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トルコ外相、日本で会見「ウクライナでも活躍のトルコ軍事ドローンにインドネシア、マレーシアが強い関心」

佐藤仁学術研究員・著述家
トルコ製の軍事ドローン「バイラクタルTB2」(写真:ロイター/アフロ)

「日本の防衛産業とも協力していきたい。トルコはどこかの国と防衛産業で競争している認識はありません」

2022年9月27日に開催された安倍晋三元首相の国葬儀に出席するためにトルコのメヴリュット・チャヴシュオール外務大臣が9月26日に日本記者クラブで記者会見を行った。

その中で、メヴリュット・チャヴシュオール外相はトルコの軍事ドローン、日本やアジアとの関係について以下のように語っていた。

「トルコと生産するドローンは世界全体から見てもトップレベルです。リビアでもトリポリの奪還に大きな役割を果たしたのもトルコ製の軍事ドローンでした。日本の防衛産業とも協力していきたいです。安全保障との協力も協議を重ねていきたいです。トルコのドローンや防衛産業に関心があれば対応していきたいです。

最近ではアジア諸国からの関心も高まっています。特にマレーシアとインドネシアがトルコの軍事ドローンなどの防衛産業に高い関心を示しています。日本も関心があればうれしく思います。

イスラエル、米国も防衛産業が発展しています。トルコはどこかの国と防衛産業で競争している認識はありません。トルコ独自で開発を進めていく方針でやっています。トルコの軍事ドローンのバイラクタルTB2 はウクライナでも多く使用されています。ウクライナではバイラクタルを称賛した歌もありますし、ウクライナで生まれてくる子供にバイラクタルという名前を付けている人もいます。このようなエピソードはトルコのドローンだけでしょう。トルコは国、民間ともに防衛産業に注力しています」

▼日本記者クラブで会見を行うトルコのメヴリュット・チャヴシュオール外相

ウクライナでロシア撃退に貢献しウクライナ人に大人気の「バイラクタルTB2」

ロシア軍が2022年2月にウクライナに侵攻。ウクライナ軍はトルコ製のドローン「バイラクタルTB2」を利用して侵攻してきたロシア軍に攻撃している。トルコ製のドローン「バイラクタルTB2」はロシア軍の装甲車を上空から破壊して侵攻を阻止することにも成功したり、黒海にいたロシア海軍の巡視船2隻をスネーク島付近で爆破したり、ロシア軍の弾薬貯蔵庫を爆破したり、ロシア軍のヘリコプター「Mi-8」、ロシアの戦車「T-72」や120mm迫撃砲2B11を爆破したりとウクライナ軍の防衛に大きく貢献している。ウクライナ軍が上空からの攻撃に多く利用しているトルコ製のドローン「バイラクタルTB2」はロシア軍侵攻阻止の代名詞のようになっており、歌にもなってウクライナ市民を鼓舞している。

最近では「バイラクタルTB2」によるロシア軍への攻撃も日常化してきて、ほとんどニュースで取り上げられなくなってしまった。だが、開戦当初はトルコの軍事ドローンによる攻撃でロシア軍の侵攻を阻止していたことに大きなインパクトもあり「バイラクタルTB2」の知名度をウクライナ国内だけでなく世界中に広めていた。

リトアニア市民やポーランド市民からのクラウドファンディングによる募金でも「バイラクタルTB2」を購入してウクライナ軍に提供する予定だったが、「バイラクタルTB2」を製造しているバイカル社はウクライナ軍に無償で同機を提供して「集まった費用は人道的な支援に使用してください」と語っていた。

ロシアのプーチン大統領もトルコの軍事ドローン「バイラクタルTB2」の購入に強い関心を示しているという報道に対して、バイカル社としてはロシアには売りませんとSNSで宣言していた。

▼トルコの軍事ドローン「バイラクタルTB2」

トルコは世界的にも軍事ドローンの開発技術が進んでいるが、バイカル社はその中でも代表的な企業である。同社の軍事ドローン「バイラクタルTB2」はウクライナだけでなく、ポーランド、ラトビア、アルバニア、アフリカ諸国なども購入。アゼルバイジャンやウクライナ、カタールにも提供している。2020年に勃発したアゼルバイジャンとアルメニアの係争地ナゴルノカラバフをめぐる軍事衝突でもトルコの攻撃ドローンが紛争に活用されてアゼルバイジャンが優位に立つことに貢献した。タジキスタンも購入を検討している。

ウクライナのゼレンスキー大統領とトルコのエルドアン大統領は2022年2月、ロシアが侵攻してくる前に共同会見を開催。ゼレンスキー大統領はエルドアン大統領に向かって「ドローン開発技術はウクライナの防衛力強化になります」と語っていた。実際にトルコの軍事ドローンはロシアにとっても大きな脅威になっている。

2022年8月にウクライナ軍は公式SNSで「バイラクタルTB2」を製造しているバイカル社のハルク・バイラクタルCEOについて「バイカル社のハルク・バイラクタルCEOは同社のドローンをロシアには絶対に売らないと繰り返し言っています。なぜなら"お金の問題ではない"からであって、"ロシアに対するウクライナへの不公平で強圧的で全く理由のない攻撃への抵抗"だからです。バイラクタルCEOこそ真の友達であり、バイラクタルは今では勝利に向けた国際的なブランドです!」と称賛していた。

2022年9月9日にウクライナのゼレンスキー大統領はキーウでトルコのバイカル社のハルク・バイラクタルCEOと直接対談を行った。対談でゼレンスキー大統領は「バイラクタルTB2」のウクライナ軍への貢献について「ウクライナ国民なら誰もが、あなたの会社の名前を知っていますよ」と謝意を伝えた。さらに「トルコのエルドアン大統領にも感謝しています」と語っていた。また大統領とバイラクタルCEOはウクライナでの軍事ドローン生産に向けた工場設置について詳細な話を行ったとウクライナ政府は伝えている。

▼「バイラクタルTB2」を称えたウクライナの歌

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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