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8年前、アンバー・ハードがジョニー・デップのベッドに大便を置いた時のこと

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
その出来事の後、1ヶ月、デップはハードに連絡を取らなかった(写真:Shutterstock/アフロ)

 4月22日は、アンバー・ハードの誕生日。

 今年で彼女は38歳だが、2年前、ヴァージニア州で行われたジョニー・デップとの名誉毀損裁判をしっかり見ていた人は、彼女がいくつになるのか、言われなくてもわかる。なぜなら、あの裁判で出てきた最も衝撃的で、コメディアンからジョークのネタにされたことが起きたのは、彼女の30歳の誕生日だったからだ。そう、彼女が当時夫だったデップのベッドに人間の大便を置いた出来事である。

 8年前の4月21日、ハードは、デップと住むロサンゼルスのダウンタウン地区のペントハウスに仲の良い人たちを呼んで、自分の誕生日パーティを開いた。料理は、彼女の親友ロッキー・ペニントンの婚約者ジョシュ・ドリューが作ってくれるメキシカン。ワインは、ハードのお気に入りで1本500ドルもするスペインのヴェガ・シシリアを中心に全部で13本用意。パーティを当日でなく前日にしたのは、翌日、ハードが友達とコーチェラ音楽祭に行く予定だったからだ。

 だが、デップには、この夜、非常に重要な用事があった。その少し前、デップは、長年雇ってきたビジネスマネジメントの会社、ザ・マネジメント・グループ(TMG)のせいで、お金がすっかりなくなっているという事実を知ったばかりだったのだ。TMGをクビにし、新たにビジネスマネージャーとして雇ったエド・ホワイトは、その夜、デップの経済状況の報告と、今後について話してくれることになっていたのである。

自分を置いて出て行ったデップにハードは激怒

 ミーティングは夜7時半から、ウエスト・ハリウッドにあるデップのオフィスで。ダウンタウンまでは距離があるので、パーティにはどうしても遅れる。ハードには事情を告げ、「なるべく早く帰るから」と約束して、9時半にミーティングが終わると、「今終わった」とテキストメッセージを送った。するとハードから「ワインとマリファナを持ってきて」と返信があったため、ウエスト・ハリウッドにある別の自宅に立ち寄り、みんながほぼ食事を終えた頃に到着。今しがたのミーティングでショックなことを聞かされ、内心とても落ち込んでいたのだが、そんな様子をできるだけ見せず、デップはみんなの前でできるだけ明るく振る舞った。

 だが、明らかに怒っているハードは、そんなデップに「私の誕生日にこんな仕打ちをしてくるなんて信じられないわ」「みんなの前で恥をかかせたわね」などと耳打ち。深夜になってみんなが帰ると一気に怒りを爆発させ、狂ったように叫んで、デップの財布やiPhoneを窓の外に投げ出した。夫が人生の崖っぷちにいることを知っているのに誕生日パーティに遅れたくらいでギャーギャーいう彼女を見て、なんと幼稚なのかとやるせない気持ちになったデップは、ひとりで寝室に行き、ベッドに入って本を読み始める。デップがケンカから逃げるのを許さないハードは、いつものように彼を追ってきて、自分もベッドに入り、罵声を連発。それでもデップが無視していると、立ち上がってベッドの彼の側に回り、顔、頭、首などを殴ってきた。

 やがてデップは立ち上がり、ハードをベッドの上に座らせ、彼女の両肩に手を置いて、「俺、出て行くから。追いかけてこないでくれ」と告げた。そう言われたハードは、行かせるものかと寝室のドアの前に立ちふさがる。デップが「何がしたいの?まだ俺を殴りたいの?じゃあ殴れよ」と挑発すると、ハードはその通り殴ってきた。「今ので気が済んだ?それとももう一発やりたい?」とさらに言うと、2発目が飛んでくる。その後、デップはハードをベッドに連れていき、「これで気が済んだだろう。追っかけてくるな。ひとりにしてくれ」と言い残し、ウエスト・ハリウッドの家に向かった。

ペントハウスに戻ろうとすると「今はやめたほうが」と止められる

 そのひどい光景を見せられたのは、翌朝だ。この日ハードがコーチェラ音楽祭に向かうことを知っていたデップは、彼女が出発した後を見計らい、必要なものを取りにペントハウスに行こうとした。だが、ボディガードは「今はやめたほうがいいです」という。「なぜ?」と聞くと、ボディガードは携帯に送られてきた写真を見せてきた。それはペントハウスの寝室にある、デップのベッドの写真。しかし、彼がいつも寝る側に何かがある。それは明らかに人間の大便だった。これを発見したかわいそうな人物は、デップが長年雇ってきたメイドだ。 

 あまりにもグロテスクで想像を絶する行為に、デップは笑った。それ以外にどうしていいかわからなかった。とにかく、もうハードと話すつもりはなく、その後は連絡をしなかった。次にふたりが直接顔を合わせるのは、母が死んだことをきっかけにいろいろ深く考えたデップが離婚を決めた時だ。電話でそう告げたところ、ハードに「直接話したい」と懇願され、デップは1ヶ月ぶりにペントハウスを訪れることになる。

 久々に会うと、ハードは自分から例のベッドの上の汚物について持ち出してきて、犬が粗相をしたのだと言い訳をした。だが、彼らが飼っている2匹の犬は体重が2キロもない小型犬で、絶対に犬のものではない。それに、デップのいないところでハードがデップのスタッフのひとりに「ちょっとタチが悪いおふざけだった」と言ったのも知っていた。それでふたりはまた口論となり、デップはまた出て行った。

 彼はそのままバンドのツアーに出てしまい、自分は離婚されると知っているハードは、その隙に自ら離婚申請をして、あざのある顔で裁判所にデップに対する一時的接近禁止命令を申請に行く。そうしてデップはDV男に仕立てられてしまったのである。

 ところで、ハードが窓から投げ捨てたデップのiPhoneは、デップのボディガードのひとりが、「iPhoneを探す」アプリを使って見つけた。持っていたのはペントハウスから数ブロック離れたところにいるホームレスの男性。その男性は、現金420ドル、チキンタコス、スナック菓子、りんご、ミネラルウォーターと引き換えに、デップのiPhoneを引き渡している。このiPhoneの裏にあったドラマを、この男性は果たして想像できただろうか。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「シュプール」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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