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アゼルバイジャン政府、ウクライナに「地雷除去車」提供へ

佐藤仁学術研究員・著述家
ウクライナ兵による地雷除去(写真:ロイター/アフロ)

2023年8月にアゼルバイジャン政府がウクライナ政府に地雷除去車の提供を行うことを明らかにしたとウクライナのメディアやアゼルバイジャンのメディアが報じていた。アゼルバイジャン政府はウクライナ軍支援の一環として地雷除去車の提供や地雷除去のトレーニングなどを実施する。アゼルバイジャンはナゴルノ・カラバフ紛争で多くの市民が地雷の犠牲になり、紛争後も多くの犠牲者が出ていると赤十字国際委員会でも伝えている。

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻してから、ロシア軍は大量の対人地雷、戦車用の地雷をウクライナの最前線に設置している。ロシアは対人地雷の使用、生産、移譲などを禁止しているオタワ条約(対人地雷全面禁止条約)に加盟していない。

ウクライナ政府やウクライナ軍は欧米諸国が軍事支援で提供してくれたり、ウクライナの農民自らが独自に開発したりした地雷除去用の無人車などで地雷原で地雷の除去をしてきた。しかし地雷除去車は足りていない。

多くのウクライナ兵や一般市民が対人地雷や対戦車地雷の犠牲になっている。地雷では殺害されることはほとんどないが、手足が吹っ飛んでしまう。また小型のおもちゃのようにも見える対人地雷は子供や一般市民が拾ってしまい、爆発したら手足が吹っ飛んでしまう大けがをすることになる。地雷は一度埋められてしまうと、除去されない限り残っていて、人間が触れてしまうと爆発してしまう。

地雷の他にも不発弾や、迎撃されたが上空で爆発しないで墜落した「爆弾を搭載した神風ドローン」なども地上に散乱しており、それらも何も知らずに踏んだり触ったりしてしまうと爆発する危険性がある。対戦車地雷は戦車を撃破することを目的にしているので破壊力も強い。人間が対戦車地雷と知らずに触ってしまったら大爆発して死亡する可能性が高い。

そしてロシア軍はウクライナに侵攻してから勝手に対人地雷、対戦車地雷を敷設しており、ウクライナ政府職員やウクライナ軍の兵士が地雷を探知したら丁寧に爆破して除去している。人間の兵士が地雷を探知して除去するのは大変な作業で危険を伴っている。

対戦車地雷のように道路に置いてあり、上空からも目立って見える地雷はドローンで見つけてドローンから爆弾や手榴弾を投下して地雷ごと爆破している。だが多くの地雷は草原や茂みなど目立たないところに敷設されていて、兵士や一般市民が地雷とわからずに触れてしまい爆発している。そのため地雷の探知と除去も命がけである。

ウクライナ政府が承認したウクライナ製の地雷除去車は無人で遠隔操作なので運転手はいない。従来のように人間が探知して除去するよりも効率的で安全である。地雷除去のような危険な業務には無人のロボットが適している。地雷だけでなく不発弾や神風ドローンも探知して除去する。地雷原になってしまっている広大な草原地では人間が歩きながら地雷を探して除去するよりも効率も良い。だが、まだ「無人地雷除去車」は普及していないので、危険を伴う地雷の探知と除去作業のほとんどはウクライナ政府の職員や人間の兵士が行っている。

「無人地雷除去車」やロボットのようなリモートコントロールでの無人での作業は4D業務(Dangerous:危険な、Dirty:汚い、Dull:退屈な、Deep:深くて人間が行けない場所での作業)に適している。地雷除去はかなり危険(Dangerous)な作業なので、「無人地雷除去車」による作業の方が人間が行うよりも適している。

地雷が爆発して死ぬことは少ないが、手足が吹っ飛んでしまい不自由な生活をせざるを得なくなる。また対人地雷で大けがをした負傷兵の世話をしないといけないので軍隊のオペレーションにとって大きな負担となる。さらに負傷した軍人や市民らは生涯にわたって不自由な生活を強いられることになる。そのため地雷は発見したらすぐに除去しないといけない。紛争が終わってからも地雷が残っていると、地雷が埋められていることを知らないで市民や子供が地雷に触れてしまい爆発する危険がある。

▼ウクライナ政府への地雷除去車の支援を報じるアゼルバイジャンのメディア

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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