【小室哲哉氏報道】ニンニク注射とは何か?
1月17日、小室哲哉氏についてこんな報道がありました。
ここで出てきたニンニク注射。
あまり知られていないのですが、実は日本中のクリニックや医院で行われています。
そこで、ニンニク注射とはどんなものか、医師の視点で解説します。
内容は、
1, ニンニク注射は、ニンニクを使っていない
2, 効果は不明だが・・・
3, 原価は非常に安い
4, 副作用はあまりない
です。
1, ニンニク注射は、ニンニクを使っていない
実は、ニンニク注射はその名前にあるニンニクを注射するわけではありません。
では、なぜニンニク注射という名前がついているのでしょうか。定義はあいまいなので、筆者が調べた結果でお話します。
筆者の調べたところでは、
・ニンニクの成分であるビタミンB1が注射に入っているから
・注射をした後にニンニクの匂いがするから
という理由だそうです。発案者は平石貴久医師というスポーツドクターをやっている医師のようです。
しかしこのニンニク注射は保険診療ではありません。それはどういう意味かというと、厚生労働省が決めた方法の治療ではないため、全額を自費で払うという意味です。これを自由診療といい、この場合値段は病院が自由に決めていいことになっています。だいたい1000〜4000円のところが多いですね。
ニンニク注射の成分については、医院やクリニックによってかなりばらつきがあるようです。
筆者が調べた中では、ニンニク注射はアリナミンFというビタミンB1誘導体というものが入った注射薬のみを注射することが多いです。
簡単に言えば
ニンニク注射はビタミンの注射
であると言えます。
それに加え、追加料金を支払えばビタミンB2やビタミンCなどの注射薬を一緒に注射したり、さらに肝臓の薬などを一緒に注射することもあります。
ニンニク注射は保険診療ではないため、正式な治療として厚生労働省に認められたものではなく、医学部で習うこともありません。筆者は病院で保険診療をする医師であり、ニンニク注射をすることはありません。
2, 効果は不明だが・・・
さて、このニンニク注射の効果はどれほどなのでしょうか。
残念ながらニンニク注射の効果について科学的なデータは見つけられませんでした。理由としては、ニンニク注射は「疲労回復」をうたっており、そもそも疲労ぐあいがどれほど良くなったかを測定することは難しいからでしょう。また、誰も真面目に検証しようとしていないのかもしれません。
ただし、ニンニク注射の主成分であるビタミンB1は、人体に必須の物質です。アリナミンFという薬は、激しい肉体労働時や消耗性疾患に対して有効であるとされていますから、疲労回復にももしかしたら効果があるのかもしれません(添付文書上)。
ビタミンB1についてちょっと歴史のお話をしましょう。1910年に鈴木梅太郎博士が発見したこの物質は、体に足りなくなると脚気(かっけ)という病気になります。日露戦争で陸軍を率いていた森林太郎(文豪としても有名な、のちの森鴎外)は脚気の原因がビタミンB1不足だと見抜けませんでした。その結果、多くの兵士を犠牲にしてしまいました。一方同じ頃、海軍を率いた高木兼寛(慈恵医科大学の創始者)は玄米や麦飯を食べさせたところ脚気が激減したというのは有名なお話です。森鴎外の陸軍では、精米した白米を出していたためビタミンが含まれていなかったのです。
食が豊かになった現在では、アルコール中毒などの特殊な患者さんをのぞけば脚気などのビタミンB1が不足した患者さんはまれになっています。
3, 原価は非常に安い
ニンニク注射の原価は、おそらく非常に安価です。
内容によって変わりますが、例えばアリナミンF50mgはそれだけであれば1本74円です。初めて世に出たのが1967年7月という、歴史あるお薬ですね。
そしてこれに総合ビタミン剤であるサブビタン(58円)と肝臓の薬である強力ネオミノファーゲンシー5ml(65円)でも、合計200円未満です。
4, 副作用はあまりない
ニンニク注射の副作用ですが、ビタミンB1を多く体内に入れすぎることで起きるものはほぼありません。なぜなら、ニンニク注射で使われるようなビタミンは水溶性ビタミンと呼ばれ、過剰になったぶんはおしっこから出るためです。
副作用があるとすればアレルギーか、注射時の痛みくらいでしょう。
以上、ニンニク注射についてまとめました。
(参考)