ミュージカル界のニュースター・豊原江理佳の人生を変えた“心の解放”
話題作に立て続けに出演し、ミュージカル界で注目を集めている豊原江理佳さん(26)。来年1月から「ジャニーズWEST」の小瀧望さん主演の舞台「ザ・ビューティフルゲーム」にも出演します。日々存在感が増していますが、転機で感じた“心の解放”とは。
こんな世界があるんだ
父親が音楽に関わる仕事なので、ずっと常に周りに音楽があったんです。なので、小さな頃から当たり前のように「みんな、大人になったら音楽の仕事をするんだ」という感覚の中、育ちました。
なので、子どもの頃から歌うことは大好きだったんですけど、両親はその他の選択肢も私に与えようと思って、たくさん習い事をさせてくれたんです。水泳、お習字、剣道、乗馬…と本当にいろいろとさせてもらったんですけど、どれも長続きしなくて。
そんな中、9歳の時の地元・大阪の市民ミュージカルに行ったんです。地域の子どもが公民館に集まって、夏休みの間に練習して舞台に立つというものだったんですけど、この練習だけはイヤになるどころか、行きたくて、行きたくて仕方ないくらいのめり込んだんです。
もともと歌うのが好き。踊るのも好き。それが両方できて、しかも、ちゃんと舞台で皆さんに見てもらえる。世の中にこんな世界があるんだ。衝撃を受けるくらい、本当に楽しくて。そこから両親がミュージカルのスクールに入れてくれて、それが今の仕事につながる第一歩になりました。
そこからミュージカル「アニー」でアニー役をさせてもらったりもしたんですけど、舞台以外の選択肢もやっぱり持っておいた方が良いという親の考えもあり、学生時代は少しミュージカルからは離れた生活をしていました。
でも、高校に入り、その後の進路を考えるようになると、やっぱり舞台に立ちたい。そう思うようになり、大学に入ってからいわゆるプロとしての道を歩み始めました。
心の解放
実際に今の世界に入って、もちろん大変なこともあるんですけど、それ以上に喜びをたくさん感じました。
一つは自分のこれまでの道のりというか、そこを認めてもらった気がしたんです。というのは、私は父親が海外の出身なので、見た目が周りの子どもたちとは違う。
そこに息苦しさみたいなものを感じていたのも事実ですし、そういう要素を隠そうという意識もありましたし、人と違うことがイヤだと思う日々でもあったんです。
ただ、今の仕事に出会ったことで、それが一転して前向きな個性になる。隠すどころか、それを出すことが求められもする。
そうなると、自分が自分であることに自信が出てくるというか、さらに自分だけの個性をもっと出そうとなる。心が解放されるというか、この感覚は今の仕事をするまではなかった部分なので、ミュージカルが新たな自分に出会わせてくれたと感じています。
そして、いろいろな人に会う仕事でもあるので、人それぞれにそれぞれの悩みがある。これを知ることができたのも大きかったですね。自分だけが変わった境遇にあるのではなく、みんなそれぞれ思うこともあるんだと。
まだまだこれからですけど、今後はそういった自分が感じてきたことを歌に乗せて、聞いてくださった方に何かを感じていただく。そんなことをしていけたらなと思っています。
あと、私は本当に周りの皆さんに恵まれていて、みなさんにお世話になっているので、自分がこの先年齢を重ねていった時には、その時の若い人に自分がやってもらったようなことは一生懸命やりたいと思っています。
今後のことなので、フワッとした話になって申し訳ありませんけど(笑)、その思いだけは明確に私の中にあるものなんです。
(撮影・中西正男)
■豊原江理佳(とよはら・えりか)
1996年4月8日生まれ。ドミニカ共和国出身。大阪府育ち。ワタナベエンターテインメント所属。小学生の頃にミュージカルに興味を持ち、2008年にはミュージカル「アニー」でアニー役を務める。大阪芸術大学卒業。ニューヨークでのレッスンを経て、多くのミュージカルに出演。今年だけでも「EDGES」「呪術廻戦」「The Fantasticks」などに出演。来年1月からはミュージカル「ザ・ビューティフルゲーム」(東京・日生劇場1月7日から26日、大阪・梅田芸術劇場メインホール2月4日から13日)に出演する。