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大坂なおみと対戦するクビトワは、7年ぶりに世界1位の座を目指す。頂点で交錯する運命的な巡り合わせ

内田暁フリーランスライター
(写真:ロイター/アフロ)

 今まさに全豪オープン女子シングルス決勝が始まるこのタイミングで、対戦相手のペトラ・クビトワについての備忘録的な記事を。

 チェコ出身の長身サウスポー選手が、テニス界の“未来の女王”と目されるようになったのが、2011年7月のウインブルドン。ベースラインから下がらず、逃げのボールや相手を困惑させるトリックショットなども打つことなく、強打で相手を次々に打ちのめすようにして頂点へと駆け上がった時のこと。決勝戦の相手は、女子テニス界のスーパースターであるマリア・シャラポワ。巡り合わせ的にも、文句なしのスター誕生のように思われた。なお、この時のクビトワは21歳2ヶ月。奇しくも、今の大坂なおみと同じである。

 同年の10月に世界2位に達したクビトワが、初めて“世界1位”に挑戦したのは、翌2012年のオーストラリアだった。最初のチャンスは、全豪オープンの前哨戦であるシドニー大会で訪れる。勝てば世界1位が確定する、準決勝の一戦――。しかしこの試合で、フルセットの末に勝利を逃す。敗れた相手は、中国のリ・ナ。アジア人初のグランドスラム優勝者であり、最高位の世界2位に達する選手であり、そして、今大会のトロフィー・プレゼンテイターだ。

 シドニーで機を逃したその2週間後に、クビトワは再び1位への挑戦権を手にしていた。全豪オープンのベスト4が出揃った時点で、もし優勝すれば1位に就くことが決まったのだ。だが準決勝で、彼女は敗れる。その時の相手は、マリア・シャラポワ。最終的には、シャラポワを破って頂点に立ったビクトリア・アザレンカが、初のグランドスラムタイトルと共に世界1位に座した。

 その後、クビトワは2016年末に、チェコの自宅に押し入った強盗に襲われ、利き手の指の神経まで切られる大怪我を負う。それでも彼女は、8時間に及ぶ手術と、半年のリハビリを経て最速でコートに戻ってきた。

 今年彼女は7年ぶりに、世界1位の座を掛けて、全豪オープン決勝を大坂なおみと戦う。もし敗れれば、21歳の対戦相手が、かつて自分が逃した席に就くことになる。

 クビトワが優勝すれば、28歳326日の世界1位が誕生する。これはWTAに現行の世界ランキングシステムが導入されて以来、史上最年長の“世界1位デビュー”となる。

 

フリーランスライター

編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーランスのライターに。ロサンゼルス在住時代に、テニスや総合格闘技、アメリカンフットボール等の取材を開始。2008年に帰国後はテニスを中心に取材し、テニス専門誌『スマッシュ』や、『スポーツナビ』『スポルティーバ』等のネット媒体に寄稿。その他、科学情報の取材/執筆も行う。近著に、錦織圭の幼少期から2015年全米OPまでの足跡をつづった『錦織圭 リターンゲーム:世界に挑む9387日の軌跡』(学研プラス)や、アスリートのパフォーマンスを神経科学(脳科学)の見地から分析する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。

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