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ガンバ大阪・倉田秋が自ら企画した『倉田秋カップ』をホームタウンで開催!

高村美砂フリーランス・スポーツライター
ドリブルリレー大会では倉田がドリブルの極意を伝授(写真は筆者撮影)

 倉田秋がまだサッカー少年だった頃、練習以上に好きだったのが、サッカーの『大会』だった。練習とは違う緊張感のもと、他のチームの選手と全力でぶつかり合う試合は、いつもと違うアドレナリンが身体から溢れ、と同時に周りの選手の巧さを知り、自分のレベルを実感する機会でもあった。

 その経験から、以前より「いつか、自分も『大会』を開催して、サッカー少年たちに試合を本気で戦うチャンスをあげたい」と考えていたが、30歳になった今年、ようやくその思いが形になった。それが、『住まいるライフ株式会社』をはじめとする多くの企業から協力を得て実現した『倉田秋カップ』だ。

 12月23日、その第一回目がガンバ大阪のホームタウン、吹田市立総合運動場にて開催。「北摂地域を盛り上げたい」という倉田の考えから、ホームタウンのクラブチームを中心に、U-9とU-12のカテゴリーに6チームずつが出場して行われ、U-9はアルビアーレ東泉丘が、U-12はフィオーレ大阪吹田FCが初代王者に輝いた。また、全試合をつぶさに観戦した倉田自身がカテゴリーごとに大会MVPと倉田秋賞を選出。大会MVPは岡本瑞生(U-9/アルビアーレ東泉丘)、杉本陽(U-12/フィオーレ大阪吹田FC)が、倉田秋賞は、木邨遼(U-9/扇町SC)、北井涼介(U-9/ガンバ大阪ジュニア)、青山詩(U-12/扇町SC)、西川宇希(U-12/吹田クラブ)が受賞し、大会終了後には倉田から参加選手に向けてメッセージが贈られた。

「ここにいる皆さんは、僕が子供の頃より巧くて、将来、きっとすごい選手になるんだろうなと思うと楽しみです。みんなそれぞれ、描く夢は違うと思いますが、自分が目指す夢に向かって頑張ってもらいたいと思っています。ただし、夢を叶えるには人並みの努力ではたどり着けません。目標に向かって、自分でいろんなことを考えて、しっかり先をみて、毎日を過ごして欲しいと思います。僕もまた試合に出て活躍したいと思っていますので、ガンバ大阪の試合も応援に来てもらえたら嬉しいです。今日はありがとうございました」

 真剣勝負の戦いを終えた後は、倉田秋も自らデモンストレーションで盛り上げた『ドリブルリレー大会』だ。Jリーグ屈指のドリブラーとして知られる倉田からドリブルの極意について「身体からボールを離さないこと」「ボールをコントロールできるくらいのスピードで正確に」というアドバイスを受けると、子供たちもすかさず反応。設置されたコーンの間を見事にドリブルで駆け、倉田を唸らせた。

今の子供たちは本当にうまい。よく練習しているんだと思います。実際の試合では周りにもっと人がいるし、その動きも気にしなければいけないので『視界』なども大事になってきますが、そのあたりはたくさんボールを触り、ゲームを積み重ねることで自然と身についていくんじゃないかと思います」

 そして最後は、スタンドで見守っていたご家族や協賛企業の方々も参加して、ミニゲームを実施。たくさんの人がグラウンドに降り、倉田とともに汗を流した。ちなみに倉田は、オフを利用して訪れていたヨーロッパ旅行から2日前に戻ったばかり。コンディションが心配されたが、旅の道中、行く先々で宿泊したホテルは敢えてジム、プールが完備されていることを条件に選んだため「体を動かさない日はなかったので、そこまで息は上がらなかった。ただボールだけは蹴っていなかったからそこはちょっと疲れたかも」と倉田。それでも「子供たちのサッカーにまっすぐで元気な姿に僕も初心に返れたし、新たなパワーももらいました」と清々しい表情で語った。

「僕も子供の頃は、何万回もドリブルをして、シュートを打って、パスを出して、トラップして。何万回も挑戦して、失敗して、怒られて、落ち込んで、成功したら嬉しくて、みんなと喜びを分かち合って…ということを繰り返しながら、プロになりました。僕が子供の頃、真剣勝負の『大会』を通じて自分を磨いたように、今日の『倉田秋カップ』が参加してくれた子供たちにとってのその1つになれば嬉しいです。たくさん失敗しても挑戦することを諦めずにこれからもサッカーを楽しんでもらえたら、と思っています。それにしても、今の子供はみんな巧くて、驚きました!」

 また、こうした倉田の想いに賛同し、実際に現地へと足を運び、大会を見守った今大会のメインスポンサー、住まいるライフ株式会社の坪田志樹氏(代表取締役)も、倉田の想いに呼応して思いを語った。

「倉田選手も子供の頃は今日、ご参加いただいた方たちと同じように、一生懸命ボールを蹴ったと聞いています。その倉田選手との触れ合いを通して、子供たちが『努力次第ではプロも夢じゃない』と感じ取る機会になったのなら、僕も嬉しいなと思っています。子供の時に受ける刺激は、その成長において大きな意味を持ちます。そう考えればこそ、我々も少しでもお役に立てればという思いで協賛させていただきましたが、今後もプロとして戦う倉田選手を応援することはもちろん、今大会を継続されていく上でまたお力になれることがあれば、声を掛けていただきたいと思っています(坪田氏)」

 なお、倉田の希望により、今大会に対してご協賛いただいた金額の一部は、動物保護施設である『公益財団法人日本アニマルトラスト』に寄付。ここにも彼の想いが隠れている。

「僕も犬を飼っていますが、世の中には家をなくした動物たちが後を絶ちません。公益財団法人日本アニマルトラストさんは大阪府豊能郡能勢町の山の中にある動物の孤児院『ハッピーハウス』を拠点に、行き場をなくした動物たちのケアや治療などを行い、新しい飼い主さんの募集を呼びかけている施設です。実際に僕も足を運びましたが想像以上に、たくさんの動物たちが新たな出会いを待っています。今回はその動物たちの食事や身の回りの世話にかかる費用にあててもらいたいと思い、寄付をさせていただくことにしました」

 大会中は終始、笑顔で子供たちと触れ合い、本当の『プロ』の姿を伝えようと、全力でボールを蹴り続けた倉田。そんな彼の1つ1つのプレーに感嘆の声をあげながら、楽しそうにボールを蹴っていた子供たちの姿を見る限り、倉田の想いはきっとそれぞれの胸に届いたに違いない。

フリーランス・スポーツライター

雑誌社勤務を経て、98年よりフリーライターに。現在は、関西サッカー界を中心に活動する。ガンバ大阪やヴィッセル神戸の取材がメイン。著書『ガンバ大阪30年のものがたり』。

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