『PKストップ後シナリオ通りに進むはずが』ルヴァン杯決勝 福岡vs浦和【浦和レッズ川柳試合レビュー】
■久々の国立競技場を隅々までチェック
地下鉄の国立競技場駅のエスカレーターはとにかく長い。来たのは2021年の天皇杯決勝以来だったので、つい忘れていた。千駄ヶ谷駅から行くと、どうせ大混雑だろうからと迂回して地下鉄にしたのだが、試合開始一時間半前、こっちもそれなりに混んでいた。
抽選で当たったのは南側の三層バック。つまりはレッズサポの横で、一番屋根に近いアッパー席。これもまた入るなり、とりあえずはエスカレーターだ。まず一度席に行ってみたら、ちょうど通路に面した端だったので、これは嬉しい。国立は、中の方の席になると、出入りが窮屈で、いちいち「すいません」と謝りながらじゃないとトイレにも行けない。
まだ試合開始まで1時間20分くらいあったが、すでにレッズサポの応援はほぼフル状態。しかし、アビスパサポも、想像していた人数よりもだいぶ多かった。そらもう客層は若者から中高年から幼児を連れたファミリーから様々。平日夜の「ソロ活おじさん」の多い埼スタとは違う。
三層のコンコースには、ビールの売り子やってる女の子もいた。ああいうのは野球場が定番で、レッズ戦ではほぼ見かけないので、ちょっと驚く。しかもスタンドじゃなく、コンコースとは。11月とは思えない気温の高さで、そこそこ売れてた。
コンコース ビールも売れる ノーベンバ―
入場の際、ついMDPを買い忘れて、青い服着た会場スタッフに売り場をたずねたら、一度、入場エリアの外に出ないと売り場には行けないとのこと。仕方ないんで、「外部階段」と名付けられた非常階段みたいなところを降りて、いったん出口で「再入場券」をもらい、MDPを買って、また再入場の専用口から階段をのぼって戻る。ビルでいえば10階くらいを上り下りしたのだから、高齢の身としてはなかなかキツイ。しかも、一昨年の天皇杯の時と違って、一層や二層や、他のエリアには入れないようになっている。いろいろなトラブルを事前に防ぐための処置なんだろうか。また、国立の内部を一回りフラフラ歩くのを楽しみにしてたところもあり、これはいささかガックリ。
トイレも改めてチェック。天皇杯の時は、ハーフタイムで並んで、大混雑で後半のはじめに間に合わなかった苦い思い出がある。また入ってみて、小便器の数が少ないだけではなく、奥の方まであるのが手前の列で待っている人にはよく見えなくて、空いてる便器があっても使っていないケースがあるのに気付く。これ、設計上の失敗だろうな。埼スタの方が数も多いし、どこが空いてるか見やすい。
国立は トイレのチェックも 試合前
■スタメン発表時の行動について
先発メンバー発表は、レッズ、アビスパそれぞれのDJが力を入れて、思い切り凝った作りになっていた。井手口って、今、アビスパにいるのを初めて知った。なんか、アピスパのメンバー発表で、レッズサポが思い切りブーイングかましてたのがあとでけっこう批判されていたが、私はどうもあまり気にならなかったな。ブーイングって、「あなたの力を認めてますよ」っていう尊重の表現としての一面もあって、どうでもいいヤツと思ったらブーイングなんてしない。対抗戦としての雰囲気を盛り上げるスパイスの要素もあるし。ご飯とマグロをノリで巻いて食べる時のワサビみたいなもんで。
ブーイング ワサビを付けた 手巻きずし
6万1千人を超える大観衆。私はナビスコカップを浦和レッズが初優勝した2003年の国立、あまりに観客が多くて、席に座るどころかまともに立ち見も出来ず、聖火台のすぐ横の鉄柵に上って観戦したのを思い出した。若かったな。70歳目前の今となっては、あんな芸当はできない。とにかくエメルソンが異常に速かった。
さすがにあの熱気を味わったものとしては、その後、何度も優勝を重ね、レッズサポも落ち着いているというか、いささか「優勝慣れ」した感じもなくはない。応援のコールも、圧倒的ながら、どこか理路整然としている。
■あと一歩が足らず・・・
いよいよ試合前半。これがまあ、10/24に埼スタで行われた浦項戦を引きづってんじゃないかと思うくらい、レッズ選手の動きは重い。ボールをキープしても、まわりかあんまり走らないからパスを送る場がみつからないのが何度もある。反対にアピスパの側が、気持ちいいくらいにパスを散らして、リズミカルにレッズのスキをついてくる。試合開始5分くらいの1点目も、前半終了直前の2点目も、キレイにボール前にパス出されて決められちゃった。とてもじゃないがアジア王者のチームと初タイトルへ挑戦するチームの対決には見えない。
スキをつく ハチの一刺し リズミカル
ハーフタイムのトイレはやはり大混雑ながら、通路側の席で、一歩早く並べるアドバンテージがあって、さほど時間がかからなかった。
いよいよ後半。まさかこのままの流れでいくわけもないだろうと、交替メンバー見たら、安居と大久保か。スコルジャ監督もあんまり動いてねぇなと不審に感じていたところに、PK取られるピンチ。これで3点目来たら、もうギブアップになりかねない。どうにもこうにも、いいとこなしだな、とガッカリしてたら、きょうのレッズで初めて「いいとこ」を見せてくれたのが西川であった。ナイスセーブ!しかし埼スタじゃないからか、「ナイスセーブ」はオーロラビジョンには出ない。
レッズ・サポ 心のビジョン ナイスセーブ
これで、明らかに流れがかわった。PKが取れたかと思いきや、「PK無し」と判定された一幕もあったが、(ビジョンで、ちゃんとそのシーンの動画を流してほしい)、リンセン、明本も投入され、エンジン全開。さっそく明本のゴールも生まれる。
逆転か、せいぜい同点にして延長になだれ込むくらいのシナリオがレッズサポの誰のアタマにも浮かんだことだろう。
それからあとは、もっぱらレッズの歯車も滑らかに回り出し、チャンスが次々と訪れる。
90分になってもまだ諦めない。「アディショナルタイム8分」だから。しかし、カンテのゴールポストに当てるシュートあり、ゴール前のFKで、サインプレーだったのか、ヘンな方向にキック出したら、誰も取りに行かないコントみたいなシーンがあったり、勝敗を別にしてみると、少し笑いも入った賑やかな場面が次々と。
ただ結局、追加点は奪えずに3度目の優勝は、なし。
アディ8分 ドタバタ喜劇の 味付けを
FKを 蹴ったところは 無人島
帰り、三層から出口に出る降りる階段が大混雑で、15分くらいかかった。これも埼スタならスムースなのに。
やはり国立競技場は、あんまり使ってほしくない。
山中伊知郎
1954年生まれ。1992年に浦和に引っ越して来て、93年のJリーグ開幕時にレッズのシーズンチケットを取得。以後30年間、ずっとシーズンチケットを持ち続け、駒場、ならびに埼スタに通う。2021年より、レッズ戦を観戦した後、「川柳」を詠むという「レッズ川柳」を始める。現在、去年一年の記事をまとめた単行本『浦和レッズ川柳2022』(飯塚書店)が好評発売中。
代表を務める「ビンボーひとり出版社」山中企画では、8月、テレビの夢グループCMで、石田社長の横で「社長~! 安くしてエ~!」の甘え声でお馴染の歌手・保科有里の『愛人!? 困っちゃう・・・』という本を出す。秋には、タブレット純とエド山口の対談本を出す予定。
11月27日(月)、東京都江戸川区のタワーホール船堀・小ホールで『ちょっと昭和なヤングたち90回スペシャル』も開催。入場料は2000円ながら、地元の江戸川区民は500円割引して1500円。