残業が多い人ほど「上司は残業を評価してくれる」と思っている
他国と比べて日本の労働環境では、雇用者も被雇用者も、長時間労働を美徳とする傾向が強いと言われている。日本では法令上原則として、使用者は1日8時間、週40時間を超えて労働をさせてはならないことになっているが、厳密に守っている企業がどれほどあるだろうか。
内閣府男女共同参画局が2013年12月に発表した「ワーク・ライフ・バランスに関する意識調査」の結果によれば、被雇用者(正社員2537人・非正規社員617人)から成る調査対象母集団では、概して「残業する人は上司から高い評価を受けている」との認識を持つ人は、残業時間が長い人ほど多くなるとの結果が出ている。なお実際に、上司がそのような判断をしているか否かまでは分からないことに注意。
残業時間が長い人ほど「残業すれば上司は『頑張っている』『責任感が強い』『仕事が出来る』など、プラスの評価をしてくれると自分で思う」人が多い。今件では「上司から高評価を受けていそうなので、残業を積極的にこなす」という状況、つまり「残業行為」と「上司の評価想定」の間の因果関係までは説明できないが、少なくとも相関関係はすぐに説明ができる。そして両者の関係を推し量れば、因果関係もありそうだということは容易に想像がつく(無論上司の評価に対する想像に関わらず、長時間の残業を余儀なくされる事例は多数存在する)。
そして残業時間が長い人ほど、残業によるマイナスのイメージを想像する人が少なくなる。
残業時間が少ない人ほど、残業の件で上司がマイナス評価をしていると回答者自身が思っている割合が高く、残業が多い人ほど割合は低くなる。やはり因果関係までは説明できないが、「残業でマイナス評価を上司から受けることはないだろうから、残業をしても大丈夫だろう」と残業行為への後押しをしている感はある。
今調査結果では、上司が実際にはどのように考えているかについてのデータは無い。従って、就業者の残業と上司の評価に関する思惑が、正しいものか否かは判断不可能。しかし少なくとも、就業者自身がこのように考えていることが、日本における残業美徳化傾向の一因にあると考えても、何ら不思議はない。
そしてなぜ就業者がそのような思いに至るのかを考えれば、上司が実際に、多分に残業を肯定・美化する対応を示していることは、容易に想像できよう。
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