【東京都杉並区】「荻窪だったら」が旗印!ニンニクと名物店員に癒される、夜間のみ営業するラーメン店。
手もみらーめん 十八番(じゅうはちばん)
よく荻窪は”ラーメン激戦区”と言われるのだが、その表現はあまり相応しいとは思わない。確かに数多くのラーメン専門店が鎬(しのぎ)を削っている街ではあるものの、それぞれの特色や持ち味が対等な支持を得て共存している。老舗店であろうがニューフェイスの店であろうが、その気になれば毎日違う店で味わえるのだから、自分のような麺食いの地元民にとって、荻窪は”ラーメンの桃源郷”以外の何ものでもないのである。
そんな桃源郷の一画を成すのが、昭和41年(1966年)創業の『手もみらーめん 十八番』。JR荻窪駅の北口を出て線路沿いに阿佐ヶ谷方向へ向かい、突き当たりの角を左に曲がると、鼻の利く人ならニンニクの匂いですぐ見つけられるはずだ。
大リーガーの大谷翔平選手と同年齢の二代目が店主を務める、ほんの10席だけの小さな店。先代の祖父・目黒敏文さんが店を畳もうとした矢先に手伝いに入ったという馬塩泰治さん。「二世代、三世代と長い間通ってくるお客さんが多かったので、爺ちゃんのこの店をどうしても守りたかった」と高校卒業の直後に店に入り、歳上の従業員たちと共に先代の味を引き継いだ。今や数ある荻窪のラーメン店の中でも、異色の存在感を放つ老舗のひとつとなっている。
とにかく住宅地の多い荻窪にあって、夜の6時から深夜までという営業時間帯が他の店とは一線を画す。酒場が軒を連ねる飲食街の”締めの定番”としても定着し、深夜に行列ができるラーメン店はおそらくここだけであろう。
その『十八番』の最大の特長が、誰もが認めるニンニクの圧倒的な存在感。ニンニクを売りにしながらもランチではニンニク抜きでと頼める店もあるが、ここではそうは問屋が卸さない。”呑んだ後に無性に食べたくなる味”、”食べたら家に帰って寝るだけだから”と、地元民に絶大な人気なのにも納得がいく。
製麺所から届いた麺を手揉みしてから、しばらく寝かせる「ちぢれ麺」が特長。麺のコシも強くなり、スープとの絡みも良くなるのだそう。
見よ、この仕込み中のニンニクの山を!もはやニンニク無くして『十八番』は語れない。隠れキャラとして、長ネギやニラ、黒ゴマも忘れてはならない存在だ。
客の9割近くが注文するのが『特製十八番』。注文を受けてから豚肉と長ネギをニンニクで炒め、麺に乗せる。元々は先代が賄いとして考案したもので、常連客に出してみたところ評判になり、メニューに加わったのだそう。券売機はなく、すべて口頭での注文となる。
豚ガラをベースとしながらも、醤油味のしっかりと効いた熱々のスープで旨い。ノーマルなラーメンは、見た目よりもあっさりとした味わいに感じる。黒いラーメンどんぶりも、最近では珍しいかもしれない。
『特製十八番』に心惹かれるものの、『味噌ラーメン』も捨てがたい逸品。コクのあるやや甘辛い味噌スープには、もやしと共にやはりニンニクが大量に投下される。ちなみに『つけ麺』は通常でも2玉を使うので、よほどの空腹の際に頼むべきであろう。
もちろん『餃子』も侮れない。もちもちとした皮の中に、ニラとニンニクたっぷりの餡が凝縮されていて病みつきになる味。1個のサイズが大きく、6ヶ500円、3ヶの半餃子300円と値段も良心的だ。テイクアウトも可能。
メニューには載っていないが、頼めば「ガリ」を小皿で出してもらえる。爽やかな酸味が油まみれになった口の中をリフレッシュするにはもってこい。
”荻窪だったら”の黄色い看板のコピーライトを見るたびに、地元愛を感じてしまうのは自分だけでは無いだろう。ガラスの扉越しにV字カウンターの中が覗けるため、混み具合が一目瞭然なのもいい。
旨いラーメンが目的なのは言うまでもないが、スキンヘッドに捻り鉢巻姿の名物店員が繰り出す、摩訶不思議な符牒を聞きたいが為に足を運んでいる、というのも嘘偽りのない理由のひとつ。
「こねますぅ〜」=麺を茹でるスタンバイ(!?)
「いきますぅ〜」=間もなく麺が茹であがるよ(!?)
「あいよぅ〜」=了解しました(!?)
あくまで観察の経験値による意訳なので、もし違っていてもご容赦願いたい。
余談になるが、発売当初に勝手な憶測が一人歩きした『うなぎぱい』の”夜のお菓子”のキャッチフレーズを捩(もじ)るなら、『十八番』は、さしずめ”禁断の〆ラーメン” ”背徳の十八番(おはこ)” ”魅惑のハスキーボイス”と言ったところであろうか・・・。
さてさて、今宵も大満足。ご馳走様!
手もみらーめん十八番 Rettyページ
住所:東京都杉並区上荻1-4-10
電話番号:03-3393-3545
アクセス: JR荻窪駅・ 東京メトロ丸ノ内線 荻窪駅 北口から徒歩3分
営業時間: 午後6時〜深夜1時30分
*お盆・年末年始を除く毎日営業