短縮シーズンで可能性が高まる、日本プロ野球初の「4割打者」は見たいけれど…
6月19日に開幕を迎える今シーズンは、過去5シーズンの1チーム143試合から23試合削減され、120試合となる。試合数が減れば、その分、いつもより高い打率もあり得る(あるいは低い打率も)。わかりやすくするために極端な数字を挙げると、1000打数500安打の打率5割は無理でも、10打数5安打の打率5割なら……ということだ。
今から31年前、読売ジャイアンツのウォーレン・クロマティは、打率.378を記録し、首位打者を獲得した。当時、この打率は歴代4位。1986年のランディ・バース(.389)、1970年の張本勲(.383)、1951年の大下弘(.383)に次いで高かった。その後も、クロマティを上回ったのは、1994年と2000年のイチロー(.385と.387)しかいない。
1989年のクロマティは、チームが97試合目を終えた8月20日の時点で、シーズン打率.401――開幕からずっと4割台を維持し続けたわけではないが――を記録していた。この時すでに、シーズン全体の規定打席はクリア。当時は1チーム130試合なので、規定打席は403だった(規定打席=チームの試合数×3.1)。今シーズンの規定打席はさらに少なく、372となる。
ただ、シーズン終盤、ポストシーズン進出の可能性が潰えたチームに打率4割台の選手がいて、すでに規定打席に達していた場合には、こんなことも起こり得る。以降の試合の欠場だ。
今シーズン、セ・リーグはクライマックスシリーズを開催しない。パ・リーグのクライマックスシリーズも、1位と2位による1ステージだけだ。例年であれば、6チーム(各リーグ1~3位)がポストシーズンへ進むが、今シーズンはその半数の3チーム(セ1、パ2)となる。残り試合の欠場については、過去の首位打者争いに前例がある。
メジャーリーグ最後の4割打者は、1941年のテッド・ウィリアムズだ。この年、テッドのいるボストン・レッドソックスは、ニューヨーク・ヤンキースに17ゲーム差をつけられ、ア・リーグ2位に終わった。まだ地区制は始まっていなかった。シーズン最後の2試合、9月28日のダブルヘッダーを残し、テッドは448打数179安打、打率.399553571428571を記録していた。小数点第4位を四捨五入すれば.400だ。規定打席はクリアしていたので、欠場という選択肢もあった。けれども、テッドはダブルヘッダーの第1試合に出場し、ホームランを含む4本のヒットを打った。さらに、第2試合にも2安打。シーズン打率を.406とした。
テッドは4割打者となったが、たとえ、最後に打率を下げて4割を逃したとしても、試合に出場することなく4割を維持するのと、どちらを見たいだろうか。