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鈴木誠也の内野起用もある?昨季主力のイアン・ハップが計6ポジションで起用されているカブスの柔軟性

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
カブスとの契約合意が報じられた鈴木誠也選手(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

【広島への譲渡金が17億円超に及ぶ大型契約】

 ロックアウトが解除されて以降、多くのチームが積極的な戦力補強に乗り出す中、現地時間の3月16日朝になってカブスが鈴木誠也選手と合意したとの速報が流れた。

 速報が流れた当初は5年総額7000万ドルとの契約内容を報じるメディアが多かったが、その後5年総額8500万ドルに変更されるようになった。いずれにせよ、2007年に同じカブスと4年総額4800万ドルで合意した福留孝介選手を上回り、日本人野手の中で最高額の契約内容になりそうだ。

 仮に今回の契約にインセンティブが含まれておらず、総額8500万ドルで確定しているとするならば、現行のポスティングシステムにより、カブスから広島に支払われる譲渡金は1465万ドルに上る。現在のレートで17億円を超える額になる。

 ちなみに内訳は、まず2500万ドルまでの分で20%に相当する500万ドル、次の2500万ドル分(2500万1ドルから5000万ドルまで)で17.5%に相当する440万ドル(正確には437.5万ドルだが、MLB公式サイトでは4.4万ドルと計算)、そして残り3500万ドル分(5000万1ドルから8500万ドル)で15%に相当する525万ドル──になっている。

【早くも外野の定位置争いが勃発か?】

 現時点でカブスから正式発表はないが、フィジカル検査が終わり次第発表がある見通しだ。だがカブスのキャンプ地では、早くも鈴木選手の加入に関して、デビッド・ロス監督が対応に追われることになった。

 その最大の関心事が、鈴木選手とライトのポジションが重なるジェイソン・ヘイワード選手との起用についてだった。ロス監督は以下のように説明している。

 「自分の仕事は柔軟に対応していくことだ。目の前にある問題に対し、できるかぎり対話を重ねながら対処していく。

 選手たちはみな理解のある選手ばかりだし、自分にとって柔軟性はとても重要であり、適応していきたい。

 我々は長期にわたって安定的に勝っていくことを目標にしている。ジェイソン・ヘイワードとも話し合うことになるだろう。彼はこのチームの中でもプロ中のプロの選手だし、彼も勝ちたいという気持ちが強い。

 (鈴木選手のカブス入りが)正式発表されてから、いろいろ議論していくことになるが、自分たちにとって良い意味での問題になって欲しい」

 ロス監督は柔軟に対応していくとしているが、彼の口ぶりからすると、昨年は自身最低の打撃成績に終わったヘイワード選手よりも鈴木選手をメインに起用していくことになりそうだ。

【鈴木選手が内野に回る可能性も】

 ただ現在のカブスの外野陣は、完全に固定されているわけではない。昨年の出場状況を見ても、今シーズン主にレフトとして期待されているイアン・ハップ選手は、レフトとセンターでそれぞれ52試合に先発している他、ライトでも11試合、セカンドでも4試合に先発している。

 ちなみにハップ選手に関しては、上記のポジション以外にサードで2試合に途中出場し、DHとしても1試合だけ先発しており、計6つのポジションをこなしている。

 またセンターとして期待されているラファエル・オルテガ選手にしても、センターで63試合に先発しているだけでなく、レフトで3試合、ライトで7試合に先発している。

 逆に1つのポジションしか守っていないのはヘイワード選手だけだが、そんな彼にしても、過去には157試合にセンターとして先発した実績がある。

 つまりロス監督が説明するように、今シーズンも柔軟に起用法を変えていくことになりそうだ。もちろん鈴木選手も広島では元々内野手登録だっただけに、その適応力を確信された上で、ライトに固定するのではなく様々なポジションで起用されていくことになると予想される。

【カギを握るのは各選手の好不調】

 鈴木選手の場合、正式契約後にまずビザ取得の作業を進めていかないとオープン戦や公式戦に出場できないので、現状を考えればシーズン開幕に間に合わない公算が強く、多少の出遅れは覚悟しなければならないだろう。

 だが選手が固定されていない分、対戦相手との相性や各選手の好不調に合わせて起用されることが予想され、チームに合流さえすれば鈴木選手にもどんどん出場機会が与えられることになりそうだ。

 逆に複数のポジションをこなせることは、出場機会を増やす近道でもある。今シーズンは久々に、鈴木選手の内野守備を見られるかもしれない。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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