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欧州組がさらに増えたザックジャパン。香川真司、長友佑都、内田篤人が見る『現在の潮流』

矢内由美子サッカーとオリンピックを中心に取材するスポーツライター

欧州組14人が招集された2月6日の日本代表対ラトビア戦(神戸ウイング)は、攻撃陣の新しい構成や新戦力のチェックなど興味深い要素を盛り込みながら、日本が3-0で勝利を収めて幕を閉じた。

先発メンバーは11人中10人が欧州組。これは2012年5月23日のアゼルバイジャン戦の9人を上回る史上最多人数(欧州以外の海外組がいた過去の例を含む)だった。交代出場した選手を含めれば、計13人がピッチに立ったことになる。

欧州組がメンバーの3分の2近くを占めたことについて、アルベルト・ザッケローニ監督がこう話している。

「今回はインシーズンでコンディションの整っている海外の選手を重点的に招集した。国内組については代表の常連で漏れている選手もいるが……、駒野友一(磐田)中村憲剛(川崎F)、栗原勇蔵(横浜FM)、岩政大樹(鹿島)は漏れたという意識を持ってもらいたくない」

名前を挙げながらの説明は、選手への信頼を物語ると同時に、日本サッカーの強化のベースたるJリーグに対して指揮官が相応のリスペクトを抱いているからだろう。とはいえ、3月にJリーグが開幕すれば欧州組の比率が大幅に減るのかと聞かれれば、それはわからない。増えていく流れは継続していると見るのが妥当だ。

この流れを、欧州で成功している選手たちはどう見ているのだろうか。神戸での日本代表合宿で、香川真司(マンチェスター・ユナイテッド)、長友佑都(インテル)、内田篤人(シャルケ)に聞いた。

香川「一人でも多くが欧州でもより高いレベルでプレーするように」

――今回は欧州組がさらに増えたが、この流れをどう受け止めている?

「欧州組がさらに増えていることは、僕自身いいことだと思っている。欧州に出て、厳しい環境で結果を残すことが今の日本の成長につながると思うから。今の流れは素晴らしい」

――海外に出るメリットにはどのようなことがあるのか? 

「一人の人間として自信を得られる幅が海外とJリーグとでは違うと僕は思っている。もちろん、そういうのは選手一人ひとりが(個々に)感じること。結果を残せばさらに自信を得られたと感じると思う」

とはいえ、香川は欧州に行きさえすればそれでいいと考えている訳ではない。ドルトムントからマンチェスター・ユナイテッドへとステップアップしたことで感じている高い壁。個としてそれを乗り越えることが、日本をより強くすると考えているのだ。

「欧州に出るということにプラスして、一人でも多くの選手が、もっと上のレベルでプレーすることが代表(の強化)につながる。そういう意味で、僕もそうだし、(長友)佑都もそうだし、もっともっと自分たちが結果を残していけるように、示していけるようにと、そういう責任感を持ってやっている」

長友「自分が松明(たいまつ)を持って先頭を走る」

香川とほぼ同じ意見だったのが長友だ。

――欧州組が増えている流れをどうとらえている?

「いい流れだと思うし、今のいい流れは日本人が欧州で間違いなく評価されているということ。アジアの中でも(日本人が)トップレベルに評価されている。ただし、それは本当に光栄なのだけど、ただ欧州に行くことに満足していていては次がない。ビッグクラブで活躍するということを目標に、一人一人がやらなければいけない」

――この流れの中で、長友選手自身にはどのような役割があると考えているのか?

「今、これだけたくさんの選手が欧州でやれているのは、先輩方がこれまで道を作ってくださったから。僕らもそういう道を、また新たな道を作っていけるよう、もっと欧州で活躍したい」

――香川選手がほぼ同じ趣旨のことを話していた。責任ということにも言及していた。

「責任感は僕ももちろんある。やっぱり引っ張っていかないといけないし、そういう存在でなければいけないという思いがある。自分が先頭に立って、松明(たいまつ)を持って走るくらいの気持ちでいきたい」

内田「Jリーグが欧州のようになればいい」

一方で、独自の見解を語ったのは内田だ。

――海外組がどんどん増えていることについてどう感じている?

「Jリーグが始まったのは僕が幼稚園のとき(1993年)。ドイツのリーグやシャルケは誕生してから100年たっている。日本と欧州では歴史に差があるんでしょうね。あと何年かかるかわからないけれど、代表選手がJリーグの選手で埋まるくらいになると、逆に面白いと思うんですよね」

――そうなるには何が必要?

「Jリーグのレベルがもっと高くなること。それは金銭面も含めてです。僕は代表の全部が全部、欧州の選手になればいいというわけではないと思う。でもそれは欧州の選手がどうこう、というのではない。Jリーグが欧州のようになればいいと思っているだけ。Jリーグが強くなれば欧州に行く必要はないでしょうから」

元々海外志向の強かった香川や長友と違い、彼の場合は鹿島でプロになってから数年間は欧州への移籍に前向きではなかった。シャルケ移籍が決まったときは、多少のサプライズ感があったものだ。そういった経緯が現在の考えにも反映されているのだろう。

長友はザックジャパンのメンバーのメンタル的成長にも言及している。

「4年前のW杯予選も戦ったけど、そのときと比べてもチームに安定感があるし、どんな状況でも落ち着きがある。そして、点を取られてもひっくり返せるという、それくらいの自信がある。それは前回とまったく違う。メンタリティーは上がっている

現在は欧州四大リーグでプレーする日本人だけでも20人を超える状況になっている。本田圭佑がいるロシア、川島永嗣らがいるベルギーなどを加えればさらにその数は増える。

欧州に行くことが必要条件なのではない。欧州で個が成長すれば、それが十分条件になりうるということだ。そこは決して勘違いしてはいけないのである。

海外サッカー 日本人選手(日刊スポーツ)

サッカーとオリンピックを中心に取材するスポーツライター

北海道大学卒業後、スポーツ新聞記者を経て、06年からフリーのスポーツライターとして取材活動を始める。サッカー日本代表、Jリーグのほか、体操、スピードスケートなど五輪種目を取材。AJPS(日本スポーツプレス協会)会員。スポーツグラフィックナンバー「Olympic Road」コラム連載中。

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