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【乾癬性関節炎の最新治療】IL-17・IL-23阻害薬で皮膚と関節の症状を改善

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:イメージマート)

【乾癬性関節炎治療の現状と課題】

乾癬性関節炎は、皮膚の乾癬に加えて関節の炎症を伴う全身性の慢性炎症性疾患です。皮膚と関節の両方に症状が現れるため、治療には皮膚科と整形外科、リウマチ科の連携が必要とされます。

従来、乾癬性関節炎の治療には、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や従来型の抗リウマチ薬(csDMARDs)が使用されてきました。しかし、これらの薬では十分な効果が得られない場合も多く、新たな治療薬が求められていました。

【IL-17・IL-23阻害薬の登場】

近年、乾癬性関節炎の病態に深く関与する物質として、インターロイキン17(IL-17)とインターロイキン23(IL-23)が注目されています。IL-17・IL-23は炎症を引き起こす物質で、これらを標的とした生物学的製剤(bDMARDs)が開発されました。

IL-17阻害薬には、セクキヌマブ、イキセキズマブ、ブロダルマブなどがあり、IL-23阻害薬には、グセルクマブ、リサンキズマブ、チルドラキズマブなどがあります。これらの薬は、乾癬性関節炎の関節症状だけでなく、皮膚症状に対しても高い効果を示しています。

【JAK阻害薬の効果と安全性】

最近では、ヤヌスキナーゼ(JAK)という酵素を阻害する経口薬「JAK阻害薬」も登場しました。ウパダシチニブ、トファシチニブ、バリシチニブなどが該当します。JAK阻害薬は、関節の炎症を抑える効果が期待されています。2024年5月現在、本邦で乾癬性関節炎に保険適用なのはウパダシチニブです。

ただし、JAK阻害薬では、重篤な感染症や血栓塞栓症などのリスクがやや高くなる可能性が指摘されています。特に心血管疾患のリスクが高い患者では、注意が必要です。

【乾癬性関節炎治療の目標と戦略】

乾癬性関節炎の治療目標は、関節と皮膚の炎症を抑え、関節破壊を防ぐことです。早期診断・早期治療が重要で、病勢に合わせて段階的に治療を強化していく「Treat to Target(目標に向けた治療)」が推奨されます。

軽症では、NSAIDsやcsDMARDsを使用し、効果不十分な場合にbDMARDsやJAK阻害薬の使用を検討します。重症では、より早期からこれらの新規薬剤を導入することで、症状コントロールと関節破壊の抑制を目指します。

乾癬性関節炎は皮膚と関節の両面からアプローチする必要があり、皮膚科とリウマチ科の緊密な連携が求められます。患者さん一人ひとりの状態に合わせて、最適な治療薬を選択していくことが大切だと考えられます。

参考文献:

1. Gossec L, et al. Ann Rheum Dis 2024;83:706–719.

2. Ogdie A, et al. Drugs 2022;82(9):901-922.

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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