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ビジネスチャットツール、Slackの有料会員数は300万人

松村太郎ジャーナリスト/iU 専任教員
Slackの成長は堅調かつ健康的(画像は筆者作成)

米国のコワーキングスペースを見渡してみると、ほとんど全ての人のスクリーンにSlackアプリの画面が表示されています。Slackはビジネスチャットツールとして人気があるツールですが、そのユーザー数のグラフがStatistaで紹介されていました。

Slackの日間アクティブユーザー数の推移(出典 [https://www.statista.com/chart/6643/slack-hits-4-million-active-users/ Statista])
Slackの日間アクティブユーザー数の推移(出典 [https://www.statista.com/chart/6643/slack-hits-4-million-active-users/ Statista])

Slackは機能が限定された無料使用も可能です。その日間アクティブユーザーは800万人ですが、有料ユーザーは300万人。無料・有料を用意しているサービスの中では、有料の比率は高いですね。

有料ユーザーにもいくつかレベルがあり、スタンダードプランは1人月額6.67ドル、プラスは12.5ドル(いずれも年額の場合)。有料プランにすれば、無料では1万件に限られていた検索が無制限となり、10点に限られていたサードパーティーや外部アプリ連携も無制限になります。

企業ユーザーが有料にしたい大きなモチベーションは、スタンダードプラン以上でGoogleアカウントを用いたOauthや、最大15人のビデオチャットや画面共有への対応、メッセージのダウンロードが可能になる点。

G Suiteを使っている企業にとっては、GoogleアカウントでのOauthは圧倒的に管理が楽になるのではないでしょうか。

一番重要なのは、チャットの検索性

ちなみに、サービス名になっている「Slack」は、ゆとり、たるんだ(反対語はtight)といった意味合いで、ビジネスで使われる用語としては不景気、という意味合いもあります。どちらかというとSlackによってコミュニケーションは活発になるイメージがありますが。

「Glitch」という多人数参加型オンラインゲームの開発におけるチーム内でのコミュニケーションの効率化を目指して作られたコードネーム「Linefeed」に、2012年11月、Slackという名前が付けられたそうです。

共同創業者のStewart Butterfield氏は、その瞬間のチャットログをTwitterで紹介しています。

Slackはメールやミーティングなどのビジネスの現場におけるコミュニケーションの問題をより効率的に解決していますが、一方でチャットに仕事の時間を取られることへの批判もあります。特に日本の企業で、チャットに興じていたら、まあ怒られますよね。

しかし、Slackのようなつながり続けるコミュニケーションの重要性は、Butterfield氏のこのツイートに込められているかもしれません。すなわち、アイディアがゆるいチャットの中で見出され、しかもそれが検索可能になっていることです。

そのため、Slackを長く使い、過去の全てのメッセージが検索できる機能を有料プランとしていると考えられます。コミュニケーションという目に見える効率性でユーザーを拡げ、本質の価値に課金する。Slackのビジネスのうまさを垣間見ることができます。

ちなみに:Flickrと同じような生い立ちのワケ?

それにしても、Stewart Butterfield氏のSlackへのピボットのストーリーには強烈な既視感があります。Butterfield氏がSlack以前に成立させたサービスが、Flickrだったからです。

Flickrは写真共有コミュニティで、2004年2月にスタートし、プロからハイアマチュアに至るまで、オンラインで写真を共有する場として大きな役割を果たしてきました。

Flickrはその後、Yahoo!に買収されますが、Instagramにモバイル写真SNS時代で先を越され、そのYahoo!は米国最大手の携帯電話キャリアVerizonに買収され、Flickrはシリコンバレーの写真共有サイトSmugMugに売却されました。

そのFlickrも、カナダ開発されたオンラインゲームの画像共有エンジンとして出発しており、ゲームから共有サイトとしてピボットした経緯がありました。

Butterfield氏がゲームを作ろうとすると、世の中に必要なツールが生まれる。そんな法則性すら感じますね。

ジャーナリスト/iU 専任教員

1980年東京生まれ。モバイル・ソーシャルを中心とした新しいメディアとライフスタイル・ワークスタイルの関係をテーマに取材・執筆を行う他、企業のアドバイザリーや企画を手がける。2020年よりiU 情報経営イノベーション専門職大学で、デザイン思考、ビジネスフレームワーク、ケーススタディ、クリエイティブの教鞭を執る。

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