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森保ジャパンの10月欧州遠征メンバーをどこよりも早く読み解く。「新ビッグ3」を脅かすのは?

元川悦子スポーツジャーナリスト
活動休止前最後の2019年11月のベネズエラ戦(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

止まっていた時が動き出す森保ジャパン

 2019年12月のEAFF E-1選手権(釜山)を最後に事実上の休止状態に陥っていた森保ジャパン。その活動が10月のオランダ遠征から再開される。彼らは同シリーズでカメルーン(9日)、コートジボワール(13日)の国際親善2連戦(無観客)に挑むことが決定。開催場所もユトレヒトになることが16日に正式発表された。2022年カタールワールドカップに向けて、止まっていた時間がようやく動き出すことになる。

 15日に急きょ報道陣に対応した森保一監督は「3・6・9月のインターナショナルマッチデー(IMD)も新型コロナウイルスの影響を受けながらいろんな活動を進められるようにいろんな方が尽力してくれたが、想定していた選択肢が全てなくなってしまった。だからこそ、10月に活動ができることは本当にありがたい」とまず感謝の言葉を述べた。そのうえで「コロナの状況がどう変わるか分からないので、活動もまた難しくなるかもしれませんが、コンセプトの意思疎通を図ったり、選手のコンディションを正確に把握する活動にしたい」とチームの土台再構築に全力を注ぐ意向だ。

今回は欧州組のみ。25~30人で編成

 そこで気になるのが招集メンバーだ。指揮官は「国内組を呼ぶと帰国時の2週間自主待機があるため考慮しなければならない。海外組だけのパターンを考えて、通常の23人より多めに呼びたい。現時点では25~30人を考えています。東京五輪世代の選手も呼ばせてもらって、少しラージグループというか、将来につながるような選手も招集させてもらえたらという話もしています」と発言しているだけに「昨年までのベース+東京世代」という構成が有力視される。

吉田、長友、酒井…。DF陣は計算できる陣容

 その陣容をいち早く読み解いてみたい。

 まずGKだが、ここまでの2次予選4試合に帯同している権田修一(ポルティモネンセ)、シュミット・ダニエル(シントトロイデン)、川島永嗣(ストラスブール)の3人で決まりだろう。

 センターバック(CB)はキャプテン・吉田麻也(サンプドリア)、21歳で守備陣の要の1人に成長している冨安健洋(ボローニャ)、リオデジャネイロ五輪世代の植田直通(セルクル・ブルージュ)、東京世代の板倉滉(フローニンゲン)の4人。板倉はボランチもできるが、13日のオランダリーグ開幕戦・PSV戦ではCBに入っていることから、こちらでの選出になりそうだ。

 右サイドバック(SB)は酒井宏樹(マルセイユ)と室屋成(ハノーファー)で問題ないし、左SBも長友佑都(マルセイユ)と安西幸輝(ポルティモネンセ)がいる。今年に入ってから1試合も出場していない長友は新天地でもまだ出番を得ておらず、コンディション面が懸念されるが、それも含めて合宿でチェックしたいというのが森保監督の考え。今のところ34歳のベテランSBを超える存在はいないため、彼への期待は依然として大きいはずだ。

柴崎、堂安、南野、大迫なども順当に選出へ

 ボランチは柴崎岳(レガネス)、遠藤航(シュツットガルト)、橋本拳人(ロストフ)、中山雄太(ズヴォレ)の4枚が順当だろう。本来であれば、ここにJリーグで絶好調の大島僚太(川崎)を加えたいところだが、今回は欧州組のみということで致し方ない。上記4人だとゲームメークの部分で柴崎への依存度が高くなるが、遠藤航はブンデスリーガ1部初挑戦となる今季は攻撃面での役割を多く担いそうだし、橋本にしても新天地・ロシアですでに2ゴールをマーク。FC東京時代以上に攻撃意識を押し出している様子で、柴崎を除いた組み合わせにも期待がかかるところだ。

 選考が難しいのはアタッカー陣。欧州組は前線の選手が圧倒的に多いため、選択肢が広すぎるからだ。これまでの森保ジャパンのベースを重視するなら、右サイドは堂安律(ビーレフェルト)と伊東純也(ゲンク)、左サイドは中島翔哉(ポルト)と原口元気(ハノーファー)、トップ下に南野拓実(リバプール)と久保建英(ビジャレアル)、FWは大迫勇也(ブレーメン)と鈴木武蔵(ベールスホット)という構成が有力視される。

残り6~7人は東京五輪世代? 実績組?

 これで合計23人。問題はここから先の人選だ。森保監督が言葉通り、東京世代に寄ったメンバー選びを進めていくのなら、三好康児(アントワープ)や遠藤渓太(ウニオン・ベルリン)、菅原由勢(AZ)、伊藤達哉や中村敬斗(シントトロイデン)、安部裕葵(バルセロナ)、食野亮太郎(リオ・アヴェ)、藤本寛也(ジル・ヴィセンテ)といったメンバーが組み込まれるだろう。しかしながら、「欧州の所属クラブで実績を残している選手がいるのに、彼らを呼ばなくていいのか」という異論が飛び交う恐れがある。

 実際、12日に開幕したスペインでは、岡崎慎司(ウエスカ)、乾貴士(エイバル)という30代プレーヤーが揃ってスタメンを張り、存在感を強烈にアピールしている。ドイツでもブンデスリーガ開幕に先駆けてスタートしたDFBポカールで鎌田大地(フランクフルト)が出場。契約問題も間もなく決着がつきそうで、今後さらなる活躍が期待される。ベルギーでも森岡亮太(シャルルロア)や鈴木優磨(シントトロイデン)がコンスタントにピッチに立ち続けているし、浅野拓磨(パルチザン)も新シーズンに入ってからゴールを立て続けに奪うなど気を吐いている。こういった面々をどう扱うかは、やはり思案のしどころだ。

岡崎、乾らはぜひ招集を!

 2021年にズレ込んだカタールワールドカップ最終予選まで代表活動が何回できるか分からないことを考えると、伸びしろだけで若手ばかり集めるのは得策ではない。東京世代は少なくとも恒常的に試合に出ている三好や菅原らにとどめ、それ以外は岡崎、乾、鎌田、鈴木優磨、浅野らを入れて、既存メンバーに刺激を与える方がチームは活性化するのではないか。この合計7人を加えても総勢30人。森保監督の言う「25~30人」の枠内に収まる。やや年齢層は高くなるかもしれないが、岡崎がいるだけで大迫や鈴木武蔵は強い危機感を抱くだろうし、ロシアワールドカップ2ゴールの乾が参戦すれば原口や中島は「もっと結果を残さなければいけない」と奮起するはずだ。

「新ビッグ3」の牙城を崩す一番手は久保建英か?

 こうした前向きな競争があってこそ、チームは成長する。とりわけ、森保ジャパン発足当初から「新ビッグ3」といわれた堂安・南野・中島のうち、南野以外は期待通りの軌跡を描けていないのが実情。新戦力が彼らのポジションを脅かすような熾烈なサバイバルがあっていい。2列目全ポジションをこなせる久保建英を筆頭に「新ビッグ3」の牙城を崩せそうな存在は確かにいる。誰がアタッカー内で存在感を高めるのか。チーム内序列がこの2連戦でどう変わるのか。それを楽しみにしつつ、24~25日頃と見られるメンバー発表を待ちたい。

スポーツジャーナリスト

1967年長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに。日本代表は非公開練習でもせっせと通って選手のコメントを取り、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは94年アメリカ大会から7回連続で現地へ赴いた。近年は他の競技や環境・インフラなどの取材も手掛ける。

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