデビュー。主な出演作はドラマ『喰いタン』、『14才の母』、『仮面ライダーキバ』、『三代目明智小五郎~今日も明智が殺される~』、映画『夕凪の街 桜の国』、『赤×ピンク』ほか。
公式ツイッター https://twitter.com/koikerina0903
公式インスタグラム https://www.instagram.com/koike_rina_93/?igshid=1op4gz8saot0n
土曜ドラマ9『ナイルパーチの女子会』
土曜21:00~/BSテレ東