子供の才能やIQより大切な力「GRIT(グリット)」とは?子育て・幼児教育で育みたい実現する力
近年「GRIT(グリット)」という言葉が注目されるようになりました。メタ社(旧フェイスブック)のマーク・ザッカーバーグは、成功するために必要なことは「信念とグリットを持つこと」と語っています。また、グーグルが採用の際に重視することは「強いグリットを持っているか否か」であるといいます。アメリカの著名人たちのスピーチでも度々耳にするグリットとは、どんな力なのでしょうか。
GRIT(グリット)とはどんな力?
グリットとは、困難な状況であっても挫けない力を意味する言葉で、アメリカの心理学者アンジェラ・リー・ダックワース氏が提唱した概念です。生まれ持ったIQや才能よりも成功に必要な力として挙られる力であり、その頭文字をとってGRIT(グリット)と呼ばれています。
Guts(闘志)・・・困難な状況でも立ち向かう力
Resilience(回復力)・・・失敗しても諦めない、挫けずに挑戦し続ける力
Initiative(自発性)・・・自ら目標を見据える力
Tenacity(不屈)・・・最後までやり抜く力
生まれ持ったIQや才能よりも、グリットをもった人が社会的に成功を収めるとする考え方です。ダックワーク氏は、教員として勤務していた経験からあることに気が付きました。
・IQが高くても成績が良いとは限らないこと
・IQが低くても優秀な成績を収めている生徒がいること
この気付きをもとに、IQの数値と成功の関連性について仮説を立て、子供から大人まで老若男女の様々な分野で困難な課題に挑戦する人々を対象に、調査と研究を行いました。その結果、成功者には共通点があることがわかったのです。成功するか否かは生まれ持った才能やIQではなく、また外見や身体的能力や家庭環境ではなく、グリットが高い人であるという結論が導き出されたのです。
参考URL:アンジェラ・ダックワース「成功のカギは、やり抜く力」
参考文献: やり抜く力 GRIT(グリット)―人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける ー ダイヤモンド社 著:アンジェラ・ダックワース 翻訳:神崎 朗子
GLIT(グリット)を伸ばすためには?
グリットは、IQのような先天的な能力とは異なり、後天的に伸ばすことができる能力とされています。グリットを育むために必要な要素は、達成感、成功体験を積み重ねることが良いとされています。家庭でグリットを伸ばすためにできることの1つとして、提唱者である心理学者アンジェラ・リー・ダックワース氏は小学生は伝記、幼児期には絵本を読むことをおすすめしています。グリットを持つためには、ロールモデルを持つことが効果的であると言われています。伝記になるような偉業を成し遂げた人たちは、子どもの頃から順風満帆の人生を送ってきたというわけではありません。逆境を乗り越え、失敗しても何度でも立ち上がりその道を極め、目標を達成した人がほとんどです。そのような人々の人生を知ることで、子供たちの中に「たとえ失敗しても挑戦し続ければ、自分も達成できるかもしれない」という希望が生まれ、達成に必要な忍耐力も学ぶことができるのです。また、伝記を読めるようになる前の幼児期には、絵本からもグリットを学ぶことができます。
アンジェラ・リー・ダックワース氏は元教員で、高いIQではない生徒の中にも優秀な成績の生徒がいること、反対にIQが高くても成績が良くない生徒がいることから、グリットの研究をスタートさせたそうです。私は、かつて塾講師として勤務していました。ゆっくりな歩みの生徒が、周囲に流されずに一人でも黙々と努力を続けて、見事に第1志望校合格を勝ち取った事例もたくさん見てきています。
今回は、そんなグリットを学ぶためにおすすめの小学生向けの児童書と絵本をご紹介いたします。
「もぐらとずぼん」 (世界傑作絵本シリーズ) 福音館書店 著:エドアルド・ペチシカ 絵:ズデネック・ミレル (イラスト) 翻訳:うちだ りさこ
チェコの可愛らしい絵本です。大きなポケットの付いたずぼんを見つけて、欲しくてたまらなくなったもぐら。どうすれば、そのずぼんが手に入るかわからないもぐらは、みんなに聞いて回ります。そこから、もぐらのずぼん作りが始まるのです。途方に暮れて、泣いていたもぐらでしたが、大切に植物のあまの世話をして育てることから始め、最後まで諦めずにやり抜く姿が、素晴らしいです。そして、欲しいものを0から自分で作っていくということ、一つのものが出来上がるためにたくさんの人の手が入っていることを、子供たちが学んでくれたらと思い、読んでいた絵本です。
「ペレのあたらしいふく」福音館書店 作・絵:エルサ・ベスコフ 訳:小野寺百合子
スウェーデンの牧歌的な風景がとても美しい絵本です。ペレは、自分で世話をしている羊の毛を使って服を作りたいと思いました。そこから、たくさんの人の力を借り、丁寧に服を作りあげていきます。代わりにペレは、力を貸してくれた人の仕事を手伝います。羊の毛を刈り取ることから始まり、その毛をすいて、紡いで、織って・・・と服が出来上がるまでの工程を知ることができます。手を貸してもらう代わりに、その人の仕事を手伝うという、労働の対価として欲しいものを得るというしくみについても学ぶことができます。40年以上も昔の絵本ですが、クラシックな絵柄が美しい素敵な絵本です。
「ファーブルの夏ものがたり―『昆虫記』の誕生」作:マーガレット・J. アンダーソン 画: マリー ル・グラテン・キース 訳:千葉茂樹
昆虫学者ファーブルの息子ポールが語り手として、ファーブルの人柄や生活を描いています。昆虫や実験が好きなお子様は、きっとファーブル親子と一緒に、わくわくした気持ちを楽しめるお話だと思います。好きなものに夢中になるって素敵なことだと思います。流行や他人の価値観ではなく、自分が心から夢中になれるものに出会って、そこに全力で向き合うことの素晴らしさが伝わったらいいなと思います。
「天と地を測った男 伊能忠敬くもん出版 作:岡崎 ひでたか 画:高田 勲他 監修:伊能忠敬記念館
「地球の大きさを知りたい」と、50歳にして天文学を学び、56歳から測量をスタートした伊能忠敬。17年かけて、地球一周にも等しい距離を実測し、ついに全国測量やり遂げ、現在の地図とほとんど変わらない正確な地図を完成させたその不屈の精神は、涙が出るほど感動します。50歳になって新しい学問を学び、さらに学んだことを活かして挑戦すること、困難を乗り越えて諦めずに最後まで目標を達成すること、生きていくための学びがぎっしり詰まっていまいます。児童向けに描かれた本ですが、親子でぜひ読んで欲しいおすすめの本です。大人も伊能忠敬のような先人から、生き方の姿勢を学びたいですね。
GLIT(グリット)を伸ばす!生きる力を育てる!
今回は、GLIT(グリット)を学べる絵本と児童書をご紹介いたしました。お子様にとって、生きる力になるような素敵な本とたくさんめぐり会えることを願っています。
高木美紀