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なぜユヴェントスはセリエAで得点できなくなった? 3試合連続の0-0は「暗雲」、それとも「吉兆」?

中村大晃カルチョ・ライター
9月21日、セリエA第5節ナポリ戦の試合前のユヴェントスFWヴラホビッチ(写真:ロイター/アフロ)

新しくなったユヴェントスは、最高のシーズンスタートを切った。だが、その後は停滞している。

チアゴ・モッタ新監督が就任したユーヴェは、夏の積極補強でチームを大幅に変えた。注目されたセリエA開幕戦は、コモに3-0で快勝。さらに続くエラス・ヴェローナ戦も、同じスコアで連勝した。

ただ、以降はローマ、エンポリ、ナポリを相手にスコアレスドロー。無敗の勝ち点9で4位につけているものの、開幕直後の熱狂は冷めつつある。

特に、3試合連続で得点をあげられなかったことは懸念される。セリエAでの3戦連続スコアレスドローはユヴェントス史上5回目。1992年5月以来、32年ぶりだった。

■攻撃の数字は低調

結果だけではない。6得点でリーグ11位のユヴェントスは、攻撃のスタッツが芳しくない状況だ。

『La Gazzetta dello Sport』紙によると、シュート(53)はリーグ14位、枠内シュート(17)は同13位。クロス(54)は16位、相手ボックス内でのタッチ(81)とボックス外からのシュート(15)はともに17位と、いずれもリーグ下位に沈んでいる。

顕著なのが、エースであるドゥシャン・ヴラホビッチの苦戦だろう。ヴェローナ戦では、ドッピエッタ(2得点)をマークした。だが、公式戦6試合でゴールを決めたのはこの1試合のみ。ナポリ戦ではついにハーフタイムでベンチに下げられ、大きな議論につながった。

今季のヴラホビッチは1得点をあげるのに199分を要しており、これはここ4シーズンで自己ワーストの数字。過去3シーズンの序盤戦は、5試合ないし4試合で3~4得点をあげており、1得点に要した時間は147分、88分、101分と、今季と大きな差があった。1試合のシュート数(平均/枠内/ボックス内)、パス成功率やボックス内でのタッチ数といった数字も、昨季から落ちている。

■シナリオの体現はまだこれから?

当然、ヴラホビッチは責任を感じているだろう。実際、『La Gazzetta dello Sport』紙によれば、事態の好転を目指して練習では全力を尽くしているそうだ。モッタ監督も姿勢を評価しており、エースの数字は本人だけに起因するものではないと話した。

つまり、ヴラホビッチがゴールを決められる状況をつくれていないということだ。

ここ3試合の対戦相手が引いて守るタイプだったことも、ひとつの理由だろう。エンポリ戦とナポリ戦の間に行われたチャンピオンズリーグでは、PSV相手に3得点をあげて勝利した。

モッタが昨季躍進させたボローニャとの違いも指摘されている。

マンチェスター・ユナイテッドに移籍したジョシュア・ジルクゼーとヴラホビッチがまったく異なるタイプなのは明白だ。アーセナルに移籍したリッカルド・カラフィオーリのような存在がいないとの声もある。『La Gazzetta dello Sport』紙は、スムーズにフィットしつつあるピエール・カルルが、似たような役割をこなせるかもしれないと期待を寄せた。

ヴラホビッチの負担を和らげる代役も不在だ。控えCFのアルカディウシュ・ミリクはケガで戦列復帰が遅れている。モッタはナポリ戦でヴラホビッチを下げた際、ティモシー・ウェアを代わりに起用したが、ゴールに結びついていない。エース以外の攻撃陣もあまり貢献できていないのだ。

そして何より、トゥーン・コープマイネルスやニコ・ゴンサレスといった新戦力が加入間もないのは大きい。彼らのデビューはローマ戦で、スタメンに名を連ねるようになったのはエンポリ戦からだ。2人がピッチに立つようになってからの3試合で、ユヴェントスは得点できていないのである。

ファビオ・カペッロは『La Gazzetta dello Sport』紙のコラムで、「モッタはもっと何かを引き出さなければいけない。彼も道を探しているところだろう。それを見つけられたかは、分からない」と述べた。

「アイディアはある。だが、おそらく、アーティストたちがまだよく台本を体得していない」

指揮官が新しくなり、チームが大きく変われば、時間を要するのは言うまでもない。

■昨季のボローニャは有望な前例か

その意味で、昨季のボローニャのデータは、ユヴェントスのファンを期待させるかもしれない。同じ9月に3試合連続のスコアレスドローを経験しているのだ。

その後、ボローニャは10月の初戦で3-0と快勝。続くインテル戦では敵地で2-2と引き分けた。そして歴史的なCL出場権獲得へとつなげていったのである。

もちろん、モッタがユヴェントスでも同じようにチームを上昇気流に乗せられるかは分からない。

ただ、本格始動がこれからのチームで無敗を維持し、欧州主要リーグで唯一の失点ゼロを保っているのは事実だ。守備を堅実にしつつ、攻撃を構築していくという道筋はできつつある。

1カ月後には王者インテルとの敵地でのビッグマッチが控えている。それまでに、モッタのユヴェントスがどのようなチームになっていくか注目だ。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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