今週も 宮城に曇り空を、山形に電力をもたらす“やませ”が吹く
きょう7月7日(日)は二十四節気の小暑=徐々に暑さが本格的になってくる頃です。
ただこの暦とは裏腹に、今日の宮城県は最高気温でも20℃前後と5月下旬並みの涼しさになりました。この気温の低さをもたらしたのはやませと呼ばれる風です。
やませとは
今朝9時の天気図を見ると、北海道の北=オホーツク海に高気圧があります。こうしてオホーツク海に高気圧が発生すると、ここから北東の風が吹いてきます。この北東風がやませです。
やませは冷たい海の上を吹き渡ってくるため、宮城県など東北の太平洋側はどんよりとした曇り空になり、また気温も低くなります。このやませが長期間続くと農作物に大きな影響を及ぼすため、「凶作風」と言う別名まであるほどです。
最近の事例では2017年の8月はこのやませが頻繁に吹いたため、極端に日差しの少ない1か月になりましたし、1993年の夏は「平成の米騒動」と呼ばれる程の米の不作をもたらしました。
奥羽山脈の西側では
ただこのやませによる冷たく湿った空気は、厚みが1000m前後しかないため奥羽山脈を越えることができません。
きょうの衛星画像を見ると、東北の太平洋側にはベッタリと雲がかかっている一方、奥羽山脈を隔てた日本海側はよく晴れています。
奥羽山脈の西側では、フェーン現象も加わるため晴天と暑さがもたらされます。このため日本海側では、太平洋側と反対に米の出来がよくなるため、秋田県ではこの風を「宝風」と呼ぶ地域さえあるそうです。
また山形県では、やませが奥羽山脈と出羽山地を越えた先=酒田周辺で強風になります。先に上げた今朝9時の風向風速の図でも、山形県の日本海側沿岸部で10m/sを超える東風が観測されています。
これは、風が最上峡谷を通る際に強められているもので、この地域の東寄りの強風を「清川だし」と呼びます。この清川だしは“日本三大悪風”の一つにも数えられる程の強風になります。
ただ、現在山形県ではこの強風を利用して風力発電が盛んに行われていて、やはり風によって恩恵がもたらされています。
今回のやませはいつまで続く?
さて、宮城にはヒンヤリした曇り空を、山形には電力をもたらすこの東風がいつまで続くのでしょうか。
あす8日になるとオホーツク海高気圧は東へ離れるため、宮城県でも晴れ間が戻り、気温も平年並みに戻りそうです。
ただ早くもあさって9日になるとまた別の高気圧がオホーツク海に進んでくるため、再びやませが吹きそうです。
今週も火曜日~金曜日頃にかけて、宮城県ではヒンヤリした曇り空が続く見込みです。農家の方は農作物の管理にご注意ください。
【参考文献】
吉野正敏(2008) 気象ブックス020 世界の風・日本の風 成山堂