Yahoo!ニュース

「まだまだ伸びしろアリ」“12人のヴァイオリニスト”の魅力

山田美保子放送作家・コラムニスト・マーケティングアドバイザー
(写真提供:すべて日本テレビ)

 高嶋ちさ子が2006年に立ち上げたプロジェクト「12人のヴァイオリニスト」をご存じだろうか。

 人によっては「とっつきにくい」という印象を持つクラシック音楽。しかし高嶋はこれまで、「少しでも親しみやすく」「たくさんの人に届けたい」という信念のもと、積極的にクラシックのコンサート活動を展開している。

 フジテレビ・軽部真一アナウンサーと共に、1997年から『めざましクラシックスproduced byちさ子&軽部』を始めて、すでに400回以上。

 2021年からは、『ザワつく!金曜日』(テレビ朝日系)の番組イベント『高嶋ちさ子のザワつく!音楽会』を開催し、番組レギュラー陣や高嶋のプライベートでの親友ら、楽器初心者によるチャレンジやトークが演奏と共に好評だ。

―細かすぎる!?高嶋の“鬼指導”

 そんな高嶋がプロデュースする「12人のヴァイオリニスト」も、“クラシックヴァイオリンの新たな鑑賞方法”の提案によって構成されたユニット。

 “12人の”となっているが、現在登録されているメンバーは14人だ。

 そんな「12人のヴァイオリニスト」に約7年も密着しているのが、『1周回って知らない話』(日本テレビ系)。現在、特番として不定期放送されている同番組は、「12人のヴァイオリニスト」のオーディションから高嶋による“鬼指導”までを、包み隠さずオンエアしてきた。

 

 “鬼指導”には、「自己紹介がつまらない」とか「トークにオチがない」といったものも含まれる。

 3~4歳からヴァイオリンを始め、国内外の有名音楽学校で著名な指導者に師事し、第一線で活動してきた彼女たちにとって必要なスキルなのかどうかも疑わしいが、高嶋は気づいたら瞬時に彼女たちに“鬼指導”を浴びせるのだ。

 12人の表情が凝り固まる様子を、番組レギュラーである筆者は何度も見てきたものである。

 さらには飲み会でのトーク、果ては彼女たちの私服のセンスにまで、プロデューサー・高嶋は常に厳しい。

 ちなみに、番組出演時の衣装でも「3色以上、色を使わない」というモットーがある高嶋は、まさに2~3色しか使われていない『sacai』の衣装が多いだろうか。遊びを入れるなら「色よりデザインで」というタイプのようで、12人への“ファッションチェック”にまで容赦ないのである。

 もちろん、演奏についても高嶋の“鬼指導”は炸裂する。それもこれも裏を返せば、多くの観客を楽しませ、1人でも多く観客を呼べるプロとして12人が育つように…という高嶋の親心による“愛情指導”なのだ。

―必見!“ちさ子(鬼)の居ぬ間に”

 10月31日、そんな12人と『1周回って~』のコラボコンサートがサントリーホール(東京)で行われ、客席で観る機会に恵まれた。題して、『12人のヴァイオリニスト 1周回って知らない演奏会 ちさ子(鬼)の居ぬ間にFantastic Night』だ。

 

 人気バラエティ番組とのコラボとはいえ、12人だけで会場が埋まるのかと正直なところ心配していたのだが、それは無用だった。客席は彼女たちのファンが埋め尽くし、人によっては“推し”のメンバーもいて、1曲1曲に温かい拍手を送ったり、トークには大きなリアクションをしたりしている。

 12人が揃って奏でるヴァイオリンの音色は、美しくもあれば迫力もある。クラシックの名曲から多くの人の耳に馴染みがある映画音楽まで、“クラシック素人”にも大いに楽しめるプログラム。

 「驚いた」のは、ヴァイオリンのテクニックの確かさのみならず、「振付」や「フォーメーション」、「早着替え」など、クラシックコンサートではまず聞かないようなワードがステージにちりばめられていることだ。

 12人は、ヴァイオリンの構え方からフォーメーションを含む演奏中の姿、ラスト、弓を振り上げるところまで見事に揃っている。ヘアメイクにも高嶋の指導は行き届いているようで、それぞれの個性を活かした、それはそれは美しい仕上がりになっている。

放送作家である筆者もビックリ!

 特筆すべきは、やはり「一芸コーナー」であろう。これまで『1周回って~』の密着VTRでも、“けん玉”や“一輪車”を駆使しながらヴァイオリンを弾く12人を見てきたが、7年経って、それらは大きく進化を遂げており、それは“大道芸”のようだと言っても過言ではない。

 コーナーMCの巧さにも度肝を抜かれた。私はバラエティ専門放送作家でもあるので、もしかするとトークについては高嶋以上に厳しいかもしれない。

 そんな私をも驚かせたのは、12人が決まりきった台詞を暗記して話すのではなく、間や緩急を駆使しながらアドリブ力にまで長けていたことだ。

 

 心から感動したので、翌朝、高嶋へLINEをしてその想いを伝えたところ、「いらしてくださったんですか?ありがとうございます」の後、「気が気じゃなくて…」「伸びしろ、ありますか?」と珍しく弱気な文言が並んだ。

 が、同日、ゲストで参加した東野幸治が「世界に行ける(=通用する)」と太鼓判を押したように、12人のヴァイオリニストは伸びしろだらけ!と筆者は断言したい。

 年内も年明けも「高嶋ちさ子と12人のヴァイオリニスト コンサートツアー」は頻繁に行われるので、是非、会場で“伸びしろ”を確認していただきたいし、まずは12月18日オンエアの『1周回って知らない話 3時間SP!』を御覧いただければと思う。

放送作家・コラムニスト・マーケティングアドバイザー

1957年、東京生まれ。初等部から16年間、青山学院に学ぶ。青山学院大学文学部日本文学科卒業後、TBSラジオ954キャスタードライバー、リポーターを経て、放送作家・コラムニストになる。日本テレビ系「踊る!さんま御殿!!」、フジテレビ系「ノンストップ!」などの構成のほか、「女性セブン」「サンデー毎日」「デイリースポーツ」「日経MJ」「sippo」「25ans」などでコラムを連載。「ドデスカ+(プラス)ドデプラ」(名古屋テレビ)などに、コメンテーターとしてレギュラー出演している。

山田美保子の最近の記事