篠原涼子 19年ぶりに歌う。sino R fineとして「新しい自分を表現したかった」
Netflixシリーズ『金魚妻』に主演。ドラマを盛り上げる主題歌「Crazy for you」をsino R fine(シノールフィーネ)として歌う
2月14日にNetflixで全世界同時配信され、早くもデイリー国内1位、香港1位、台湾2位など、他国も続々ランクインし大きな話題になっているドラマ『金魚妻』。累計300万部超えの大ヒットコミックが原作の、様々な「妻」たちが禁断の恋を繰り広げる物語で、主演を務めるのは篠原涼子。そしてこのドラマの世界観をさらに深く、せつなさを増幅させ、伝えてくれるのが主題歌「Crazy for you」(2月14日配信スタート)だ。歌うのはsino R fine(シノールフィーネ)。歌声を聴いて、篠原涼子とわかった人はどれくらいいるのだろうか。篠原はsino R fineとして19年ぶりにマイクの前に立った。主題歌と主演を務めた篠原本人に、歌おうと思った経緯、そして「Crazy for you」という作品について、さらに地上波での映像化は難しいといわれていたこの作品に挑むまでの思いをインタビューした。
19年ぶりにマイクの前に立つ。「歌いたい思いはずっとあった」
篠原は1990年に東京パフォーマンスドールのメンバーとしてデビューし、94年小室哲哉のプロデュースで、篠原涼子 with t.komuro名義で発売したシングル「恋しさと せつなさと 心強さと」が200万枚を超える大ヒットになったが、徐々に女優業に軸足を移し音楽からは離れていた。しかし音楽のことを忘れたことはなかった。
「約20年間ずっと歌をやらないでいたんだと思うと、逆に歌い続けていたらどうなっていたんだろうって思います」——そう語る篠原は、元々音楽をやりたくてこの世界に入ってきたこともあって、ずっと歌いたかったのだ。
「歌いたい思いはずっとありました。30代の時は、やっぱりお芝居に全力投球というか、夢中で学んでいる感じで、でもそんな中で歌いたいという思いはずっとありながら、40代になって、やっぱりトライしてみないと、自分から発信しないと何も動かないんだなって改めて思って。それで以前から親交があったSUNNY BOYさんに相談して、趣味的に曲の制作をスタートさせていました」。
親交のある音楽プロデューサー・SUNNY BOYと、数年前から趣味として、楽しみながら楽曲を作っていた
安室奈美恵、BIGBANG、三浦大知、SKY-HIなどの数々のビッグアーティストの作品を手がけた音楽プロデューサー・SUNNY BOYと、音楽を楽しみながら制作していく中で『金魚妻』への出演のオファーが届いた。ドラマの撮影中、プロデューサー達と主題歌についてどんな曲がよいか、といった雑談をよくするようになった。ある日、プロデューサーから「役としても出演しているし作品の理解が一番ある篠原さんが主題歌を歌ってみない?」というひと言から、主題歌を担当することが決まった。そして、主題歌候補として集まった楽曲達からSUNNY BOYとChe‘Nelle(シェネル)が制作した「Crazy for you」の原型となるデモ曲に決まった。まだ歌詞も付いていないデモ楽曲を初めた時、篠原は強く感動したことを覚えているという。その後、加藤ミリヤも加わり、作品に寄り添う歌詞を書き上げ「Crazy for you」は完成した。ドラマで描かれる世界観とリンクした歌詞と、一度聴くと忘れられない甘美で切ない繊細なメロディ。それを際立たせる美しいピアノの音色。そして今にも崩れ落ちてしまいそうででも崩れない、そんなか細さと強さを感じさせてくれる篠原の歌は、どこまでも切ない。シンプルなサウンドゆえに歌の表現力が求められる。
「今までとは違う歌い方に挑戦。心機一転新しい自分を表現したかった」
「レコーディングはSUNNYさんと(加藤)ミリヤさんが、シェネルさんは海外からオンラインでずっと付きっきりで、ディレクションしてくださいました。特に歌の部分は久々だったので、当時の歌い方だとアイドルチックというか歌謡曲っぽい感じになってしまうので、違う雰囲気で自分も乗せたいと思いました。みなさんから色々なアイディアをいただき、すごく勉強にもなったし、新しい発見もありました。こういう音楽は初めてだったので、心機一転新しい自分を表現していけたらいいなと思いました。私が演じているさくらは、すごく弱くて、でも本当は芯が強いけど自分の本当の姿が出せない、伝えることができないという女性です。さくらになり切って、まだ私はあなたについて行きたい、あなたに支えられたい、でも一緒になれない、どうすればいいんだろう、という気持ちを込めて春斗(岩田剛典)の顔を思い浮かべて、会いたいという気持ちで歌いました。そんなさくらという女性像を音楽で崩さないようにということと、強く歌いすぎると、一人で生きていけるという感じが出てしまうので、か弱さを出したくてファルセットを効かせた感じで、ニュアンスを探っていきました」。
「『Crazy for you』には、女性の願望、思い、願いが全部詰まっています」
「Crazy for you」の歌詞の中で、特にお気に入りのフレーズがあるという。
「最後の<心溺れるほど Crazy for you>というフレーズはそれまでに”心殺すほど”“心壊れても”という歌詞が出てきているので、違うフレーズを捻りだすのに、本当にみんなで運命共同体のように必死に考えて出てきたフレーズなので、印象に残っています。この曲には、結ばれたいけど結ばれない、だけど一つになってあなたとなんとかなりたいという女性の願望、思い、願いが全部がここに詰まっています。現実的ではないかもしれないけれど、あなたとはこうやって生きていきたいという思いが込められていると思います」。
「配信系のような縛りがないところで、自分自身の演技とぶつかってみたいという思いがずっとあった」
この曲で「新しい自分を表現したい」と思った気持ちは、このドラマへの出演のオファーがあった時に「表現の限界に挑戦したい」と思ったという、その時の篠原の一貫した強い思いが貫かれている。
「地上波は地上波でいいところがあると思うし、でも地上波では表現できない部分を、配信系のコンテンツは映画に通じるいいところがあって、私は配信系のような縛りがないところで、自分自身の演技とぶつかってみたいという思いがずっとありました。ここまで見せていいのかと、体を張ってやらせていただいたのも初めてですし、篠原涼子としてというよりも、役者、平賀さくらとして割り切って演じることができました。並木道子監督を始め、女性スタッフが多い現場だったので、ドラマ自体はセクシャルなシーンも多いけど、そこを感じない演出になっていると思います。いやらしくなりすぎず、でもリアリティを持って世の中に提示したかった。だから今回は自分にピッタリなドラマ、役だと思いました」。
ドラマの世界観や“匂い”とつながっているMUSIC VIDEOもこの曲を薫り立たせるような映像になっている。
「女性が一人で悩みを抱えながら逃げている、という匂いを醸し出しつつ、最後は少し救われるっていう感じになっているので、ドラマとちょっとリンクしてますよね」。
「音楽活動は今回をきっかけに、どういう形であれ歌っていたいという気持ちが強くなった」
篠原はコロナ禍で、改めて自分自身と対峙する時間が増えたことを前向きに捉え、人間として、表現者として、思いを新たにした。
「人に会うこともできなくて孤独な時間を過ごす中、それをバネに、自分のものにしなければ明日は始まらないと思い、自分のことは自分で守らなければいけないんだと再確認できました。今まで一人で考える時間が少なかったので、この時間はすごく意味があると思えて、自分を見直す時間になりました。そういう風に考えた方が多かったのではないでしょうか。仕事についてもより深く考えるようになりましたし、役者として色は付けたくないし、これがやりたいというこだわりの精神よりも、色々な役に染まれる人間になりたいというふうにも思えました。与えられたものを器用にできるような役者になりたいです。そして、音楽活動は今回をきっかけに、どういう形であれ歌っていたいという気持ちが強くなりました」。