8世紀、地球にガンマ線バーストが直撃していた!?
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「8世紀の地球にガンマ線バーストが直撃してたかも」というテーマで動画をお送りしていきます。
以前にも同様のテーマで動画を投稿したことがありますが、非常に面白いテーマなので、今回は情報をアップデートしたリメイク版として再投稿したいと思います。
●8世紀に起きた謎の宇宙線飛来事件
名古屋大学の研究チームは、西暦774年~775年に形成されたとみられる屋久杉の年輪に、炭素14とベリリウム10などの放射性物質が豊富に含まれていることを2012年に発見し、発表しました。
炭素14とベリリウム10はどちらも地球に通常に存在する炭素とベリリウムよりも重い原子であり、これらは高エネルギーの宇宙線が地球大気に降り注ぐと形成されると考えられています。
このことから、8世紀の地球では何らかの原因で強力な宇宙線が降り注いでいたと考えられています!
実際に当時のイギリスやドイツや中国(唐)、さらには日本で記された書物にも、関連する大規模な天体現象を示唆するような記載が残っていることも明らかになっています。
当時は電子機器に頼らない生活を送っていたからこそ文明は問題なく存続していますが、仮に現代の地球で同規模の現象が起きていればひとたまりもなかったでしょう!
では一体どんな現象が原因でこのような強力な放射線が降り注いだと考えられているのでしょうか?
研究チームは大きく3つの可能性を示しています。
●巨大太陽フレア説
まず第1に、巨大な太陽フレアを原因とする説です。
太陽フレアは太陽表面で起こる大規模な爆発現象で、地球にも高エネルギーな電磁波やプラズマのガスなどが到達することも少なくありません。
地球の極圏で見られるオーロラという現象は、太陽フレアで放たれたプラズマと地球の大気が反応することで生じる現象なので、太陽フレアは非常に身近な現象と言えます。
ですがこの説の問題点として、私たちが普段体験しうる太陽フレアの威力では、実際に当時起こったと推定される宇宙線飛来の原因となった現象のエネルギーを到底説明しきることができないという問題があります。
明確な記録が残っている中で最大の太陽フレアとして有名なのが、1859年に起こった「キャリントンイベント」と呼ばれる太陽フレアです。
当時発生した大規模なオーロラによって、低緯度地域でも夜に読書できるほど明るくなっていたという記録も残っていたりします!
そんなただでさえとんでもない現象であるキャリントンイベントですが、8世紀に起きた強力な宇宙線飛来の原因が太陽フレアであれば、キャリントンイベントのさらに20倍もの、まさに桁違いのエネルギーが必要となるそうです!
●超新星爆発説
続いて第2の可能性として、超新星爆発説があります。
超新星爆発は、太陽の8倍以上の質量を持った大質量の恒星がその一生を終える際に起こす、宇宙でも最大規模のエネルギーを誇る大爆発現象です。
超新星爆発が一度起こると、太陽が120億年の一生をかけて放つ総エネルギーよりも強いエネルギーをたった100日程度で放つとされています!
このように超新星爆発は非常に高エネルギーの現象なので、高エネルギーの宇宙線が飛来した原因として考えられます。
ですがこの説が正しい場合、爆発後に爆心地周辺に飛び散った高温のガスが「超新星残骸」として観測されるはずですが、8世紀に地球近傍で起きた超新星の名残である超新星残骸が発見されていないという謎が残っています。
●ガンマ線バースト説
そして最後の第3の可能性に、白色矮星や中性子星、さらにはブラックホールなどのコンパクト天体同士が衝突することによって発生したγ線バースト説があります。
ガンマ線バーストは超新星爆発と並んで宇宙最大級のエネルギーを誇る現象として知られています。
超新星爆発が爆心地を中心として全方向にエネルギーが広がるのに対し、γ線バーストには指向性があるため、超新星爆発以上に遠くまでその影響が及びます。
具体的には超新星爆発で生命にとって致命的な影響を受ける範囲は周囲数光年程度とされていますが、ガンマ線バーストの場合数千光年離れていてもオゾン層が破壊され甚大な被害を受けると考えられています!
仮に原因がガンマ線バーストであるとすれば、地球から3000-12000光年の距離で発生していたとみられています。
もしこれがもう少しでも近ければ、地球上の生命に深刻なダメージを与えていたかもしれません。
ただしガンマ線バーストは極めて珍しい現象であり、1つの銀河内で起こるのは数万年~数千万年に1度しかないと考えられているため、それがたった1200年前に起き、しかも地球に直撃していた可能性は低そうです!
●現状の最有力説は…
以上の3つの説の中で現状最有力とされているのは、巨大太陽フレア説です。
何か証拠が発見されているわけではないようですが、他の2つと比べると起こる可能性が低くないことから、この中では相対的に最も有力となっています。
さらに、今回の西暦774年~775年に形成された屋久杉の年輪に次いで、993年~994年に形成された年輪でも同様の宇宙線の急増現象が確認されていることも、太陽フレア説を濃厚にしています。
どちらも太陽フレアとしてはめったに起こらないほどの規模の現象となりますが、超新星爆発やガンマ線バーストがこれほどの頻度で立て続けに起こったとはとても考えにくいためです。
過去の地球でどのような現象が起きていたのかはとても興味深い研究対象なので、今後も多くの事実が明らかになっていくことが楽しみです!